生まれ変わるならば結婚式で泣ける女になりたい
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記事:山田ねむさま(ライティングゼミ)
「ここで、新婦から新婦のご両親様へ、今日まで育てて頂いた感謝の気持ちを込めたメッセージがございます。」
結婚式の披露宴の定番。新婦が両親に向けて手紙を読むシーン。
同じテーブルにいる何人かが洟をすする音がする。ハンカチを取り出す気配がする。
私は手紙の内容に集中しようとする。
新婦が実は小さい頃に身体が弱くて何度も入院して両親を心配させた話だとか、塾や部活が遅くなったらお母さんが送り迎えしてくれたとか、喧嘩して本心ではないことを言ってしまったこともあったとか。仲が良いと思っていた彼女に関してまだ知らなかったこともたくさんあって、なかなかに感動的である。
少しだけうるっときたような、気がする。
だが......
一緒に参列していた友人が涙でぐしょぐしょになった顔で「なんかいろいろと思い出して泣けちゃった」とつぶやきあう。子供がいる友人は「この子が嫁にいくときのこと考えちゃった」とハンカチを濡らす。
ああ、今日も駄目だな。
私がもっとも苦手な瞬間のひとつである。
私は結婚式で泣けない女だ。
ある晩、里奈さんは、人目をはばからずに号泣していた。
会社の同僚の送別会でのこと。
辞めることになった同僚が感動的なスピーチをすると、里奈さんはぼろぼろと泣き始めたのだ。私の方が、その同僚とは親しかったはずなのだが、私は泣かずに、里奈さんは泣いている。見渡すと、何人かの女性が泣いている。
なんでなんで......!
私の方が仲良かったはずなのに、里奈さんの方が仲良かったみたいに見える。
焦ってしまって余計に涙からは遠ざかる。
送別会でも、泣けない。
私の所属する会社の文化として、誰かの誕生日をサプライズでお祝いするというものがある。この会社に長くいる私は、自分の誕生日が近づくとそわそわしてしまってサプライズどころではない。誕生日近くに「偽のMTG」を入れて、その場に突然ケーキを持って行ってサプライズ、というのがよくあるパターンだ。そのため、誕生日に設定されたすべてのMTGを疑ってかかってしまう。
だが、中途で入ってきた里奈さんは、素晴らしかった。なんと、サプライズでケーキとプレゼントを運んできたら涙を流して喜んだのだ。しかも、2年連続で! 女性ばかりの職場であるし、決して誰かにこびているわけでもない。
なんて心の美しい人なんだろう......。
女である私でさえ、心を動かされてしまった。
世の中には2種類のタイプの女がいる。
共感や感動で泣ける女と、泣けない女。
子供のころは大して気にしていなかったのだが、
大人になって「泣けない」ということがコンプレックスになってしまった。
映画マニアの父の影響で、子供の頃から大人になるまで数多くの映画を観てきた。「あの映画泣けるよね〜」という会話をしたくて合わせることがある。だが、本当は、映画を観て泣いた記憶がない。もちろん私にだって「うるっとくる」ことはあるのだが、それ以上に涙が「こぼれる」ようなことはなかった。
同じように映画で泣けないという友人と「涙活」しようという話になったのだが、よくよく聞いたら彼女は『アルマゲドン』で泣いたことがあるんだという。どうやら私の方がより重症だったらしい。
それではなぜ、泣ける女にこんなに憧れているのか。
ひとつには、感動で泣けるのは、心がきれいな感じがするから。別に女だけでなく、映画や結婚式で泣いちゃう男性も結構好きなのだ。
そして、もうひとつ大きいのは、受け取り手として「泣いてくれる」ということが単純に嬉しいからだ。例えば、嬉しいことがあったときに、一緒に泣いてくれる。哀しいことがあったときに、一緒に泣いてくれる。すごく、私のことを考えてくれている感じがして嬉しい。
逆に一人だけ泣けないというのはすごく焦る。私って冷たいのかなとか、心が濁っているのかしらとか、余計なことを考えてしまう。
ある日里奈さんに、
「どうしても泣けないんです。」
という相談をしてみたら、驚かれた。
里奈さんは逆に、仕事中でもすぐに泣いてしまうことに悩んでいたというのだ。
クライアント先やMTG中に泣きそうになってちゃんと言いたいことを話せないとか、スピーチしても泣いてしまって話せないとか、泣き虫キャラだと弱く見られるだとか。
なんと。
物事の長所と短所は裏表だというが、そんな悩みがあるとはつゆ知らず、お互いに驚いてしまった。
泣かない女である私は、たしかに、
結婚式のスピーチは得意だ。
送別会の司会も得意だ。
サプライズはうまいこと驚けないから企画する方が好きだ。
泣けるも能力。泣かぬも能力。
それぞれの人間に得意不得意があるからこそ、お互いにカバーしあえるし、お互いにないものに惹かれあうこともある。
それでも私は、いつか映画や結婚式で泣ける日を心待ちにしている。
「泣いちゃった~」と言ってみたい。そこまで揺さぶられてみたい!
もし憧れの「泣ける映画」を見つけたら、ここでみなさまにもご紹介しますね。
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