立ち上がれ! 埼玉!
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「福岡はいいとこでしょう?」
福岡で出会う人によく言われる言葉だ。
ある福岡の書店の企画会議に出席したときにも、
「福岡はほんと食べ物がおいしいし、お店の人も気さくに声かけてくれて超やさしい!」
なんて意見を多く聞いた。
2ヶ月近く住んでみて、確かに福岡はいい土地だ。間違いない。
可愛い女の子は多いし、ごはんもおいしいし、おしゃれなカフェは多いし、それを提供する人たちもいい人ばかりで、なんとなく少し太った気がする。
福岡万歳! 福岡万歳!
そんな声を聞き続けて少し嫉妬というか、さびしい気持ちになっている自分に気づいた。
自分の故郷、埼玉をここまで胸を張って自慢する人たちってどれくらいいるんだろう?
そもそも、自分にとって埼玉とはどんな土地なのか。
日本にとって埼玉はどんな機能を果たしているのか。
埼玉から遠く離れたいま、改めて、埼玉県について考えてみようと思った。
1.世間の埼玉評
①「ダサイタマ」
「ダサい」と「埼玉県」を掛け合わせた造語だ。聞いたことがある人は多いと思う。この造語は1980年代、タレントのタモリ氏によって考案されたものだ。
タモリさんが昔、ラジオ番組で笑いの対象として埼玉を揶揄したときに生まれた言葉らしいけれど、埼玉って垢抜けないから、そう言われてもしょうがないよねっていう感じで僕はとらえていた。
でも、当時、埼玉県では問題を深刻に捉え、県庁内にイメージアップのための調査研究グループを設立したり、県議会の議題に取り上げられる事態に発展したりと大変な状態になったらしい。なんか思春期の中高生みたいな反応の埼玉県だ。
②「翔んで埼玉」
埼玉県をネタにしたギャグ漫画。著者は魔夜峰央(まやみねお)氏。
舞台は埼玉県民が徹底的に迫害される都市、東京。そして主人公は、都内の名門校白鵬堂学院に転向してきたアメリカ帰りの美少年、麻実麗(あさみれい)。
容姿端麗、スポーツ万能の秀才である麗は学校でも一躍注目の存在になるのだが、実は本名を西園寺麗といい、埼玉県の所沢生まれで、アメリカに留学後、麻実家の養子になるという徹底的な出身地ロンダリングを経て入学したのだった。
僕の実家は所沢だが、ここまで埼玉をいじってくれると逆に爽快だ。自虐ネタでアピールできるのではとさえ思えてくる。
このマンガの埼玉県のディスりぶりはダサイタマどころではないのだ。
「ああ、いやだ、埼玉なんて言っているだけで口が埼玉になるわ!」
口が埼玉県の芋っぽい形になる!? すごいディスりだ。
その他にも、
・埼玉特有の熱病、「サイタマラリア」
・東京のレストランで出される埼玉県民向けのメニュー、「下水ライス」
・埼玉県民は三越に行くことは許されない。
・病に伏していても薬を与えられずに草を食べさせられる。
これでもかというくらいに埼玉をディスっている。
全埼玉県民が泣いた! というふれ込みはおそらく本当だ。
2.埼玉県民とは
では、実際の埼玉県民とはどういう人々なのだろうか。
元埼玉県民がご説明しよう。
①基本的な性格
埼玉県の人々は温厚で、控えめで、目立たないように過ごす人が多い。
悪くいえば「個性がない・特徴がない」とも言える。
土地柄、厳しい気候でもないし、歴史ある大都市でもない。福岡のような町人総出のお祭りがあるわけでもない。そんな埼玉では、個性を強く出さない方が生活しやすかったのではないだろうか。
②出身地を微妙に盛ってしまう
埼玉県民は出身地を聞かれると、
「東京の方」
と答えてしまうことが多々ある。
ちょっと見栄っ張りなのか、東京コンプレックスなのか微妙なところだが、東京でも埼玉でも位置的にあんまり変わらないんだからおれの出身地、東京でいいや、東京にしとこ! と思って言ってしまうのだ。
③とりあえず池袋
埼玉県民が都心へのアクセスに使う鉄道路線は、主に東武東上線と西武池袋線の2つだ。どちらの路線も池袋を終点にしており、自然と東京の池袋という街に埼玉県民が集まることになる。
そもそも、埼玉県は東西の横の移動ができる交通網が発達していないため、埼玉の友達同士で集まる場合、集合場所の第一候補は池袋になるのだ。
「池袋で石を投げれば埼玉県民に当たる」
「池袋は埼玉の領地」
なんていう言葉があるとおり、埼玉県民と池袋の関係は深いものがある。
個人的にも、お気に入りのレコードショップがあったり、電気屋があったりと子供の頃から通っている街だ。ひょっとしたら地元、所沢よりも愛着があるかもしれない。
3.埼玉が抱える問題
①日中は東京都民
やはり、郷土愛が福岡と比べると低いと思う。その一つの理由として埼玉県に住む多くの人は日中、東京で働いたり、通学していたりするので、埼玉が「ふるさと」という考え方をしにくいのではないかと考えられる。
個人的にも、幼い頃から出かけていた池袋や、学生生活を過ごした水道橋、会社があった中野など、東京で過ごした時間も埼玉で過ごした時間と同じくらいある。また、東京には多くの人が集まり、刺激も多いことから埼玉県民としてのアイデンティティを持ちにくいのも、郷土愛を持つ人が少ない原因なのではないかと思う。
②ソウルフード不足
埼玉県の名産はこれだ! これを食べろ!
と胸をはって宣言できるほどの県を代表する食べ物は、ない。
草加せんべい、狭山茶、深谷ねぎなど特産の食べ物は、おしなべて渋いイメージだ。福岡であれば、豚骨ラーメン、明太子、モツ鍋など食卓の主役を担う食べ物が多いのとは対照的だ。
埼玉県民が郷土への愛着が薄いのはおそらく、ここが大きいのではないかと。
郷土を代表する食べ物が多くの人へ認知されているものであれば、初めて会う人とどこ出身? という流れになった時も、
「地元にはこういう食べ物があって、ほんと、おいしいんですよ〜!」
「ああ、あれ、おいしいよね〜!」
と話がスムーズに進む。
地元の食べ物を他県の人がおいしいと言ってくれるのは本当に嬉しいことだ。そういった、他県の人にも認知される食べ物があれば、自然と郷土への愛着も増すのではないか。
③プレゼン下手
福岡県民は博多山笠など大きなお祭りを生きがいとしている人もいるらしい。当然、祭りで目立つことも楽しんでいるらしく、控えめな埼玉県民としては驚くばかりだ。目立つというのはうまく自分をプレゼンテーションできることでもあり、その気質が、福岡はいいとこでしょう?という言葉につながっていくのだと思う。
4.評価される埼玉
マンガでおもしろくディスられたり、県民が出身地を盛ったり、名産品がイマイチなど、元県民ながら書いていて悲しくなってきたが、悲しいことばかりではない。実は、埼玉県は意外なところで評価されているのだ。
① COEDOビール
埼玉県中央部に位置する川越。蔵造りの昔ながらの町並みから小江戸ともよばれているこの街では、コエドブルワリーという会社が本格的なクラフトビール「COEDOビール」を醸造している。
名産の川越芋を使用している紅赤という品種もあり、ビールの世界的コンテストで表彰されるほど評判が高い。コエドビール祭りというビール祭りも開催されているようで、話題性も抜群。あ〜飲んでみたい!
② アニメの聖地
実は、メジャーなアニメからマイナーなアニメまで、埼玉県が舞台になっているものは多い。
『クレヨンしんちゃん』 :春日部市
『あの花の名前を僕たちはまだ知らない』 :秩父市
『となりのトトロ』 :所沢市
特に、泣けるアニメとして人気を博した『あの花』の舞台になった秩父は、実在のスポットがアニメの中で多く登場し、アニメファンの聖地巡礼が社会現象になるまでの盛り上がりを見せた。
埼玉がアニメの舞台になる理由として、都会と田舎のほどよいバランスがある。これは地域的に特徴がないことを逆手にとった強みだ。
アニメは町おこしの起爆剤という考えが浸透していけば埼玉をより多くの人へアピール出来るのではないか。アニメクリエーターの方々には積極的に埼玉を舞台にしてほしい。
③ ツールドフランスさいたまクリテリウム
フランスのイベントなのか、埼玉のイベントなのか分かりにくいツールドフランスさいたまクリテリウムは、世界最高峰の自転車レース、ツールドフランスの本大会で優秀な成績を残したスーパースター達がさいたま市に集結し、さいたま新都心周辺の特設コースで熱戦を繰り広げるロードレース大会だ。
クリス・フルーム、新城幸也など、スーパースター達の非日常のスピード感を日本にいながら味わうことができる。
2014年から始まった大会で、過去2大会では大観衆が詰めかけている。サッカーに例えると、ワールドカップで活躍した選手がさいたま市に集結してオールスター戦をやるようなものだ。すごく観に行きたい!
世界最高峰の自転車レースのブランドを、さいたま市が獲得できた国際的価値は計り知れない。「さいたま」という都市名は、既に世界中に発信されているのだ。
5. 埼玉はいいとこ
なんとなく地味なイメージで、アピール下手。そんな印象の埼玉が、いつの間にかアニメの聖地になったり、世界最高峰のスポーツイベントを開催したりしている。埼玉は着々と新しい時代へ向かって変化しているように思う。元埼玉県民として嬉しい限りだ。
将来、埼玉が今よりも魅力的な県になったとき、
僕は、埼玉県に移り住んだ人へこう言いたい。
「埼玉、いいとこでしょう?」 と。
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