メディアグランプリ

都会暮らしの便利さを捨てて得た、腸さんとの出会いの話。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:さとう さら(ライティング・ゼミ8月コース)
 
 
我が家は夫、兄猫、妹猫と私の4人家族。しかし最近もう1人生き物が増えたような感覚になる事がある。「腸」だ。最近の私は、腸の事を家族のように気にかけ、ご機嫌を伺う生活をしている。
 
「腸を家族のようにいたわるなんて、何を言っているのか? 」
と思われるかもしれないが、愛猫の健康の為に、良い材料からできた餌を選び、人間のものより値段の高い水を与え、おもちゃ遊びで運動を促してあげるのと同じ気分だ。
自分が食べたいものではなく、腸と会話をし、欲している食材をあげる。調子が悪そうなら負担の少ないものを、外食の翌日は優しいものを、腸の声を聴くかのように栄養を送り込む。
そんな生活をしていると、いつからか腸が「腸さん」になった。そんな腸さんとの出会いの
きっかけとなった、長野への移住について書きたいと思う。
 
まだ腸がただの臓器の1つだった頃、私はただの疲れた都会の働き人だった。社会人になって20数年、いわゆるバリキャリという働き方を続けていた。大事なのは仕事、やりがい、成長、効率……お酒を好み、タバコを吸い、大した運動もせず生きてきたが日々の生活に特に支障はなかった。
しかし、40歳を目前に自分の心身は大きく変化した。仕事でのイライラが出やすく、体の不調を感じる事も増え、不眠や、体重の増加などありとあらゆる不具合が表面化し始めた。腸は不調ではない事の方が当たり前になっていた。そんな中、コロナが来た。
社内も仕事相手もオンラインMTGに慣れ、会社が強制しない限りは出社する必要のない生活になった。飲み会も会食もなくなった。先の見えない不安とコロナ感染への恐怖を除けば、規則正しい生活を送れるようになった。
しかし、昼間家に帰らない前提で利便性を最優先した家は、目の前の国道はひっきりなしに車が走る音がし、あらゆるサイレンが一日中鳴り響く。一日中家にいると、うっかり猫を踏んでしまう回数も増えた。ダイニングテーブルにパソコンを置き、パソコンの前でご飯を食べる生活になり、仕事とプライベートの気持ちの切り替えがうまく行かなくなった。もはや、ストレスは限界だった。
私は田舎から東京に出てきて20数年、死ぬまで東京都心以外に住むことはないと確信を持っていた。自分の生き方と肌にあっていると心から思っていたのだ。しかし、都心で快適な新しい家を探そうとすると、予算が合わない。そして行きついたのが、結婚式を挙げた長野だった。
 
移住しても、会議がミルフィーユ状に重なる忙しさに変化はなかった。しかし、イライラした会議の後に、後ろをふりかえると圧倒的な緑と静寂があり、私の気持ちを落ち着ける手助けをしてくれた。少しずつ、いろんな事を「ま、いっか」と思えることが増えてきた。
心だけでなく、体にも変化があった。
多忙な生活でも、UberEatsは助けてくれない。レストランも遠いし、コンビニも早くに閉まる。合間にサクッとご飯を流し込むような便利な? 生活をもはや送る事ができなくなった。週末にスーパーで買いだめして、会議の合間にご飯を作ったり、作り置きをせざるを得なくなったのだ。しかしこれが、良かった。
今日は何かいい食材はあるか、何を作ろうか、この会議の合間で調理をしようなど、食べ物と料理の事を考える時間が圧倒的に増え、仕事のストレスやイライラを忘れさせる役割にもなった。夫も外食生活から解放され、実は料理学校を出た私の手作り料理が食べられる事を本当に喜んでいた。夫に悪いことをしていたな、と反省した。
そして、数か月たったある日、驚くほどの快便があった。
大きさに驚いたわけではない。TVの健康番組で言われる見本のような、健康なものが出てきたのだ。便が健康のバロメーターだとは聞いていたが、気づいたら、あれほど悩んだ便秘は消えていた。
その日をきっかけに、自分の便に向き合うようになった。今日はルッキンググッドだな、昨日東京でラーメン食べたからいまいちだな、など自分の体調と生活をふりかえるルーティーンができた。
いい調子を維持したいと思うようになり、食べるものを気にするようになった。つい暴飲暴食したい気持ちも、腸を思って自制する事もできるようになった。毎朝白湯を飲むと、朝からクルクル言っているなとか、サプリを飲んでも変化はないが、手作りジュースを作って飲むとグルグルといい音を出すなとか、毎朝腸がリアクションを返してくれるのが嬉しく感じるようになった。そのフィードバックを受けながら日々を過ごしていると、自分の中に1つの生き物がいる感覚を持つようになった。こんなきっかけで「腸さん」が誕生した。
今朝、「ライティング・ゼミの宿題があるのだが、腸をテーマにしたいけど2000字もどうやって書けばいいのか」と夫に相談したところ、
「腸は長いだろ?余談を挟んで長くするんだよ」
という面白いようなよくわからないような洒落が返ってきた。
その言葉に背中を押され、2000文字を書き終え、私はホッとお腹をなでおろした。
 
 
 
 
***
 
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2022-09-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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