地球というクローズドサークルの中で。
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:鈴木喜勝 (ライティング・ゼミ6月コース)
「だが、そうなると、いったいぜんたい、誰が10人を殺した犯人なのだ」
先日、アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』を読んだ。
ミステリー小説なんてあんまり好みじゃないなぁなんて思っていたが、読み始めたら一夜で読破してしまった。
孤島に閉じ込められた10人の人々が、わらべ歌にそって次々と消えていく——。
原点にして、頂点。
まさにその言葉がぴったり合うような、王道のミステリーを体感出来た。
王道と言いながらも、展開が全く予想出来ずにいた。
1人、また1人と見えない犯人に襲われる登場人物達。その恐怖といったら、なかなか味わうことの出来ない読書経験だった。あっという間に読み切れてしまうので、秋の夜に是非読んで頂きたい。いや、そもそもあれだけの有名な作品だと、読んでいる人の方が圧倒的に多いのかもしれない。そんな方にも、今一度良質なミステリー小説に心を躍らせるのもいいのではないか。
育休中にいろんな知識を得ようと、お金に関わる本を買ってみたり、資格の勉強の本を買ってみたりした。
ちょっと難しい哲学の本なんかも手に取ってみたが、これはヤクルト1000なんかより安眠効果があるので、別の意味でおすすめである。
時間を持て余していろいろな本に手を出しているが、結局行きつくのは小説だ。自分とは全く違う世界、全く違う生き様の人々に出会える奇跡。物語にはその感動がある。ましてや、予想の出来ないミステリーの世界に足を踏み込めるなんて、貴重すぎる体験だ。自分がその小説の中に出てくる不可解な事件に、実際に巻き込まれるのはごめんこうむりたい。しかし、そういった世界をそっと覗くことは、心をときめかせる、“わくわく”に似た一種の快楽を覚える。
それからアガサ・クリスティーは『ゼロ時間へ』や『アクロイド殺し』なども読んでみた。
面白い。これが、100年ほど前の作品には思えない。自分がミステリーにほとんど触れて来なかった人間だからこその感動なのかもしれないが、しばらくはミステリー作品に没頭するだろう。
“全く予想がつかない”
ミステリーの醍醐味である、この要素。
実は世界のほとんどのことが“全く予想がつかない”ことで溢れているのではないか。
中学生の頃。人生設計を立てるみたいな授業があった。
全くアホ丸出しの人生設計で恥ずかしくなるのだが、それを見ると私は現在「プロレスラーになって、チャンピオンベルトを巻き、5代目タイガーマスクになっている」らしい。もちろん、なっていない。他にも顔が真っ赤になるほどアホな人生設計をしているのだが、恥ずかしすぎるのでここら辺で恥を晒すのはやめておこう。
あの頃の自分は、女性社会に揉まれて男1人で寂しく子どもを保育する男性保育士になっているなんて、想像が出来ただろうか。それだけでなく、はなから結婚なんてものを諦めていた自分が、妻も子どももいるなんて、想像出来ただろうか。
自分だけのことじゃない。この世界のこともだ。
チェルノブイリに匹敵する原発事故が日本で起こるなんて、想像出来たか?
未知のウイルスによって、生活が大きく激変するなんて、想像出来たか?
元総理が銃で襲われ、お亡くなりになるなんて、想像なんて全く出来なかった。
“事実は小説よりも奇なり”
誰もがこれから起こることに対して、何も予想が出来ないのだ。
ある程度のことは、それなりに予想は出来るかもしれないが、そのほとんどが外れてしまう。私の中学時代に作った人生設計のように。
アガサ・クリスティーのミステリーを読んでいる時も、ことごとく私の予想は外れてしまった。
あの人物とあの人物が手を組んでいたのでは?
いや、誰か他の人物がやって来ていたのでは?
それとも、こんなトリックを使ったのでは?
その行為そのものが、物凄く面白いのである。
その推理の中で、1つや2つ、当たっていたことがあったりする。ましてや、自分の想像もしていないあっと驚く結末を迎えることもある。
この世界は、もしかしたらとてつもなく大きなミステリー小説の中なのかもしれない。
我々は、その中の登場人物。誰もが、その物語の主人公。
先のわからない、謎を追い求めて、我々は生きていく。それがハッピーエンドになるかどうかは、わからない。ただ、小説と現実が違う所は、何かを決めることは全て自分自身だということ。
ハッピーエンドにするにも、バッドエンドにするにも、自分次第。
予想も出来ない、あっと驚く未来が、待っている。
地球の寿命はあとせいぜい50億年くらいだそうだ。本当に“そして誰もいなくなった”となるには、まだまだ時間がかかる。それまでに、人々はどれだけのハッピーエンドを迎えられるか、楽しみである。
***
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