マスターは、レインボーアフロの「カツラ」で「地域密着ミュージシャン」に変身する。
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記事:YO-DA(ライティング・ゼミ)
JR中央線の沿線のある街に、一風変わったミュージシャンがいる。
通称、「マスター木村」
彼は、この街のいろんなイベントから引っ張りダコの「地域密着ミュージシャン」である。
特徴は、いつもレインボーアフロの「カツラ」を装着していることだ。
友人である我々は、普段も彼のことをマスターと呼んでいる。
数年前まで、彼はこの街のちょっと変わったカフェのマスターだった。
「マスター木村」は、たいてい派手なシャツとオレンジ色のズボンを身につけている。
フォークギターやエレキギターを器用に操って、自分で作詞作曲した曲や、変な替え歌をロックに歌いまくる。歌もうまいが、特にギターのテクニックは超一流だ(と私は思う)。
そして、数年前、地元のために作詞作曲したのは「コガネイ寄り道ホリデイ」だ。
YouTubeでもこのプロモーションビデオを見ることができる。
また、時には図書館で借りてきたという紙芝居を使って、即興で「大阪弁紙芝居」を演じることがある。そのストーリーたるや元の物語とは似ても似つかぬ奇妙奇天烈な内容で、その場に居合わせた大人も子どもも抱腹絶倒だ。
マスターは、人から頼まれて、知り合いのパフォーマーやミュージシャンはもちろん、周辺地域の学生たちにも声をかけ、イベントのステージパフォーマンスの構成、演出、音響、宣伝、司会、そして当然、自分の出演に至るまで、一手に引き受けることもある。
たとえば、年に2回行われる地元の自動車学校のイベントは、マスターがそのステージの全体構成を一手に引き受けていて、回を重ねるごとに新たなキーマンをどんどん巻き込み、結果としてイベント自体が毎回進化している。
傍で見ていて非常に興味深い。数年前に、社命で地域の活性化に努めていた者としては、涙が出るほどありがたい。
ミュージシャンとしての「マスター木村」が最も輝いていたのは、今年の8月上旬に実施された「ヒガコサマーフェスティバル」のステージだと思う。
このイベントは、ある大学のグラウンドを借り、地元の商店会が中心となって毎年開催されるのだが、二日間の開催で軽く数千人のお客さんを集客する。
このあたりでは、超一大イベントだ。
きっと、中央線に乗って他の街からも集まってきているに違いない。
お目当ては、地元の商店会メンバーが、花火師としての腕を発揮する「打ち上げ花火」だ。
予算の関係で本数は少なめだが、ベッドタウンの住宅密集地の真ん中で打ち上げる花火は、ほんとにすぐそこの夜空で爆発するので、「キャー、危ない」とか、「おいおいおい、大丈夫か?」っていう感じで、観客には大うけである。
「マスター木村」とその仲間たちは、昨年と今年の2年続けて、このイベントのステージにメインのエンターティナーとして颯爽と登場した。
昭和歌謡の替え歌やビートルズの「イマジン」等を歌った後で、花火の打ち上げ直前に歌ったのは、この時のためだけに作ったという「ヒガコで花火ベイべー」だ。
そのまんまだ。この単純明快さがいい。
マスターが「ヒガコで花火ベイベー」を歌い終え、会場の明かりが徐々に消えたところで、司会の女性落語家が叫ぶ。
「じゃあ、みんなー、行くよー。準備はいいかーい?」
「せーの、10、9、8、・・・・、3,2,1」 「ドッカーン」
「ドッカーン」「バラバラバラバラ」
「ヒュー、ドッカーン」
実のところ、
マスターが、収入を得るためにしている「仕事」は、この街の観光協会の職員である。
もちろん、仕事のときはレインボーアフロの「カツラ」は付けていない。
いつもは、ごく真面目で、礼儀正しい、やや控えめで少しシャイな兄貴である。
奥さんと二人の息子さんを大切にする、やさしいお父さんでもある。先日50歳になった。
観光協会主催のイベントでは、事務局員として準備、手配、運営、片付け等々、裏方の地味な職務も黙々とこなしている。普段は、各種手続きや届出等の事務作業にも従事しているはずだ。
しかし、「ここぞ!」という場面になると、マスターは、レインボーアフロの「カツラ」を装着して「マスター木村」に変身する。
そして、ごくわずかな謝礼(失礼! でも無料ボランティアのことも多いらしい)だけで、全力のパフォーマンスを繰り広げるのだ。
しかし、まさか、この「カツラ」自体にパワーが潜んでいるわけではないだろう。
マスターの凄まじいパワーの源は、おそらく地域のみんなを喜ばせたいという「想い」と、注目されたい、目立ちたいという自己顕示欲の両方なのではないかと私は思う。
実のところ、
マスターの「本業」は、「スマートソウルコネクション」という、プロのブルースバンドのギタリストである。
マスターは、ここでは「ハンチング帽」をかぶっている。
このバンドは、吉祥寺や南青山をはじめ、東京のあちこちのライブハウスで演奏している。この春にはニューアルバムをリリースし、夏には、あの「フジロック」にも出演した。
本物の人気と実力をもつ、切れのいいクールなバンドである。
マスターのおかげで、私はすっかりこのバンドのファンにもなってしまった。
実のところ、
マスターは、関西の大学生だった頃、「チキンダンサーズ」というロックバンドのギタリストだった。
そして、在学中の1991年にテイチクよりメジャーデビューした。
当時は、熱狂的なファンに追いかけられる人気グループのひとつであったらしい。
確かに、YouTubeでその動画を見ると当時の人気の凄さがよくわかる。
ここに、マスターの原点がある。
プロのミュージシャンとしてのマスターの実力を知ってしまった者としては、「本業」で、もっと世間から、いや世界から注目されてほしいと思う。
「スマートソウルコネクション」は、凄くクールで、しかも面白い。
もちろん、マスター以外のメンバーも才能にあふれている。
武道館でのワンマンライブコンサートに招待してもらえる日を、私は本気で待っている。
でも、地元商店街の片隅の小さなステージで、レインボーアフロの「カツラ」を装着したマスターが「上を向いて歩こう」をロックに歌う姿を見るのも、私は好きだ。
たまには、これも見たい。
マスターは変身などしていない。きっとすべてが本気の、マスターの生き様なのだ。
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