爽やかな〝吉田栄作ヘア〟をやめて髪型を変えたら、インドに呼ばれた。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:カーリー・ナマスカール(ライティング講座)
運命は髪型によって激変する。
その昔、ぼくは吉田栄作のようなヘアスタイルで、
女の子にも縁がない、さえない高校生だった。
決して吉田栄作に憧れていたわけじゃない。
ただ校則が厳しくて、チャイム着席をしないと体育教師にブン殴られるような学校だったので、髪型にも厳しかった。だから生徒は吉田栄作みたいな髪型が流行っていた。
僕は地味で大人しい存在だったが、不幸なことに目立つルックスをしていた。
顔がガイジンなのだ。日本人とインド人のハーフだから。
今となってはハーフなんて珍しくないが、昔はレアキャラで、外国人もあまりいなかった。
人からジロジロ見られ、笑われ、からまれ、馬鹿にされた。その経験は僕に大きな劣等感を植えつけた。自分が卑しく醜い劣った存在だと思い込んでいた。
僕は人と同じになりたかったのだ。
僕は日本人として育てられてきたので、
自分がインド人だと実感したことは1回もなかった。
でも世の中ではいつも僕は異物として取りあつかわれた。
そんな世の中に苦痛を感じていたが、
そこにしか僕の生きる世界はなかった。
吉田栄作ヘアを変えるまでは……。
そんな劣等感に支配されていた18歳の時に、
とんでもないモノに出会ってしまった。
パンクと呼ばれる音楽だった。
パンクという人種の髪型、服装、立ち振る舞いは、派手で自由奔放だった。
世の中の常識、美的センス、価値観のすべてから大きく外れていた。
〝自分は自分。他人の評価などクソ食らえ〟と言わんばかりに、純粋無垢で狂った変人が、ひどい演奏力にのせてロマンティックな歌をうたっていた。自信たっぷりに。
僕はそこで初めて知った。
人と違うことが肯定され、尊重される世界があることを。
これしかない!!
今まで、世の中に合わせていた自分が馬鹿らしくなった。
その価値基準に合わせて生きたところで、
僕は馬鹿にされ、嫌われ、攻撃される対象でしかない。
どうせ何しても馬鹿にされるんだっだら、自分の好きにやって嫌われた方がいい。
人を見た目で判断するような世の中なんて、こちらから願い下げだ!!!!
という、極端なアイデアが浮かんだ。これは自分の中におきた革命だった。
そういう衝動にかられた僕は、まず夜の野球場に忍び込み、
グラウンドでほふく前進を繰り返し、服を汚してGパンをボロボロにすることにした。
だけど、コテコテのパンクへアが似合わないため、
髪を伸ばして、ドレッドヘアにすることにした。
ドレッドヘアヘアは、イモ虫のような太くて長い毛がたくさんぶらさがっているような髪型。黒人、レゲエのアーティスト、ヒッピーたちがよくしている髪型だけど、パンクにもドレッドヘアがいた。
初めてドレッドヘアを見たとき、不思議と自分にしっくりくる予感がした。
ボロボロの格好をして、小汚い髪を背中までたらした僕は、
根拠のない自信に満ちあふれ、積極的に人生を楽しむようになった。
デメリットなど何も無かった。
見た目で判断するような人は寄りつかなった。
面白い人にもたくさん出会えた。
個性と情熱をかってくれる会社にも入社できた。
頭だって何回か強打したけど、髪がクッションとなり無傷ですんだ。
言い出したらキリがない。
吉田栄作ヘア時代とは、世界が一変したのだ。
世界が変わったワケじゃない。髪型が変わっただけだ。
そんなドレッドヘア。意味も知らずにやってみたが、じつは歴史が古く、
どうやら神聖でスピリチュアルな意味あいを持つ髪型でもあるようだった。
世界各地でドレッドにまつわる色々な話があるようだが(エジプトでドレッドのミイラが発見されていたり)、僕はドレッドのルーツはインドにあるという話を最初に聞いて、妙な因果を感じた。
まず驚いたことに、かの有名なインドのシヴァ神もドレッドヘアだった。
そしてインドにはサドゥと呼ばれるドレッドヘアの修行者がいることを知った。
こんな偶然あるだろうか?
ノリでかけた髪型が、僕のもう一つのルーツであるインドに繋がるなんて……。
ずっと嫌で嫌で仕方がなかったインドに、初めて興味がわいた瞬間だった。
24歳のときだった。
そしてインドに行って度肝を抜かれた。
土臭い街は、カレーに、スパイスに、お香に、無数の匂いが入り乱れ、
たくさんの人と、乗り物と、牛がひしめき合い、
人の声や、クラクションや、インド音楽が爆音で鳴り響いていた。
歩いていると物売り、客引き、乞食、詐欺師、泥棒、売人、ただの暇人が、
ひっきりなしについてきては離れない。
面白すぎる国だ。とんでもない生命エネルギーに満ちあふれている。
一人一人が演劇に出演しているかのように劇的だ。
僕はインドが一気に好きになってしまった。
そんな旅のなかで、妙に懐かしく感じる場所があった。
母親の故郷であるカルカッタだ。
混沌としたカルカッタの街を眺めた時に、感極まって涙が出ていた。
街に立ちこめた匂いは妙に懐かしく、親しみを感じた。
僕はその景色を見た途端、頭のてっぺんから、足のつま先まで、
全細胞がプチプチと音を立てて感動していたのを覚えている。
自分の母親がここから来たのかと思うと、感慨深いものがあったのかもしれない。
僕はその身体感覚に包まれながら
「自分はインド人なんだな」と、
そのときに生まれて初めて思った。
僕はその時にやっと、自分の中にある「インド」を受け入れたのだ。
それ以来、僕は自分が2つのルーツを持つことが、とてもラッキーで楽しいことに思えるようになった。
すべては吉田栄作ヘアを卒業して、
ドレッドへアをかけた時からインドに呼ばれていたのだ。
***
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