お掃除ロボット「ルンバ」にお掃除をさせられるパパのお話
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:三好 健(ライティング・ゼミ10月コース)
「学校から帰ってきたらリビングの真ん中でピクリともしてなかったから、びっくりしたみたいだよ」
と、僕が会社から帰って早々、開口一番に妻がそういった。
「なんのこと?」と、僕。
「あれよ、あれ」
妻が指で指した先には、いつもの定位置ですやすやと眠る、あいつがいた。
言わんとしていることが、なんとなく分かった。
「あー、変なもの食べてくたばってた?」
「そうそう」と、妻は笑いながら言った。
共働きの我が家。一番早く帰宅していたのは、当時小学生だった長女だった。
長女はとても怖がりな子で、玄関の扉に虫がいるだけで家には入れない子だった。
そんな長女が、ある日ひとり家に帰宅すると、リビングの真ん中で息も絶え絶えになっていた、我が家にやってきたばかりのルンバ君を目にしたのだった。そう、掃除機のね。
長女はその光景に、とてもびっくりしたらしい。
家にルンバがやってきた切っ掛けは、「あれ欲しいよね〜」という妻の何気ない一言だった。
CMなどでよく見かける、ルンバの映像。広い部屋をすいすいと動き回り、部屋の中を一通り掃除し終わると勝手に定位置である充電器にドッキングし、充電までしてくれるという優れもの。CMの中の奥さん的な人は、もうニコニコだし!
あれがあれば掃除しなくて良さそうじゃーん、という妄想にも掻き立てられ、ビックカメラに見に行ったこともあった。
ただ、値段が値段だけにおいそれと手が出せなかったのだけれど、ふとした切っ掛けで手に入れることになる。
あるとき、クレジットカードのポイントを消費しようと、ポイントで交換できる品物を探していたとき、なんと所持していたポイントでルンバと交換することができることが判明したのだ。
まあ、型落ちだったし、性能も高い方では無かったけれど、我が家にはその程度のルンバで充分だろう。
しばらくして家に届いたルンバは、部屋の片隅にセッティングしてあげた。今日からそこがお前の家だよ。
電源に繋げてあげると、ピコピコ言いながら緑のランプが付いた。どうやらお腹が空いていたらしい。たんとお食べ。
とりあえず、邪魔になりそうな床に転がっている小物をどかしてから、ルンバを動かしてみた。
ピコピコいいながら、ルンバは走り始めた。
僕はソファーに座り、その様子を眺めていた。ちょっとドキドキである。
吸気音がうるさい。まあ、掃除機だからね。
壁やら机やらにぶつかりながらも、掃除をするその姿は、なかなかに愛おしかった。
あんなに頑張って掃除をするなんて!
犬や猫のようなペットではないけれど、なぜだか愛着がわいてくる。
それ以降、僕は毎朝、出勤する前にルンバを動かすようになっていた。
僕ら家族とルンバの素敵な毎日。
だがしかし、ルンバは意外と胃腸の弱い子だったのである。
そしてあるとき、学校から帰ってきた長女が第一発見者となるのである。
現場はリビング。そこには、口から何かを出してくたばっているルンバがいた。
「ええ、いつもと違う異様なリビングの光景に、とてもびっくりしました」
と、もし事件現場を取材に来たテレビのリポーターにマイクを向けられたら、長女はきっとこんな事を喋ったに違いない。
充電器の上で眠っているルンバの裏側を見ると、吸引する口の部分に、紐が巻き付いていたのだった。
どうやらそのせいで、動きを停止したらしい。
僕はせっせと、紐を取り除き、ついでにルンバの口の周りを掃除してあげた。
そう、ルンバは壁やテーブルにぶつかってもうごき続けるが、細かいおもちゃだとか紐だかに、めっぽう弱いのである。
特に子供が幼かった我が家は、もう細かいオモチャがたくさん。極めつけはシルバニアファミリーである。
親指くらいのウサギのオモチャどもが使うアイテムは、もはや豆粒大。人間が足で踏んでも痛い。
そんなものが家の床には転がっていたのだ。
事件の翌日から、僕はルンバを動かす前に、ルンバが食あたりを起こすようなものがないかチェックするようになった。
我が家のかわいいルンバがお腹を壊したら大変!
ルンバを動かす前に、紐だとかオモチャだとかが無いことをチェック。
テーブルの下に何も無いかどうかを見ながら、面倒なので椅子を机の上に上げておく。これならルンバも仕事がしやすいだろう。えっへん。
キッチンのエリアは細々としたものが多いので、椅子などでバリケードを作って入れないようにした。ドヤ!
そうして部屋を片付けていくと、細かいゴミが気になり始める。
周りが綺麗になってくると、いままで眼中に無かった細かいゴミが気になり始める現象に名前を付けたい。
気になり始めてしまったので、クイックルワイパーで埃を取ってやる。
そうしているときに、ふと僕は想った。
あれ。僕が今やっていることは、掃除ではないか、と。
ルンバに掃除をして貰うために僕が掃除をしている。
……あれ、何かおかしい。
ルンバいらなくない?
自分で掃除をした方が早い。
それに気づいた途端に、急速に僕のルンバ愛が冷めていくのだった。
そしてしばらくの間、ルンバは部屋の隅で埃を被ることになる。
いままで埃を吸ってきたルンバが埃だらけになるという、なんたる皮肉。
結局の所、ルンバのようなお掃除ロボットは、ある程度の広さと、ある程度の整理整頓が行き届いたご家庭向けなのかも知れない。
我が家のように、おもちゃが散乱し、部屋の隅が物置と化しつつある家では、そもそもルンバがまともに働いてくれない。
それに、自分で掃除をしても大して時間も掛からないしね。
かくして、自分でお掃除をするようになったパパができあがったのでした。
いまは、マキタの充電式掃除機と、クイックルワイパーでお掃除をしています。
特にマキタは、軽くて長持ちするので、おすすめ!
いつか、長い紐があっても細かいオモチャがあっても、上手く対処してくれるお掃除ロボットが現れるまで……
もしくは、いつでも整理整頓された部屋が手に入るまで、お掃除ロボットはおあずけです。
うちにいたルンバはどうなったのか、って?
メルカリで里親を探し、優しそうな方に引き取って頂きました。
元気で過ごしていると良いのですが。
***
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