空っぽだった私が見つけた小さな扉から、世界は広がるかもしれない
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:紗那(ライティング・ゼミ)
「綺麗な写真なんて誰にでも撮れます。自分にしか見えない感性、世界が大切です!」
ショートカットで可愛らしいという印象だった茜先生はカメラを持つと、ちょっと人が変わっていた。
「上手い、下手ではなくて、自分だけのアングルを探してください!」
その日、私はひょんなことから天狼院書店の旅部というイベントに参加することとなり、初めてフォト部に加わった。茜先生は天狼院のフォト部で講師をしているプロのカメラマンの方だ。
「はい! スマホ組の人、次はここから! 早く! 早く!」
急かすように茜先生が私達にシャッターチャンスを教えてくれる。
あぁ、この感じ、本当に好きなものがある人の羨ましいくらいの熱量。
この熱量がある感じ好きだ。
その指導の様子から茜先生は本当にカメラが、写真が、フィルター越しに見る世界が好きなんだろうなと思った。
世界を自分だけのアングルで切り取る。
誰にも真似できない自分だけのアングルを探す。
「パシャリ」
あぁ
私はため息しか出なかった。
茜先生に教えてもらった通り、ほんの少しアングルを変えるだけで世界はこんなにも美しくなるのか。脳内のドーパミンが一斉にどばぁっと分泌されて、鼓動が早まる。
カメラって楽しい。
世界をこんな風に自分だけのものに切り取ることが出来るというのは何にも変えがたい幸せじゃないだろうか。
茜先生に言われた言葉を考えながら、スマホのカメラをモデルさんに向ける。
自分にしか見えない感性で世界を切り取る
いつもと同じじゃダメ。
固定観念を取り払って新たな視点から世界を撮る。
単に前から撮るのはダメ、真ん中にモデルさんを入れるのもダサい、地面に這いつくばったり、物陰から覗くような視点を描いたり。
その一枚の写真に素敵なストーリーをこめる。
あれ、これってライティングと同じだ。
誰かに言われたたった一言、起きたひとつの出来事、日常の風景の一場面。
そういうありきたりな世界を、自分にしか見えない視点から切り取ってその感性を文章に込める。
自分という唯一無二の人生を生きた人のフィルター越しに物事を見つめる。
私はこのライティングゼミに通い始めてから止まっていた時間が動き出したかのように毎日楽しかった。
単調だと思えていた仕事や、日常や、ちっぽけに思っていた自分の存在。
その全てが急に愛おしくなる。 相変わらず、上手くいかないこともあるけれど、それさえも文章のネタになると思えた。 不運なことでさえ、まるで料理を作るのにちょうど良い具材を運よく揃えられたかのように、得した気分になるのだ。
書きたい!
自分だけのアングルで、このありきたりな世界を切り取りたい!
私はずっとずっとこれがやりたかったんだ。人よりちょっと感情表現が苦手な私に唯一与えられたモノかもしれない。
嬉しい時も楽しい時も悲しい時も怒っている時でさえ、ちょっとクールぶってしまう自分が唯一、シンプルに向き合って表現できるのが文章なのだ。
文章でなら、真っ直ぐに自分の感情を表現できる。
正直、以前の私は茜先生みたいに自分の好きなモノを持っている熱量の高い人を見ると、死ぬほど羨ましかった。
昔の私には、そうやって人に熱く語れるモノが何もなかったから。
私の中を開けても覗いても叩いても空っぽだった。
どうして私には何もないんだ。
どうして私には人に何を言われようと構わないくらい大好きなモノがないんだ。
なんてつまらない人間なんだ。
ずっとそう思っていた。
平凡な人生、平凡な毎日、代わり映えのしない日常、1週間後も1年後も10年後だって大きな変化のないであろう日々。
私達は大人になるまでに多くの夢を諦める。
そうやっていくつかの夢を諦めていくうちに、私は自分が空っぽだということに気づいてしまった。
受験戦線に苦戦して、就職活動でやりたい仕事に就くことの難しさを知り、就職して社会の現実と女のキャリアの実情を目の当たりにした。
そういう日々を経るうちに恐ろしいほど何もない、がらんどうの自分に驚愕した。
もう自分には何も残っていないと思っていた。
やりたいことを望むことさえ無意味に思えたし、もはや、自分が何をやりたいのかも、わからなくなっていた。
だけど、私は彷徨う中で、空っぽの自分の中にライティングという小さな扉を見つけた。
ノックをして恐る恐る足を踏み入れたら、引きずり込まれるようにその世界にのめり込んでいた。
書くことで日常を新たな視点から眺めることができるようになるのだ。
この出来事にどんな意味があるんだろう?
この人にはどんな思いがあるんだろう?
そうやって考えて、考え抜くうちに、新しい価値観のアングルから世界を見つめられるようになる。そして平凡に思えた世界は、意外にも温かいのではないだろうかということに気づいたのだ。
人にはたぶん、誰にとってもたったひとつの小さな扉があるんだと思う。
茜先生にとってそれはカメラで、私にとっては書くことなのかもしれない。
その小さな扉を早く見つけられる人も、なかなか見つけられない人もいる。
だけど、きっとその扉はずっと私達を待っている。
早く扉を開けてくれってうずうずしながら、待っている。
そして、その先には見たことのない大きな世界が広がっているのだ。
まだ、扉を見つけられなくても、きっといつかそれぞれの人にとっての小さな扉が開くはずだ。
だから、私達はいくつ夢を失っても、空っぽな自分を諦めてはいけないのかもしれない。
「パシャリ」
今日も私はあれこれ悩みながら、自分だけのアングルを探し、文章に込める。
***
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