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猫が危険な理由


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記事:前田直子(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
コロナ禍となり、猫を飼い始めた。
在宅勤務となり、ずっと飼いたかった猫をついに飼える状況となったのだ。飼ってみて分かった。猫は大変危険なシロモノだ。
 
猫がなぜ危険なのか。
理由はたくさんあるが、とりあえず3つあげてみる。
 
・飼い主の人格がおかしくなる。
うちの夫は、会社では割とクールでできる男を気取っている。ゴリゴリの理系で論理的、世間一般で他人の恋人や配偶者を褒めるときによく使われる「優しそうだね」という言葉も、夫に関して言われたことがない。目つきの鋭いクールな男なのだ。
その夫が猫を前にすると、目尻が下がり、「~でしゅね~」という赤ちゃん言葉になり、語尾に「かわいい」がつく、デレデレのおじさんに変貌する。
言うまでもなく、私も同様だ。猫たちの写真や動画を撮りまくり、他人から見たら同じに見える写真も、「少し角度が違う」などと言って残すが故に、常にスマホの容量が圧迫されているし、その写真をすぐ人に見せたがる。そしてスキあらば猫に顔を埋めたりニオイを嗅いだりして、猫たちに嫌がられる毎日だ。
 
・猫の毛にまみれて暮らすことになる。
我が家の猫は「ノルウェージャンフォレストキャット」という大型の長毛種なのだが、なにしろノルウェーという寒い国が原産なので、とにかくモッフモフで、抜け毛がすごいのだ。掃除機をかけた直後に、固まりで猫の毛が落ちているし、炊きたてのご飯の中に猫の毛が入っているし、外出前にコロコロしたはずなのに猫の毛がやたらと洋服についていたりする。ちょっと恥ずかしい。
ちなみに我が家に遊びにきた友人は、帰宅後にお風呂に入ろうとしたら、下着の中から猫の毛が出てきたと言っていた。
 
・いつも寝不足になる。
私はロングスリーパーであり、寝るのが何より好きなのだが、私の大好きな睡眠タイムを猫は妨害してくる。
さて、そろそろ寝る支度をしようかな、と立ち上がろうとすると、足の上に乗ってきて甘えてきて動けなくなるし、寝入りそうなタイミングで、布団の上に乗って始まるフミフミ。ありがたくも迷惑な身体の上での睡眠。そして真夜中の運動会。
我が家には2匹猫がいるのだが、真夜中に追いかけっこを始め、ときにその会場はベッドの上となる。7キロと6キロの猫が、脱力したお腹に踏み込んできたときの衝撃たるや。「ううっ」とうめき声も出るというものだ。
そして明け方になると、お腹をすかせた猫たちがベッドの上をウロウロし始めるため、落ち着いて眠れやしない。おかげで以前よりも早起きになってしまった。
 
以上の理由で、安易に猫を飼うことはおすすめしない。家も家具もボロボロになる。壁も床も、高かった革のソファも台無しだ。
 
ただ、コロナ禍の在宅勤務も含めた引きこもり生活での私のメンタルや、夫との関係を保ってくれたのも猫たちだと思うのだ。ふわふわの毛を撫でているとき、すりすりと甘えてくれるとき、猫たちの寝顔を見ているとき、この上ない幸せを感じさせてくれる。
 
私も夫も比較的ハードワーカーで、通勤しているときには毎日帰りが遅かった。比較的仲が良い方だとは思うが、平日は顔を合わせて話をする時間もあまりなかったし、残業後に同僚と飲みに行くことも多く、それぞれで夕食をとることが多かった。
それがコロナ禍で生活が一変し、お互いに家にいる時間が増えた。まさか2人で在宅勤務をするなんて想定せずに購入した家なので、それに対する不満もあった。
在宅勤務により同僚との雑談機会も減り、ストレスの解消もしにくい状況だった。
 
そんな生活の中に、猫という天使が舞い降りた。
素敵な触り心地と、愛くるしい仕草に私たちは一瞬で虜になった。
猫をお風呂に入れるのに大騒ぎしたり、うんちをお尻につけたまま爆走する猫を追いかけたり、猫を通しての夫との共同作業?も増え、笑顔と会話も増えた。猫が何かやるたびに、顔を見合わせて「ねえ見て! かわいい~~~~」と言い合う。私にとって幸せなひとときだ。
夫とのLINEも増えた。別行動時に、猫の様子や写真を送り合うためだが、それに伴い、猫以外のやり取りも増えた。出張時に新幹線の中で撮影した、富士山の写真なんかが送られてくるようになった。
猫たちに会いたさに、我が家に遊びにきてくれるお客さんも増えた。また猫に会いに行ってもいいか、と問い合わせの上、何度も来てくれる人もいる。
子はかすがい、ならぬ、猫はかすがい。人と人を繋いでくれる力を猫は持っている。
 
猫は思っていたよりも感情豊かで自己主張が激しいし、思っていたよりも甘えん坊だ。そして思っていたよりも噛むし、理不尽。そして思っていたよりもずっとずっとかわいい。
 
最初1匹だった猫が、いつの間にか2匹になっていた。そして気づくと、猫の里親探しのサイトを見ていたりする。
あぶない。猫は気をつけていないと増殖する。
 
やはり猫は危険なシロモノだ。
 
 
 
 
***
 
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2023-04-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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