ネタが欲しけりゃ、八百屋に行け。 もしあなたがネタ探しで困っているとしたら、ぜひ試してほしいことがある
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:あわづりつこ(ライティング・ゼミ)
「ほらほら、あっちの人も写真撮ってるよ」
「はたから見ると、けっこう滑稽だよね」
「私たちもそう見えてるんだろうね、きっと。本人は大真面目でいい構図を探してるんだけど……」
昨今、SNS流行りで、FBにアップする写真を撮るために話題のスポットにわざわざ出かけたり、ネタを探して街をうろつき、話題のスポットにいち早く駆けつける人が増えているという話がよく話題に上る。イベントの主催側も、SNSでの拡散を狙って、通常写真は絶対アウトの美術展でさえ専用スペースを設けて、そこでの自撮りを「SNSでぜひ拡散してください!」とちゃっかりお客に宣伝担当を任せてしまっていたりする。誰もが発信者、誰もがネタ探し。一億総中流ならぬ、一億総ネタ探しである。
かくいう私も、ライティングを学び直すためにゼミに入った日から、ネタネタネタ、とネタ探しをする日が続いていた。ある時は泉のようにネタが次々と溢れだし、慌てて忘れないようにメモを取りながら、私もようやくネタを見つける技が身についたかと喜んだのもつかの間、ぱったりネタが尽きて何も湧かない日が続き、悶々とする。そんな日が4日も5日も続くと暗澹たる気持ちになる。面白くない私、平凡な私、不感症の私、無能な私。自己肯定感も下がりっぱなしである。
群ようこのエッセイで「全く何も湧いてこない、どうにも何も湧いてこない」、といったくだりがあったのを思い出し、プロでも湧いてこないことがあるんだから素人なんて何をいわんやだ、と自分を慰めてひとりごちてみるが、湧いてこない状況を好転させることには全く役にたたない。なくしものを探すように部屋の中を所在なく何度もうろついてみたり、ぶつぶつ独り言を言いながら道を歩いてみたり、電車でキョロキョロしてみたり、いつもなにかないかと探している自分の姿が、餌を探してうろついている腹を空かせた狼に思えたり、外から見ると物欲しそうな顔をしているのではないかと思えたり、心の中にどんよりとしたシミがどんどん広がっていく。だからと言って、トレンドスポットをハシゴしまくるのはどうも違う気がする。なんだか本末転倒のような違和感がどうしても拭えない。
それだけで面白いもの、いわゆるいいネタに出会おうとすると、場所やタイミングなどある意味運勝負だったり、暇があるとかないとか、お金をかけられるとか、リソース勝負だったりで、他者依存、もっというとかなり振り回されている感がしてしまう。こんな時「青い鳥」の話を思い出してしまう。
毎日ごはんを作っていると、よく似た状況に遭遇する。いつも最上級のお肉屋や魚、野菜が冷蔵庫にうなっているわけではない。むしろ日々冷蔵庫を覗いて、残り物やあり合わせの野菜を眺めるとき、これでどんな料理を作ろうか、どうしたらおいしくできるだろうか、と考えを巡らせることの方が多い。
これ美味しそうだ、作ってみよう! と新作レシピの材料のメモを握りしめ、ウキウキとスーパーに行ってみたら主役の魚が今日に限って売ってない、というとき。急病に倒れた役者に代わる代役を急遽探すように他のメニューが頭の中でぐるぐると駆け巡る。すでに家にあるもの、今日手に入るもの、そして新作を作ろうとアガっていた気分を落ち込ませずにもう一度奮い立たせてくれる、素敵なメニュー。
これら一つ一つのプロセスは、素材をどうしたら美味しい料理に変身させられるか、という工夫と手間の一端だ。その時脳裏にピンでとめられているのは、家族の美味しそうな笑顔の写真。このためにご飯を作るのだから。
「これを美味しくしてやるぞ」という料理人的な見方をすると、「なんだって面白くしてやるぞ」「どう工夫してやろうか」と、自分がハンドルを握っている感覚が強くなり、とても主体的にものを見、考えられるようになる。
ネタ探しをしていると、いつも「青い鳥」の話が浮かんできてしまうのは、外にばかり目を向けていたせいだ。何も手をかけずに面白いネタなんて、そうそう毎日転がっているわけでもない。
日常の何気ない出来事を面白がれることだったり、自分がそこで「おもしろい!」と思ったことを他人にも「おもしろいね!」と言ってもらえるように工夫して表現すること、その一連のプロセス全体が「ネタ探し」なのだ。ネタとは鴨を撃ったり、ウサギを罠で捉えるように「狩る」ものではなく、手をかけて育てる・作り出すものなのだ。
こう思うと、「ネタ」という見えない敵に振り回されていた感覚から、どっしりと腰を落ち着けたような、地に足がついたような気分に変化してきた。
ネタネタ……と上や足元を見て歩いていたのが、表現を磨くとか、語彙を増やすとか、本を読んだり映画をみて心が動いた時のポイントを研究したりとか、といった方に視点が変わり始める。
すきやばし次郎が人気なのは、ただ単にお寿司が食べたいのではなく、小野次郎という寿司職人の手間と工夫を味わいたいのだ。
吉兆に行くのは単に美味しい和食を食べたいのではなく、室礼、盛り付けも含めた総合プレゼンテーションとしての料亭を堪能したいからなのだ。
いい素材は素晴らしいが、その素材の素材を最大限に引き出す工夫そのものも大変な価値がある。
米麹が流行った時、「100グラム90円のお肉だってこの味に!」ともてはやされた。素材がイマイチだったとしても、高級なお肉のような味わいになる、と大人気になった。麹というスパイス(厳密にはスパイスじゃないけど)も付加価値として素晴らしいが、その麹の存在を知っていること、それを使いこなせることが、そのマジックの最大の付加価値ではないだろうか。
これからは、ネタに困ったら冷蔵庫を開けよう。
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