疲れた大人の特効薬~そうだ、焚き火をしよう
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記事:前田直子(ライティング・ゼミ4月コース)
「もうやだ! 疲れた! 自然の中で癒やされたい!」
残業続きの毎日で、仕事上のストレスや減らないタスクで頭もいっぱい、MTGも画面越しのWeb会議、仕事でもプライベートでもスマホやPCを見続け、眼精疲労が止まらない。気づくとまぶたがピクピクと痙攣を始め、鬱陶しいことこの上ない。
「焚き火! 焚き火がしたい! 焚き火を見ながらウイスキーが飲みたい!」
急にそんな思いに駆られ、焚き火をしたのが2023年1月。
そして夫婦共々すっかり魅了されてしまった。それ以後、1月、3月、5月と2ヶ月毎に焚き火をしている。
ちなみに私は完全なるインドア派である。
虫は大嫌いだし、トイレもきれいじゃないとイヤ。
できればシャワーを浴びてさっぱりしてから、ふかふかのベッドで寝たい。
ガチキャンパーの方には怒られそうだが、そんな私のようなワガママなニーズを持つ人は多いのであろう。最近はグランピング施設のオープンラッシュだ。
グランピングとはグラマラス(魅力的な)と、キャンプを組み合わせた造語で、特に事前準備をせずとも手軽にキャンプ体験ができるのが魅力だ。コテージやドーム型テントで、バス・トイレ付き。焚き火ができる施設も多い。
これだ。
少し値段は張るが、面倒なことは金で解決したいタイプの私にはピッタリである。
本格的なキャンプをしたいのではない。私はストレスなく焚き火がしたいだけなのだ。
やってみて思った。
焚き火はリラックス効果がある上に、手っ取り早く達成感を味わえる。疲れたココロに効く、現代人のための特効薬なのではないか、と。
「1/fのゆらぎ」をご存知だろうか。
自然界の音やモノに含まれるリズムの揺らぎ方のことであり、これを感じると本能的に落ち着き、脳波にはリラックス状態を示すα波が増えるという効果も確認されている、らしい。
川のせせらぎや小鳥のさえずり、ろうそくの炎や木漏れ日、肌を撫でるように吹くそよ風など、心地よい不規則さが自然界には溢れていて、癒やしを与えてくれる。
焚き火にも「1/fのゆらぎ」は含まれている。ゆらゆらと形を変えて揺れる炎や、時として舞う火の粉、パチパチと爆ぜる音。
ずっと見ていても飽きない。会話などなくても、ただ炎を見ているだけで満たされる。
朝や日中の焚き火も良いが、私としては夕方~夜の時間をおすすめしたい。
外の世界は日が沈み、徐々に暗く、肌寒くなっていくが、それとともに焚き火の存在感は増し、夜と火のコントラストがはっきりとしていく。
ウイスキーをちびちびと舐めながら、目の前の揺らぐ炎をただ眺めていると、雑念が消えて頭の中が空っぽとなっていくような気がする。心の中のモヤモヤも一緒に燃やしてくれるようで、とても素直な気持ちになる。
同行者とゆったりと話をすると、関係も深まっていく気がするのだ。
正直、焚き火をしながら何を話していたのかは全く覚えていないのだが、ポツポツと話したり、無言で火を見つめていた時間はとても良いものだった。
また、薪を割る、火を起こす、火を育てる、という作業にも、メリットがあるように思う。
チャッカマン、ファイヤースターターなど火をつける道具はいろいろあるが、いきなり太い薪に火をつけようと思ってもうまくいかない。
火は下から上がっていくので、着火剤などは一番下。火がついたら細い木へ、そして太い木へ。空気の通り道も作りながら、徐々に火を大きくしていく。
火が弱まったら、新しく薪をくべたり、火吹き棒で空気を送り込むなど、工夫をしつつ火を維持する。
「手っ取り早く達成感を味わえる」と前述したが、薪割りもちょっとしたコツがいるし、チャッカマン以外で点火する場合はすんなり点かなかったりする。
「んもーー!!」と癇癪を起こしたくなったりもするが、自分の手で作業を行い、焚き火をなし得たときの「できた!」という達成感。そして、じっくりと炎を眺める充足感。これは日常生活ではなかなか味わえない。
集中と緩和。
なにかに没頭し、そして頭をからっぽにする。
日常生活で得たくてもなかなか得られないものを、焚き火で得られるからこそ、私は焚き火に魅了されたのかもしれない。
焚き火には、疲れた大人の心を整えてくれる作用があるに違いない。
グランピングは最高だった。煙くさい身体をお風呂でさっぱりした後にベッドでぐっすりと眠ることができた。
ただ、できればもっと頻繁に、気軽に焚き火がしたい。
となると、やはり焚き火台などのギアが必要なのではないか、と購入を真剣に悩んでいるところだ。
今はまだにわかであり、初心者であるが、いずれマイ焚き火台をゲットし、本物の焚き火ニストとして焚き火をする日はそう遠くないかもしれない。
疲れた大人よ、焚き火をしよう。
これからの季節はちょっと焚き火には暑いから、私が次にするのはもうちょっと寒くなってからだけど、ね。
***
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