私の名前がもつ温泉並みの癒し効果
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記事:bifumi(ライティングゼミ)
私の苗字はエンドウ。
クラスに必ず1人はいる、山田、田中、鈴木、その次くらいにくるごく一般的な名前だ。旧姓が珍しい名前だったので、エンドウという姓が平凡すぎて、結婚する時もふーん、くらいにしか感じられなかった。
それでも結婚当初、役所に書類を出しにいった際、受け付けでエンドウさんと何度呼ばれても、自分だと気付かずスルー。何回かそれを繰り返すうちに、「あぁ、私本当に結婚したんだ、名前かわっちゃったんだ」という実感が、殺風景な役所の待合室のソファーでジワジワ湧いてきたことを思い出す。そんな初々しい時期もあったなぁ(遠い目)
エンドウになって、17年。もうさすがに違和感はない。
呼ばれることがなくなった、旧姓の方が、今は実態のないフワフワした異国の単語のようで、ピンとこない。名前って呼ばれなくなったらそんな風になるものなんですかね。これで、旧姓に戻ることにでもなったらどうしよう? また役所の受付けでしばらく、ピンとこないゲームを繰り返すのかしら・・・・・・(頭がちょっと混乱しそうなのでぜひ、戻らない事を祈る)
ある日、小学校に入学したばかりの息子が泣きながら家に帰ってきた。
私「どうした?」
息子「きょ 今日 うぇ うぇっ 学校で やーいえんどうまめってぇ いわれたぁー」
私「?」
なぜ、まめ?
娘が小学校に入学した時も同じようなことを言われて泣きながら帰ってきた。
どうやら、エンドウという名前は、小学校に入ると「やーい!えんどうまめ」という、低学年の子供にありがちな、からかいの洗礼をうけるらしい。
なぜ、らしいのかというと、私は大人になってからのエンドウ歴なので、小学校低学年の頃に味わう、まめ洗礼を受けたことがない。
私「ごめん、お母さん大人になってからエンドウになった人やけ、子供の頃、やーい! えんどうまめって言われたことがないんよ。だから、どれくらい悔しいのかがよくわからん」
息子「もういいっ!」(エンドウ歴の浅さゆえ、悔しさわかってあげられずにごめんよ)
その夜、主人に子供の頃、えんどうまめ洗礼を受けたか? と聞いてみたところ、即答でYES。「やーい! えん」と言われた時点で、もう飛びかかり、こてんぱんにやっつけていたらしい。さすが、生粋のエンドウっ子だと、妙に感心した。
息子が中学に入ると、英語の授業が始まった。
すると、息子のあだ名が今度は「えんどぅぅ~」に変わった。ローマ字で書くとENDO。doの発音表記がでてくるとこうなるようだ。友達からも先生からも、えんどぅぅ~えんどぅぅ~と呼ばれるようになった。塾の面談に行った際も、先生から「最近do~は頑張ってますよ」といきなり言われ、びっくり。(ちょ、ちょっと、それもうただ、どぅぅ~が言いたいだけですよね!)
息子は愛すべきいじられキャラなので、キャラ的に言われていたのかと思っていたら、娘が中学に入学すると、やっぱり同じようにどぅぅ~どぅぅ~言われるようになった。娘の場合も、英語の先生が、どうでもいいような事でえんどぅぅ~えんどぅぅ~と娘を呼びとめるらしい。
ここでちょっと言ってみてほしい。えんどぅぅ~ SAY! えんどぅぅ~ SAY! どぅぅ~
結構気持ちよくないですか?どぅぅ~単独よりも、えんまでフルで入れた方が気持ちよくないですか? (笑)
この感覚、何かに似ていると思ったら、わかりました。まるで寒い雪道を何時間もかけ、道なき道をかきわけ、やっとたどり着いた秘湯。凍えるような形ばかりの脱衣所から、もうもうと湯気が立ちのぼる湯船がもう目の前に見えてくる。早く入りたい! はやる気持ちをおさえ、ごつごつした岩で囲まれた湯船めがけて一直線。すべらないように小走りでたどり着く。湯気で中はみえない。寒さでかじかんだ足先から少しずつお湯につけていくと、足の指がじんじんする。でも最高の癒しはこの先、もう少しの辛抱。熱さを堪えてじわじわと体を沈めていく。(こういう時は白濁のお湯に限る)ふぅ~やっと肩まで浸かった。その時の、腹の底からでてくる第一声「はあぁぁぁ~!」のように「どぅぅぅ~!」が感じられませんか?
息子の時といい、娘の時といい、先生達も何かにつけて、どぅぅ~どぅぅ~呼びたがっているのは、決して気のせいではないはず。そりゃ、毎日の激務で疲れてるんでしょ。モンスターペアレントと、校長先生の間で疲弊することもあるでしょ。そんな時、発音することで、なんだかふぅ~っと癒される名前の生徒が目の前にいたら、そりゃあもう呼ぶしかないでしょ。
SAY! 「えんどぅぅぅ~」(ラップ調で!)
結婚当初から、平凡で特に何も感じなかった名前だけど、激務で疲れた先生や、クラスの友達が、この名を呼ぶことで、少なからず癒されていることを知り、大人になってからのエンドウ歴しかない私は、ちょっと、いやかなり羨ましい。
私も温泉並みに人を癒せる、そんな名前で思春期を送りたかったな。
結婚して17年、エンドウという名前に、やっと親近感が湧いてきた気がする。
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