「趣味はゲームです」の一言が、私の就職活動とついでに理想をぶっ壊した話
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記事:タク(ライティング・ゼミ)
「趣味は、週末に東京の友人とオンラインゲームすることです」
これが、私の就職活動に空前絶後の衝撃を叩き込んだ一言だ。
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「働きたくない」
大学の就職活動において、多くの学生が1度は呟いてしまう言葉。
勿論、2年前就活生だった私もその例に漏れなかった。
自分には何の仕事が向いているのか。
自分はどんな社会人になりたいのか。
社会人になったら1日をどう過ごすのか。
そもそも何故働くのか。
バイト程度の社会経験しかない私に、いつものしかかるヒントすらない問いかけ。
結局何ひとつ明確なイメージなど浮かばぬまま、パソコンを開いて就活サイトで山のようなメールをチェックし、そしてそこにある山のようなメールから逃げるように、ゲームに走るのが就活生にあるまじき私の日課だった。
やること成すこと楽しい大学生活がやがて終わりを迎え、労働という今の自分には想像もつかない生活パターンをすることを強いられる。そういうイメージが、ずっと脳内をぐるぐるしていた。
※※※
「私の尊敬する人物は、両親です」
今にして思えば、当時の私は「社会人」という言葉のイメージに、いつも父と母の背中を見ていた。
結婚し、私を生み、そして全力で育ててくれた両親。
自分の一番身近な社会人である両親。
物心ついてからはいつも子育てと仕事に追われていた両親。
両親の姿から導き出される社会人像は、いつも見上げるほどにハードルの高いものだった。
私はそんな、オリンピックの世界記録のごとく高いハードルを目標にしたまま、就職活動を始めた。
手探りのままで始めた就職活動は、自分が想像していた以上にうまくいかない。どれだけ志望企業に寄り添うような動機を取り揃えても、突っ込まれればボロが出る。社会人生活のイメージなんてないから、夢なんて聞かれても答えられるわけない。毎日どこかしら届く「今後のご活躍をお祈りいたします」というメールに、ショックすら覚えないようになっていた
仕事と子供にすべてをかけるような大人には、自分はなれないのではないか
両親のような大人には、なれないのではないか。
そんな疑念を抱かざるほどに就職活動が行き詰ったころ、一つの出会いが訪れた。
※※※
今ではもう、それが何の会社の新入社員との座談会であったのかは覚えていない。しかし1年経った今でもハッキリと思い出せる彼は、座談会開幕早々に隣の上司を気にもせず、歯に衣着せぬ本音をズバリズバリと繰り出す男性だった。
座談会も進み、定番どころの給料や仕事内容についての質問が一通り終わった頃、一人の就活生の質問が飛んだ。
「プライベートでは何をして息抜きをしていますか」
これもまた、座談会でよくある質問である。私はどうせ「身体を動かす」とか「同期と飲みに行く」とか、そういう「社会人として耳障りのいい趣味」が返ってくるのだろうと想像していた。
すると彼は、自信たっぷりにこう言った。
「趣味は、週末に東京の友人とオンラインゲームすることです」
最初は聞き間違えだと思った。しかし彼はそのままその趣味がどれほど楽しいものかを語り始め、直前までメモを取っていた私は呆気にとられていた。
こんな社会人がいるのか。
就活生を前にして、なおかつ自分の上司も横に居て、耳障りの良い言葉で場を収めておけば周りの心証も良いままお開きとなる場で、何一つ後ろ暗いとこなくゲームを趣味といえる人間がいるのか。
私もゲームが大好きな人間だ。
大学時代の3分の1はゲームに費やしたのではないのかというほどやり込んだ。しかしそれは散々ゲームを抑圧されてきた中高生時代の反動であり、あまり他人や親に理解してもらえるような趣味ではなかった。勿論エントリーシートに書くことなど夢のまた夢だ。初対面の人に堂々と自信をもって話すなど、私の中ではあり得なかった。だからこそ会社説明会の座談会という場でその発言をした彼に度肝を抜かれたのだ。
「仕事中も週末が待ち遠しい」
私が一人呆気に取られている中、そう言って彼は自分の話を締めくくった。
最後まで自信たっぷりの笑みと共に。
※※※
その座談会からの帰り道、私は急に暗雲の立ち込めていた就職活動に、一筋の光が差し込んだような錯覚を覚えていた。
「世の中にはあんな大人もいる。自分の趣味を堂々と語って、週末の為に仕事を乗り越え、それを誇らしげに語れる大人。両親みたいな立派な人間になるのは無理でも、ああいう自信を持った大人なら、目指せるかもしれない」
手元のエントリーシートに目を落とすと、そこには確かに私の考えではあるのだけれど、選考を受ける企業それぞれに耳障りのいい言葉でデコレーションされた文章が並んでいた。
「企業の理念に共感して……」
「世の為人の為になる仕事を……」
「御社に以前から興味があって……」
笑ってしまうほど、自分の言葉じゃない文章たちが並んでいる。
まずはここから変えよう。ちゃんと自分の言葉で(その結果落とされたとしても)夢と考えを語ろう。そしていつか、両親みたいにはなれなくとも、彼のように今のような迷える人の前で堂々と自分の趣味を見せつけてやろう。
福岡の複雑なビル街に迷子になりながら、私はそう決意して家路についた。
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