ブレードランナーに似たあの街にはまる人続出!《ふるさとグランプリ》
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記事:bifumi(ライティング・ゼミ)
「へー、あの街出身なんだ! ブレードランナーにでてくるような街だよね!!」
バイト先の先輩が興奮したように言った。
実家を離れ長崎の大学で最初に見つけたアルバイトは、レンタルビデオ店の受付だった。
今はもうみなくなった、VHSやベータのビデオカセットを貸し出していた。
一緒にシフトに入った先輩に、出身地を聞かれ答えると、このリアクションが返ってきた。
「あのー、ブレードなんとかってなんですか? よくわからないんですけど」
「えっ!? ブレードランナー知らないの? 名作だよ! そうだ、今日何本かおススメの映画見繕っとくから、借りて帰るといいよ。俺の言ってる意味がよくわかるから」
映画好きの先輩は、俺のおススメベスト5をシフト上がりまでに用意しておいてくれた。先輩は映画好きで、バイト時間が一緒になると、自分が感動した映画や、涙した映画の話をいつも楽しそうに話してくれた。この先輩のおかげで、かなり映画に詳しくなった。
その日借りたビデオを手に家の鍵を開けると、靴を脱ぐのももどかしく、ビデをカセットをデッキに差し込んだ。生まれ育った街を映画に例えられるなんて初めてだ。ドキドキした。
だけど、
だけど、そこに映し出されていたのは、どんよりとした空、雨に濡れた灰色の街。猥雑と喧騒に包まれた歓楽街。おかしな格好の芸者と「強力わかもと」の文字がデカデカと映し出される電光掲示板。その後ろにみえる、近未来的な建物からは、もくもくと灰色の煙が立ち上る、そんな光景だった。
ああやっぱりそうか・・・・・・
よその人には、私の育った街は、こんな風に見えるんだ。
薄々気づいてはいたけど、悲しかった。
高校生の頃から、一刻も早く生まれ育った街を出たいと思っていた。
何の刺激もない変わり映えのない街。
灰色の空、灰色の建物、風さえもグレーがかってみえる。
街全体が退屈すぎて、建物も煤けてみえた。
もう、うんざりだ!
大学が決まり、この街を離れることになった時、嬉しくてしょうがなかった。
私は生まれ育った街が大嫌いだった。
「ブレードランナー」のストーリーは正直あまり覚えていない。レプリカントという感情を持つロボットが、暗闇で悲しそうに涙を流していたことが印象的だったくらいだ。
それよりも君の育った街は、陰気で暗くて灰色の街だと、私が一番見ないようにしていたこと、認めたくなかったことを、あの街で育ったこともない人に指摘された事の方が、悔しくて切なかった。
「ブレードランナーどうだった?」次の日先輩に聞かれた。
「私には話が難しすぎて、よくわかりませんでした。それより私の地元と似てますか?そうは思えなかったですけど」精一杯ムッとした声で答えた。
「えっ! あの映画が面白くなかった? 近未来的な街並みが最高にかっこよかったけどな。これまで俺が見た映画の中でも最高傑作だよ。初めてあの街に行って、グレーがかった街や、工場の煙突から上る煙を見た時、映画の世界がすぐ目の前にあらわれたようで、かっこよくて、しびれたんだ。そうか面白くなかったか・・・・・・
それは悪かった。また今度良さそうな映画があったら紹介するよ」
ちょっと寂しそうに先輩が言った。
え、ええっ!?
ちょっと、今なんて言いました?
灰色の街並みや工場、煙突から上る煙がかっこいいですって?
不思議な気持ちだった。
いやだいやだと、逃げるように出て来た街。
煙突が並ぶ姿も、グレーの空も、そこで育った私には、ごくありふれた日常だった。
かっこいいと思ったことなんて、一度もなかった。
身近にありすぎて、私には見えなかったものが、先輩には見えていたんだ。
***
大学卒業後、結局私は、生まれ育った街に戻った。
相変わらずこの街は灰色だ。
ただ、私には変化があった。
街のグレーを構成する、昼夜問わず煙を吐く工場群を見るのが大好きになった。
今まで気にも留めなかったものに、注目するようになると、
工場がどれも同じ形ではなく、それぞれに個性があることがわかった。
そして、お気に入りの工場もできた。
同僚に、好きな工場群の美しさを熱く語るようにもなった。
これが会話の糸口となり、皆それぞれ好きな工場があることを知った。
意外と女性が、この話に乗ってきてくれることが多かった。
なんだ、口にしないだけで結構みんな工場が好きなんじゃないか!
私の大好きな工場群は、山と山を切り開いたちょうど真ん中にある。
夕方この場所を通る事が多い。私の一番好きな時間帯だ。
赤い夕陽を背に工場一帯が赤から紫のグラデーションに染まる。人工的でない光は無機質な工場すら優しくみせる。紫から黒に陽が暮れ始めるころ、工場に灯りが灯る。山と山の間にあるので日が暮れ、暗闇の中に、光の群れが突如現れる様は、息をのむほど幻想的だ。夕陽とは一転、人工の灯りをうけ、工場は本来の輝きを取り戻したように、生き生きしてみえる。
ある日SNSで知り合いが、「俺のお気に入りの場所!」というコメントを付けて、この工場の写真を投稿していた。「私もここ大好きです! 特に夕暮れ時は映画の1シーンみたいですよね」とすかさずコメントした。「俺、ここを通る時は必ず、ブレードランナーをBGMに流すようにしてるんだ」との返事。
おっと、ここにもブレードランナーに似たこの街に、魅せられた人発見!
私の生まれ育った街は、北九州市。
昔は日本3大工業地帯の1つと言われた、工業の街だ。
工場群の煙突からは、年中煙が上がっている。でも、この煙は有害物質を除去したもので、成分は水だ。私も先日、市主催の船で巡る工場夜景ツアーの際に初めて知った。陸からの眺めもよいが、海からみる工場群も光にあふれ、工場全体が呼吸をしているようで、その美しさにはため息がでる。
この街の人はとてもシャイだ。口が悪いのも、街には何もないと自虐的になるのも、照れ臭いからだ。持っているモノを素直に「これいいでしょ?」と言えない超アピール下手なのだ。でも、情に熱く世話好きでおせっかい。恥ずかしがり屋だが、気のよい人が多いのも自慢だ。
美味しいものもたくさんある!
労働者の街なので、上品なものはないが、B級グルメなら、どこの土地にも負けないくらいの自信がある。パン1つとっても、絶品でおまけに安い!
この街は、ブレードランナーにでてくるような街だとよく言われる。
グレーの空も、グレーの街並みも、それを構成する工場群も、煙突から絶えずでる煙も本当に良く似ている。
私が生まれ育った街、北九州市。
私はこの街が大好きだ。
ぜひ、一度遊びにきてほしい。
B級にはB級の良さがある。はまると癖になることは保証する!
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