顔の取扱説明書
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:うらん(ライティング・ゼミ)
「最近きれいになって、応援したくなりました」
なーんだ。同性でもそうなんだ。
何だか裏切られた気分だ。
スキージャンプの高梨沙羅選手が、急にきれいになったともっぱら評判である。
TVの街頭インタビューで、高梨選手の印象を尋ねられた女の子たちが、口々に答えていた。
「なんかぁ、可愛くなったら共感が持ててぇ」
ふん。
「最近、けっこう好きかも」
ちっ。
やっぱりそうなんだ。きれいであるとか可愛いということが、人の評価をこうも変えるなんて。
高梨選手がスキーの練習に努力を重ねているから、「応援したくなる」というのなら分かる。このところジャンプで良い成績を出し続けているから、「最近好きかも」というのなら分かる。
だが、その理由が「きれいになったから」というのは、どうにも解せない。
いや。それを男性が言ったのであれば、まだ理解できるのだ。同性ですらも容姿に左右されてしまうということが、どうにも面白くない。
どうして快く思えないのか。
それは、私がブスだから。
容姿で人が評価されてしまう浮世の習いに、もううんざりしている。
だって、私は全然イケてないんだもの。野暮ったいんだもの。
これまでの人生、惨めな思いをした経験が何度あることか。
一人で飲食店に入ったとする。
「お一人様ですか。こちらへどうぞ」
案内される席が、観葉植物の陰であったり、店の奥まったところだったりする。店内が空いていて窓側の席が空いていても、だ。
そうよ。私には華がない。目立つ席には座らせたくないのね。
勝手にそう確信しては、いじけた気持ちになっている。
きれいな友人とショッピングをしていて気付いた。どの店の店員さんも、友人の方にばかり話しかける。途中で私と話していても、いつの間にか友人の方に会話が移っている。
職場でも、上司はきれいな人の方に、より優しいと感じるのはなぜだ。偏った見方かもしれないけれど。
冴えない男性も、奥さんや彼女が美人だと分かると、急にその男性の株が上がるではないか。男性にとって、美人の妻あるいは彼女を持つことは価値のあることなのだ。社会的な評価を高めることに繋がるのだから。
世の中のこんな通則は、挙げていったらキリがないほど経験してきたし、見てもきた。
そのたびに、痛い思いをしたり、情けない気持ちになったりしている。
それなのに、おかしなもので、その事実をわざわざ確認するかのように、容姿の良い人がもてはやされている事例を見付けては、「ほら、やっぱり」と納得している自分がいる。
もうこんな思いは嫌だ。
次第に社会に関わることに臆病になる。人と関わること、社会と接点を持つことに、ためらいを感じるようになってしまう。
ああ。もっときれいに生まれていればなぁ。
私の顔が、綾瀬はるかだったら、佐々木希だったら、もう人生こっちのものだ。
他人から愛想よく接してもらえ、すると、こちらもいじけることがないから性格もよくなり、ますます他人から好かれ……。いいことづくめである。
いいや。
そうではない。
そうではないだろう? ごまかしているんだ、私。
私は、うすうす気付いている。
自分が本当に向き合わなければいけないものから、目を背けようとしているのだ。容姿で不利な思いをしていることを理由にして、問題から逃げている。
自分の本質を出しても受け入れられないかもしれない、そんな現実に直面したくないのだ。
器量が悪いことで惨めな思いをしたことなんて、多くの人が経験しているはずだ。
いや、゙多ぐはないだろうけれど、決して稀なことではない。
ただ、だからといって誰もがそのことで悲観してみたり、容姿ばかりは不可抗力だと諦めたりするわけではない。人と関わることに臆病になるわけではない。
――ブスは歓迎されない。だから、何事にも弱腰になって当然だ。容姿は生まれついてのものだから、自分の力ではどうしようもできないのだから――、そんな大義名分をもって、煙に巻こうとしている。
何事かに取り組んだとき、それが成功するとは限らない。努力を重ねたからといって、必ずいい結果が得られるとは限らない。人との関係においてもそうだ。他者との関わりを持てば、傷ついたり嫌われたりすることもあるだろう。
そんな痛手をこうむるくらいだったら、ひっそりと潜んでいた方がいいと考えてしまう。
そんな自分の逃げ腰を、ごまかそうとしている。器量が悪いから何事にも積極的に出られないのだ、と思おうとしている。
でも、それではいけないのだ。
ブスであることを理由にして、自分が向き合うべき課題を避けていてはいけない。
容姿が劣っていることで心を痛めたことがあったとしても、そのことをもって自分の弱腰に正当性を持たせてはいけない。
「美しく生まれていれば……」、そう考えている限り、今の人生は、まやかしみたいなものになってしまう。「……だったら」と思っている間は、自分の人生を生きていないことになる。
何事かに挑戦したり社会と接点を持ったりしなければ、傷つくことはないかもしれない。だが、それでは喜びも人生の充実感も、得ることはできないだろう。
だから、私は覚悟を決めた。
そして、決断したのだ。天狼院書店のライティング・ゼミに参加することを。
これは、私にとって、とても勇気のいることだった。
なにしろ容姿抜きの勝負なのだから。
まさに、私の本質をぶつけて編み出した文章が評価されるのだ。
もう「所詮、美人は得なのよ」と居直ることはできない。
自分の持てる力を絞りに絞り、七転八倒して文章を紡いだとしても、手厳しい評価を受けることもあるだろう。
でも、それは、乗り越えることのできない壁ではない。努力を重ねれば突破できるかもしれない関門なのだ。
ああ、やっぱり自分には才能がないんだ。文章を書くセンスなんて持ち合わせていないんだ、と初めから諦めてしまえば、もうこの障壁に打ち勝とうとはしなくなる。挑戦する前にやめてしまうのだから、傷つくことはないだろう。
でも、このゼミの終わったとき、たとえ目指しているような成果が得られなくて結局ヘタクソな文章を書くにとどまったとしても、乗り越えようと努力したことに意味がある。
「美人だね」と言われたら、さぞかし嬉しいに違いない。言われたことがないから分からないけれど、きっと有頂天になると思う。
でも、私は、「美人だね」と言われるよりも「あなたの文章に心を動かされました」と言われる方が、ずっと、ずっと嬉しい。自分自身を肯定されたような充実感と、生きる喜びと希望とで、心が震えることだろう。
それに、これからの三ヶ月間は気持ちに張りのある日々を送ることになるのだから、顔にも張りが出てくるかもしれない。だって、小池百合子だって、都知事に就任してからみるみるきれいになっていったもの。
もしかしたら、三か月後の私は、――もちろん、顔の造作は変えることはできないけれど――これまでの人生でいちばんきれいな私になっているのではないだろうか。それも努力次第だ。
そうなるために、私はこれから毎日毎日、文章を紡いでいこうと思う。
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