ご主人様と慕ってくれる、彼らのお話。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:まつしたひろみ(ライティング・ゼミ)
「なぁ、久しぶりやな」
「どちらさまでしたっけ?」
「何? 忘れたんか? 俺やて、俺。何年ぶりやろなー。久しぶりに呼ばれたんやって」
「あ、お久しぶりです! って、なんで関西弁なんですか?」
「細かいことは気にせんでええねん」
彼とは久しぶりに会いました。
私がご主人様と共にするようになってからは、彼は留守番が多かったように思います。そのまま姿を見ることがなかったので、別のご主人様を見つけて別のお家に行かれたのかと思っておりました。
今日は珍しく、同行するらしいです。
「ご主人様がな、呼んでくれてん。やっぱり、俺がいいんやて」
「そうなんですか。よかったですね!」
いや、ご主人様はそんなことは仰ってなかった気がします。
一週間くらい前に「別の子がいいな」と呟いてはいました。私はそのご意見には、賛成の立場でいます。
「いやー、本当に久しぶりやな。お前が来るまではバリバリ働いていたんやけどな」
失礼な! いくら後輩とはいえ、お前呼ばわりとは!
「そうですね。ご活躍はお聞きしております。ご主人様も……」
「そうやろ! やっぱりなー、俺がおらんとあかんねん」
あぁ、ご主人様がこんなお言葉をお聞きになったら……。
私は最近、ちょっと多くのものを持ち過ぎております。ちょっと疲れてしまうたびに、ご主人様にお手間をかけさせております。ご迷惑をかけているかと心配しております。交代させられるのも時間の問題かとも心配しております。若い者の方が体力も知力も上で、私もやはりいいと思いますからね。
けれども、経験においては負けません。そこをご主人様も買ってくれています。だから手放せないんだ、とお友達にお話しされているのも近くでお聞きしています。
「そういえば……」
「なんや?」
「今日、私は何度かご主人様に呼ばれていますが……呼ばれました?」
「あ、え、まあ。い、いや、ちょっとだけ……」
「ちょっとだけ?」
「側に呼ばれて……」
ふふふ。知っておりますよ。
彼はご主人のお近くに来たものの、結局私にお役目を命じられているのですから。
彼には私の代わりは務まらないと思っています。私の役割の一部分だけしか、できないんですから。悔しいながら、その一部分の役割の専門的な部分は彼には敵いません。けれども、私は彼より機敏に動くことができます。コンパクトな体をしているので、ご主人様のお供をしていても、彼よりはお邪魔にはならないです。
「なあ」
やっぱりご主人様は、私の方が好きなんですよ。
「なあて!」
「なんですか!! あ、すみません」
「あんな、ちょっと聞きたいことあるんやけど」
「なんでしょう?」
「実はな、ご主人様がな、俺じゃなくて他のやつがいいて……いや、言うてへんやろうけど、もしな、もし言うてたらな、教えてほしいねん」
「言うてましたよ」
しまった! 関西弁が移ってしまった。
「あー、やっぱりかー。今日で最後やろうか、一緒に来れるの……」
なんか、彼、浮き沈み激しいですね。ずっとテンション高いままかと思っていましたけど、ごつい感じですが、意外に繊細なんでしょうか?
「俺な、ご主人様と初めて会うた時、ご主人様がめっちゃ嬉しそうな顔をしてくれてな、ここに来てよかったなーと心底思うたんよ。普段の生活は、違うやつ、お前の前にいたやつな、そいつと一緒やってんけど、遠出する時にはどこに行くにも一緒に連れてってくれてな。部屋も用意してくれてん。そん時は、手間かけてくれてな……」
なんか、遠い目してますね。昔話が始まってしまいました。
私も部屋を用意してもらいましたし、いい部屋になっています。
ま、しょうがないですね。なんか可哀想になってきたので、聞いてあげましょうか。
「ただ、俺を使ってくれるんやけど、どうも使いっぱなしになんねん。お前も知ってるやろうけど、俺、『あれ』しかできんやろ。あれの後は違うやつに任せるんやけど、ご主人様は任せる前にそのまま放置してしまうんや」
「存じております。私は、それを補うために、参りましたから」
そうなんです。ご主人様はちょっと整理整頓というんですか、それが苦手で。ハード的な部分もソフト的な部分も。私は浅く広くいろいろできるもので、お前がいれば十分だと、重宝がられているんです。
「ただ……」
「ただ?」
「しばらくは大丈夫だと思いますよ」
「え?」
「確かにご主人様は、一週間前くらいにお友達とご一緒された時に、そのお友達たちにお付きになられている方々のことを羨ましがっておりました。けれども」
「けれども?」
「あなたが呼ばれたということは、まだ大丈夫だと思います」
「なんでや?」
「それは……」
はい。確かに。羨ましかったです。
だって、すごいんです。
もう、一週間が経とうとしているのに、あの感動を忘れられないんです。
でも、私に仕えてくれている、いや、一緒にいてくれているこの子たちは、私が惚れて一緒にいて欲しいとお願いしたんです。
いつも一緒にいてくれている、携帯のiPhone。
もう変えてから3年以上経つので、そろそろかな、とも思います。容量がいっぱいになってしまったり、時々、知らない間に電源が落ちたりしてしまいます。それでも、新しい携帯にするのは、この子が壊れてからかなと思います。
忠実な、仲間です。
言い争っていたもうひとり。それはデジカメです。
コンパクトデジカメよりはちょっといいのものなんです。なんだか欲しくてたまらなくなって、この子じゃなきゃダメ! くらいに思って。機能がいっぱいついてて、こだわりの写真が撮れそうで。
でも、写真整理がうまくできなくて。結局はiPhoneのカメラ機能がいいので、そちらばかりになって。持ち運びも便利ですから。
正直なところ、使いこなせていないんです。
でも、これを使いこなせたら、一眼レフの写真にちょっとは近付けるか、そんな風に思うんです。
この子を買った時、パソコンもちょっと古かったので、なかなか写真整理も面倒な感じでしたが、デジカメ購入当時からパソコンはグレードアップしています。
なんか、この子のいいところを引き出せないと。それ以上のものが使えないかな、なんて思うんです。これからは一緒に旅にも連れて行きます。
この子で物足りなくなったら、グレードアップを考えます。
本当は、カメラ、欲しくてたまらないんですけど。
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