私は、ある水平思考問題を解くために行動を起こした。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:ほそきはら あきとし(ライティングゼミ 日曜コース)
みなさんは“水平思考”という言葉をご存じだろうか。
Wikipediaにはこう記載されている。
「問題解決のために既成の理論や概念にとらわれずアイデアを生み出す方法である」
要は、問題を多様な視点から見ることで、直感的な発想を生み出す手法である。
これを応用したゲームが“水平思考問題”
出題者は、あるシチュエーションの一部を切り取った描写を説明し、その他の参加者はYES/NOで
答えられる質問を出題者に投げかけ、その答えの積み重ねでストーリーを推測し、真実を解明していくというゲームだ。
そして私は、ある水平思考問題を解くと決意した。
“なぜみんな高額な授業料を払ってまで、ライティングゼミを受講するのか“
既に講義を終えた方からすれば「それはね、天浪院書店だから」と答えるかもしれないが、
少しだけ私の行動の記録をご覧頂きたい。
そもそも、この疑問を抱かせたのは、ある友人の一言だった。
「天浪院書店が京都にできるんだって、知ってた?」
なんやそれ? たいそうな名前をつけた書店だ。
“天浪”でググったら成田空港近くの地名が出てきた。
千葉県成田市にゆかりのある人物なのだろうか?
正しく“天浪院書店”と検索したところ、とあるホームページにたどり着いた。
“天浪院について”というタブをクリックする。 そこにはこう書いてあった。
天浪院書店が提供するのは、“READING LIFE”という新しいライフスタイル。
「本」だけではなく「体験」までを提供する次世代型書店です。
……興味のそそられる文面だった。
現在、モノ売りはアマゾンを筆頭とするネットの攻勢を受けていて、特に書店は壊滅的だと言うことはTVや各種メディアで多く取り上げられている。
同時に、“モノ売りからコト売りへのシフト”と言うことも叫ばれていて、
品物を所有する事に価値を見出していた時代から、商品やサービスを購入したことで得られる体験に価値を
見出す時代になったという事も知っていたからだ。
ホームページを一通りみて、「ライティングゼミ」が中核のコンテンツなのだと思ったが、4ヶ月受講して、4万円もするのか……
かくして、私は“なぜみんな高額な授業料を払ってまで、ライティングゼミを受講するのか“
という水平思考問題を解くべく行動を起こした。
そもそも、天浪院書店というものをよく理解できていない私は、地元京都にできた京都天浪院に訪れてみることにした。 町屋を改装したという店構えは、京都の町並みに溶け込んでいる。 そして、真新しい“京都天浪院”という看板の横にある玄関に手を掛ける。
玄関を開けた瞬間、目に飛び込んできたのは “書店”という名前からは到底想像できない奥の“こたつ”、
まして本屋なのに本棚のスペースは店の1/3程度ではないか。
「どういうこと?」
もしかして、観光地だからカフェスペースを多くとっただけなのか?
しかし、その直後目に飛び込んできたのは“7代目 秘本 只今売り切れ中”という文字。
「ああ、そういえばホームページにも書かれていたな」
内容は秘密、口外無用という本である。 天浪院書店のキーコンテンツの一つだ。
「6代目はまだ在庫があるようだから、試しに買っていこう」
これが、私と天浪院書店とのファーストコンタクト。
秘本に関する丁寧な説明と、この秘本というシステムがどれだけ素敵なのかを語る、やわらかい雰囲気をまとった店員の印象が今も残っている。
そして、私は翌日には6代目秘本を読み終えたのだが、
同時に天浪院書店の秘本という仕組みの本質を理解した。
私は普段、通勤の電車の中でしか読書しない。
他に充てる時間を惜しんでまで読書に没頭することはない。
しかし、今回は職場の休憩時間どころか、帰宅して寝る間を惜しんでまで読んでいた。
タイトルが伏せられているので購入するまで内容が分からないけど、ここまでお膳立てして店主が薦めるという期待感と、読み進めるごとに発見する伏線を、早く、もっと早く回収したいという気持ちが相まっていたからではないか。
これは面白いコンテンツだ。 しかし、私の水平思考問題の解決に至るヒントに結びつくとは思えなかった……
数週間後、私は月曜から早朝の仕事があるために東京で前泊する事になった。 品川駅で新幹線を降り、五反田駅前の宿にチェックインした後、備え付けのテレビをつけた瞬間、ふと天浪院書店が東京にもあったことを思い出した。
「まだ読んでいない秘本、買いに行こう」
五反田駅から山手線で30分ぐらいだろうか、池袋の東口を降りて南下する。
ジュンク堂書店を左折して、東通という商店街を進めばたどりつくはずなのだが……
一向に書店らしいものが見当たらない。 でも、あの奇抜な“めがね屋”より奥のはずだ。
狭くなる道を越えて進むとようやく看板が見えてきた。この雑居ビルの2階にあるのか。
入った瞬間、店の雰囲気が特殊なことを理解した。
カウンターに立つイケメンの好青年から「只今講義中ですがカフェスペースは利用可能です」という趣旨の説明を受け、一番奥のカウンターに腰を据える。
後ろからは、今日の講師であろう強面の人物が、店の奥にある“こたつ”から声を張り上げて講義していた。
私は耳だけで後ろの講義を聴きながら、購入した秘本を読むことにした。
「講義の雰囲気がつかめたら十分、100ページ読んだら帰ろう」
そう心に決めた瞬間「ABCユニットの応用ですよ」という講師の声が聞こえてきた。
「もしかしたら、これがライティングゼミなのかも」
これは、私の水平思考問題を解く絶好のチャンスじゃないか!
私は、講義が終わるまで後ろの話しを聴こうと決めたのだが、その意志は思わぬかたちで打ち砕かれる事になる。
そう、目の前の秘本が面白いのだ。
老夫婦に関するエピソードに感情移入してしまい、不覚にも目を潤ませてしまった。
奇しくも、後ろの講義では“失恋話”で盛り上がっているというのに……
かくして、私の好奇心は後ろの講義よりも目の前の本に向けられ、講義が終わる前に読み終えてしまった。
仕方がないので、休憩時間となった隙に店を出た。
結局、講義内容についてよく分からなかったが、
講義の雰囲気、特に受講する方々の発表に対する温かいコメントは、相手を思う気持ちが感じられた。
そして、声しか聞こえなかったが、福岡天浪院側を仕切る女性が妙に印象的だった……
後に、この講義はライティングゼミの補講だったと知るのだが、
結局、私の水平思考問題を解くまでには至らなかった。
「さて、どうするか」
次に私は、実際にイベントに参加する事を決意した。 私の参加できそうな京都天浪院のイベントを探し、その中で選択したのが“京都フォト散歩”だった。
それは、店を飛び出し、お題に沿った写真を撮るというイベント。
京都天浪院で初開催だという京都フォト散歩は、毎年3月上旬に“東山花灯路”というライトアップイベントを楽しみつつ撮影しようというものだった。
数年前までデジタル一眼レフでのスナップ撮影を趣味にしていたので、私には参加しやすそうに思えたのだけど、皆さんどういうメンバーになるのかわからないので、iPhoneで望むことにした。
当日、集まったのは私を含めて10名だったと思う。
お店を出発するまでに、自己紹介タイムが始まる。
参加者の半分は女性で、大学生から社会人まで来られているが、それぞれが持参した撮影機器も、本格的な一眼レフから、ミラーレス、コンデジ、スマートフォンと様々、自分がiPhoneを選択して良かったと安心した。
京都天浪院を出発して、東山花灯路の開催地まで移動するのだが、
雰囲気のよい小道を発見し、皆そこを撮影しようとシャッターを切る。
「誰かモデルやりません?」
誰が言ったのか不明だけど、誰も名乗り出ない……
「やりましょう」
孫正義ではない。
誰も手を挙げないので、私が立候補した。
促されるまま道の真ん中にたたずむ、やがて後ろから声がする、
「もうちょっと左で、あー そこそこ」「少し上向いて下さい」「人生に疲れた感じで」
後ろから違う声で色々な指示が飛ぶ、私はこれに応える。
写真撮影を趣味にしていた時代は、スナップやポートレート、結婚式の撮影を頼まれる事もあったが、撮影する側しか体験したことがなかった。 私にとって家族以外から撮影される身となる初めての経験だったが、心のどこかで楽しんでいる自分がいた。
その後、東山花灯路を一巡し、京都天浪院内の大型4Kテレビでそれぞれの今日一番の写真をシェアすることになり、参加者の中で私が被写体となった写真を選んでくれた方がいたのだが、
「人生に疲れた感じで」
テレビに映し出された写真は、現地で指示が飛んでいた通りのイメージになっていた。
他にも、京都の町並みに埋もれたハローキティをコミカルに描写した写真。
画面半分を切り取ってシンメトリーにして、ハリーポッターのイメージに昇華させた写真。
スローシャッターを駆使して非日常を表現した写真。
……これまで撮影した私のアーカイブにない写真、多種多様な個性が次々と映し出されている。
「写真って面白いじゃないか」
帰宅して、一目散に防湿庫にしまっていた一眼レフを久々に取り出し、ファインダーをのぞいてみた。
「次はこの5Dで撮影に臨もう、きっと良い写真が撮れるはずだ」
初めて一眼レフで撮影したときの感覚に似た気持ちがよみがえってきた。
後に、京都フォト散歩の“建仁寺”と”夜桜撮影“の会に参加したのだが、純粋に撮影を楽しむ事ができたと思う。 でも、何より嬉しかったのはフォト部の非公開グループに写真をアップしたときに、会ったこともない方々から“いいね”をたくさん頂いたこと。
なるほど、これが天浪院の魅力なのかも?
しかし、私の水平思考問題を解くに至らない状況のままだ。
そして、京都フォト散歩の翌日に、サカナクションのライブ最終日に参加するため友人たちと福岡に行く予定だったのだが、その途中で福岡天浪院にも寄ることにした。
福岡天浪院では、絶品のパニーニとコーヒーを注文し、一通り店内を見て回った。
帰り際、挨拶代わりに2代目秘本を購入するタイミングで、レジの人にゼミの話しを投げかけてみたのだが、4月から始まる日曜コースを仕切る人物は休みだった。
「良かったらこの後、雑誌“READING LIFE”の編集会議があるんですけど、参加されませんか?」
ある店員に促されたのだけど、既に友人をホテルで待たせていることもあり、そこで帰ることにした。
そして、後ろから「ありがとうございました、これからもよろしくお願いします」と声を掛けられた時に思い出した。 ああ、東京天浪院へ行ったときにスピーカーから聞こえていた女性の声だ。
ショートカットの似合う華奢で可愛らしい女性なのだが、目の奥に強い意志のようなものを感じる不思議な女性だった。 後で知るのだが、様々な記事で数々のバスを連発し、NHKのU-29でも紹介された女性なのだけど、妙に納得するオーラを感じたように思う。
京都天浪院で、秘本の素晴らしさを語ってくれたやわらかい雰囲気の女性、東京天浪院でのイケメンの好青年、そして、福岡天浪院で私を見送ってくれた強い意志を秘めた女性。
天浪院には、店主以外にも魅力的なスタッフがたくさんいるのだなと感じた瞬間、私は気付いた。
ライティングゼミを受講しようと決断する人の気持ち。
それは、大航海時代に新大陸を求めて出航を決断した船乗りたちと同じなのかも知れない。
当時、船舶技術もそれほど確立されていなかったはずだから、新しい大陸を発見するなんて、一見すると無謀な挑戦に思える。しかし、彼らは羅針盤を頼りに様々な港に立ち寄り、自らの地図を書き足すようにそれぞれの体験を通じて、新大陸というフロンティアが必ずあるという信念を強くしていったに違いない。
天浪院書店には私が知らないことを発見すること、忘れていたことを思い出すコンテンツがたくさんあり、それを熱いパッションで伝えるスタッフがいる。
だから、受講者は高額な授業料を払ってまで天浪院書店が掲げるコンセプト“READING LIFE”を信じ、ライティングゼミで人生が本当に変わるかも知れないと思えるのではないか。
そして、私はライティングゼミを受講する事に決めた。
私が水平思考問題を設定したのは、私が受講するための意志を固めるためだったからだ。
これから、約4ヶ月にわたりライティングゼミに参加して、店主の三浦さんを通じ、新しいライティング技術を取得できること、そして、その先に人生のフロンティアが待っていることに期待したい。
只今、初受講を終えた日曜日の26時、既に5000文字を書いている。
ライティングゼミに対する私のパッションに火がついたようだ。
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