お店で働く飽きっぽいお客さま
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:塩 こーじ(ライティング・ゼミ平日コース)
いままでざっと50か所ぐらいの職場を転々とした。
1回かぎりの日雇いみたいなバイトも含めれば100近いかもしれない。
ひとつの仕事を3,4か月も続けると、もう飽きてしまう。
若いころは1年のうち、春夏秋冬で働く場所がぜんぶちがうこともあった。まさに季節労働者だ。
自分から我慢できなくなって「やめさせてください」と切り出すこともあれば「もう来なくていいよ」といわれ、やめてしまうこともあった。
最近はさすがに辛抱がきくようになって、自分からやめることはなくなった。「もう来なくていい」というのはいまだに言われたりするけど。
転職ばかりしていたら、そのたびに新しい仕事を覚えなければならず、さぞ大変そうに思われるだろう。
ところが意外とラクなんだなー、これが。
はじめのうちは簡単な仕事ばかりだ。
先輩の言うとおり、素直にハイ、ハイと従っていればいい。自分の頭で考える必要もない。究極のイエスマンだ。
新人だから当然失敗も多い。でも慣れないうちだから大目に見てもらえる。
そういうわけで、新しい職に就いたばかりのころは何もかも新鮮、やる気もまんまん。ずっとこの状態が続いてくれればいいのにと思う。
だけど仕事に慣れてくるとしだいに面白味が薄れてくる。
職場のアラも目につくようになる。イヤな先輩がいるとか時給が安いとか。
半年もすると、何かほかにいい仕事はないかなーと漠然と考えるようになる。
職場も先輩たちも、その頃になるとだんだん僕のそういう性格が分かってくるのか、しだいに離れていく。
重要な仕事はまかせない、プライベートな会話はあまりしない、等々。
そのうちに、僕よりあとから入ってきた人間が、僕よりも先輩たちと打ち解けて、重要な仕事をまかされたりするようになっていく。
ま、こっちはそのほうが楽できるので有難かったりするのだけど。
そうやってだんだん職場で、いてもいなくてもいい存在になっていく。
仕事にも関心を失ってるので注意がおろそかになり、ささいなミスを重ねるようになる。
そのうち、なにか致命的な失敗をやらかして、それを理由に「やめてくれ!」みたいなことになる。
こっちももう仕事にはすっかり飽きてるので、半分「助かった」と思いながら、さっさとやめて「今度は何をやろうかなー」などと次の職を探し始める。それが毎度のパターン。
終身雇用が当たり前の時代だったら、僕のような人間はとても世間をわたっていけなかったにちがいない。
高校時代、近所のスーパーでアルバイトをはじめたとき、母がいった。
「アルバイトなんて、お店にしてみればお客さまなんだからね」
当時はその意味がピンとこなかった。「え、なんで? 働いてるんだからお客様じゃないだろ……」と。
でも今は、なんとなくその意味が分かる気がする。
バイトには重要な仕事はタッチさせない。正社員ほど厳しい使い方はせず、お店に対して好印象を植え付ける。
新しく職場に入ってきた人間に対して、きっと先輩たちはお客さま扱いで接するのだろう。それに甘えて努力を怠っていると、相手の我慢も限界にきて、ある日とつぜんクビを言い渡されるというわけだ。
優しい先輩ほど、ウラで自分のことをどう思ってるか分かったもんじゃないなーというのが、長年転職を繰り返して学んだことのひとつだった。
仕事もそうだが、趣味にしても非常に飽きっぽい。
これまでもさまざまなことに手を出しては途中で投げ出してきた。
劇団の養成所に入ったり、スポーツジムでヨガやダンスのレッスンを受けてみたり、空手道場の門をたたいたりバンドでドラムをたたいたり。
どれも長続きしなかった。始めたばかりの頃は新しいことを次々に覚えるので、とても楽しい。
でも、ある程度のところまで行くとなかなかそれ以上、上達しなくなってしまう。自分のモチベーションも失われていく。
ほんとうはそこからさらに精進を重ねないことには一段高いステップに上がれないのだが。
こういう趣味というものも、どこまでやれば道を究めたといえるのか、なかなか自分では判断がつかないところもある。
いつまでレッスンに通い続ければいいのか、終わりが見えてこないので情熱も失われてしまう。
――同じことをしばらくやり続けると飽きてしまう、そんな僕にとり、この天狼院書店のライティング・ゼミは理想的なシステムといえる。
そろそろ飽きてきたなーというころに、全8回の講義が修了する。
もちろんそのあと、引き続きゼミを受け続けるのもありだ。
とにかく受講料さえ払い続けていれば、ずっと「お客さま」の立場でいることができる。
なんたってお客さまは神さまだ。お金を払っているんだから。
僕のようなダメダメな人間でも歓迎してくれる。
だけどこの天狼院ゼミ、受講生に対して必ずしもお客さま対応で接してくれるわけではない。
投稿を書いても書いてもWEB天狼院に掲載されない。書いても書いても落とされる。
この厳しさは、うわべだけの優しさよりはずっと信頼がおけるのではないだろうか。
辛口の講評に、自分にライターの素質がないことを思い知らされる。次はもっといいものを書こうというモチベーションも維持される。
今回の原稿がまたWEB掲載を見送られれば、僕は天狼院に対する信頼をいっそう深めるにちがいない。
そしてこのライティング・ゼミも折り返し地点をまわったが、今後も引き続き受講しようか、それともまた別のライター講座の門をたたこうか、心を決める材料になるだろう。
お客さまの側も、相手を冷静に観察しているのだ。
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