僕の人生の歩き方。
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記事:宮代勇樹(ライティングゼミ日曜コース)
僕は信号待ちがあまり好きじゃない。信号の青いランプが点滅しているのを見ると、駆け出さずにはいられないタイプだ。
ちょっと走れば二、三分の無駄な待ち時間を過ごさなくてもよくなるのだから、走らない道理はなかった。
だけど時々、走ったことを後悔することがある。
あなたも一度は立ち止まった経験があるかもしれない、魔のスペースで。
それは、そう。大きな横断歩道の真ん中にあるあの中州部分だ。
「みっともない、渡れるか渡れないか判断してから動けばいいのに」
おっしゃるとおりである。
あのスペースが見た目より狭く感じるのは、待ち時間がいつもより長く感じるのは、たかが二、三分の我慢もできないのかと内心自分でも思っているからに違いない。きっとそうだ。
あそこに立つとだれもが自分を見て呆れて笑っているようにさえ感じてしまう、というのは言い過ぎかもしれないが、とにかくすこぶる居心地が悪い。
ところで最近気づいたことがある。
中州にいるのとおなじような居心地の悪さを、日々の生活に感じている。それは日に日に大きく強くなっているような気さえする。
そのことに気づいたのは、今年の春に入ってすぐの頃だった。
「どうしてここにいるんだろう」
周りの同期たちはなかなかどうして、社会人としてサマになっているようだった。スーツを着こなし、自分の仕事を終わらせるためには終電で帰ることも厭わず、言葉遣いはしゃんとしている。
くらべて自分はどうだろうか。おなじ会社で働く同じ歳の人間として、果たして胸を張っていられるだろうか。
気が利かず、小さなミスを重ね、理不尽に起こる残業をするたびにしおれていく僕とは、違う生き物のように感じる。
一年間社会人をやってみて、大人でいることがどんなに難しいかと痛感した。
ただ素直なだけではいけない。悪くなくても謝らなくちゃいけないかもしれない。電車で団子にされても、夜寝付けなくても、ちゃんと定時に会社にたどり着かなきゃいけない。
嫌いな人ともうまくやり、嫌われないように注意を払い、突然違う仕事を振られても抗議するよりまず結果を出さなきゃいけない。
まわりの同期や先輩がそれを
「仕方ないこと」
と表現しながらも、それをこなしている姿はどこか誇らしげに見える。
その誇りを支えるのは、自分のやっている仕事が好きであるという気持ちなんじゃないだろうか。
僕は、子供の頃から主体的に生きることをしてこなかった。
「別にやりたいこともないから」と夢を見ることを早々に諦め、入れる高校に、入れる大学に。本当は自分が何をしたいのかなんて真剣に考えることもせず、場当たり的な目標に合わせて、せめていちばんエネルギーを使わない方法を考えて生きてきた。
そしていよいよ就職というタイミングになっても、自分の生き方を考えることがないままでたまたま内定をくれた企業に勤めることに決めてしまった。だから自分がこの会社にいる理由自体、よくわからないままでいるのだ。
そんな僕が、自分が大人になる重みに耐えられるはずはなかった。
人間、どこかで大人になることを受け入れなくてはこの社会は生きていけないと思う。
だから僕も例に漏れず、なんとか大人になっていかなくてはならない。
やっていることを頑張って好きになるのか、好きにはなれないけど我慢する方法を考えるのか、はたまた今から好きなことを見つけるのかはわからないけれど。
結局、僕はいままで点滅した信号に焦って突っ込んでいただけだったのだと思う。
道幅の狭い横断歩道を選んでいたから、ここまでの道のりでは渡れるかどうかなんて考えなくてよかったし、方向自体、ただ道なりに歩けばいいと思い込んでいた。
そうしてなんとなくたどり着いた場所で同期たちと歩き出して気づいたのは、彼らは少なくとも僕よりも行き先がわかってこの大きい横断歩道を渡っているらしいということ。
迷いなく余裕を持って歩いているから中途半端なところで止まらないし、向こう側に渡ったあとどうやって歩いていったらいいのかもわかっている風だ。
このままついて行きたいけど、僕はいま一人で中州に取り残されてしまって、立派な同期たちの背中を眺めることになってしまった。
このまままた何も考えずに渡りきってしまうのか、しばらくここに止まってこの先の道のりをどう歩くか考えるのか、はたまた引き返して別の道を探すのか。
せっかく止まってしまったから、この長く感じる待ち時間の間にちょっと考えるのもいいのかもしれない。
人生を歩き始めてからこのかた道なりに随分歩いてきてしまったけれど、これからの道のりはちゃんと考えて歩こう。
僕は信号待ちがあまり好きじゃない。
だけどこの道のりはどうやら思ったより長いみたいだから。ほんの少し待つくらい、気にしないことにしようと思う。
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