東京のシンボルは、今やその粋を超える存在かも知れない。
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記事:ほそきはら あきとし(ライティングゼミ 日曜コース)
東京のシンボルと言えば、何を想像するだろうか。
皇居、東京駅、霞ヶ関……ひとによっては東京スカイツリーと言うかも知れない。
でも、私は敢えて言いたい。
東京のシンボルは東京タワーであり、日本のシンボルだと思っている。
私にそのことを気付かせてくれたのは、
先日、浜松町から麻布十番まで歩いていたときのことだ。
その日、私はセミナーを終えたあと、
麻布十番で友人と食事する予定にしていたのだけど、
セミナーが終了してから待ち合わせまで一時間以上あったので、
芝公園から環状3号線を経由して歩いて行くことにした。
しばらくして、道路のむこうに行こうと信号待ちしたときのこと。
夕日の方向を見つめると、そこに東京タワーがそびえ立っていた。
「カッコいい」
彼の姿は雄大で、夕日すら赤いマントのようだ。
彼を取り囲むすべてが、彼の脇役でしか無い。
私は、無意識のうちにiPhoneを取り出し写真を撮っていた。
それだけではない。
私の周りにいたほとんどの人が私と同じように彼を撮影していたのだ。
男性も女性も、日本人も外国人も、そのすべての人が彼を愛でる気持ちで
その勇姿を記憶しておきたいと感じたに違いない。
この様子を見て、私は彼こそ日本のシンボルであると確信したのだ。
「それはなぜか」
東京タワーが辿ってきた歴史と、
日本の置かれている歴史が見事にリンクするからではないだろうか。
東京タワーは1958年12月23日に竣工したのだが、
その年にデビューしたモノは、2017年の現在でも広く知られている存在が多い。
例えば、
野球界のレジェンド長嶋茂雄氏がデビューした年。
そして、バイク開のレジェンド、スーパーカブも発売。
インスタントラーメンのレジェンド、チキンラーメンも発売された。
さらに言えば、今も私の手元にある鉛筆界のレジェンド、三菱鉛筆のユニも発売されている。
東京タワーもレジェンドだといいたい。
パリのエッフェル塔を意識し、それを超える塔を作り、
そこに展望台を設けて集客して稼ぐという構想まであったことで、
身近にあるデートスポットになって、多くの小説やドラマにも登場することになり、
多くの人を魅了してきた。
まさに1958年は「その後の日本を支えるモノたちが生まれた年」と言っていいのではないだろうか。
しかし、東京タワーは順調に日本のシンボルとしてありつづけた訳では無い。
この世に生を受けて以降、すぐに日本で一番高い建造物では無くなっている。
対馬や南鳥島などに設置されていた電波塔の方が遙かに高かったので、
4位ぐらいまで落ち込んでいた時期もあるのだ。
でも、それで終わらないのが東京タワーのすごいところで、
当初の構想通り、多くの観光客が訪れその存在感を高めていくのに比例し、
電波塔としての役割を強めていく。
その結果、周りの電波塔はその役目を終え、解体されていくという中で、
東京タワーは生き残ってきた。
日本も、戦後復興のどん底から高度経済成長期に入り、
家電業界を始めとする日本企業の台頭で世界に対して日本は影響力を高めていくのだが、
その様子は見事にリンクすると言っていいのではないだろうか。
しかし、栄光はいつまでも続かないと言うことは歴史が証明している。
東京タワーであっても例外ではない。
東京には首都であるからこそ霞ヶ関ビルディングを皮切りに、高層ビル群が乱立してきたため、
電波塔としての能力に限界がでてきたのだ。
そして、代替タワーの構想が持ち上がり、
2010年3月29日には建設中の東京スカイツリーが高さ338mに到達したため、
日本で2番目に高い建築物になる。
そして、東京スカイツリーの完成により放送アンテナとしての役割を終えた。
比較的最近のことだから、みなさんも記憶にあると思う。
当時は、役割を終えた東京タワーは、解体されるのではないかという、
まことしやかな噂話まででてきた。
日本全体を見ても、バブルが崩壊した頃から、米国・ヨーロッパ企業が台頭し、
世界の表舞台からすっかり陰を潜めてきた。
その後も、IT系ではアメリカに、製造業では中国・韓国勢の猛攻を受け続けている。
資源も食物も輸入に頼ったままだ。
しかし、どうだろう。
東京タワーは今も、私の目の前でその雄大な姿を見せつけている。
今では、東京スカイツリーの代替設備としての役割を与えられているのだが、
今もなお年間観光客が年間250万人を超えているそうだ。
これは日本の観光地ランキングでも上位にあるらしい。
そう、東京タワーはその主役を他人に譲っても高い人気を持ち続けているのだ。
日本でも、日本人が得意な基礎研究・要素研究や、改善を続けていく中で、
その評判が世界に届き、ついに世界の通用する企業が登場していくことになる。
もちろん、すべての企業が表舞台に立っているわけではない。
大多数は素材系・部材・工具など、消費者である私たちから見えないものばかりだ。
例えば、お手元のスマートフォンもアップルやファーウェイなど
日本の中でも海外メーカーのモノが主流になってきている。
しかし、中に入っている部品を調べると、日本企業のシェアはまだまだ高いのだ。
そう、世界の製造業を大部分で下支えしているのは日本企業といっても
それほど大げさでは無いはずだ。
そうやって、想いを巡らせながら麻布十番までの道のりを歩いているとき。
私はもう一つの存在を思い出した。
「尊敬する会社の上司」だ。
高校を卒業してすぐに入社し、右も左も分からぬままがむしゃらに働き、
数々の功績を積み重ねてきた。
しかし、キャリアでは無かったから出世には恵まれず、
同期や後輩に遅れて部長になられたものの、
役員に抜擢されることなくもうすぐ引退を迎えようとしている。
「すべてが東京タワーとリンクする」
もうすぐ定年を迎える上司は1958年生まれ。
そう、東京タワーは私の尊敬する上司だったのだ。
みなさんの周りにいる団塊世代の方々のなかでも、
同じような境遇の方がいるのではないだろうか?
だから、あらためて私は言いたい。
東京タワーこそ日本のシンボルであり、日本を支えてきた人々のシンボルだ。
私にとってあなたの存在は雄大だった。
周りが出”背”しても、主役を他に譲ってもなお
東京の顔としてあり続けるあなたのように、私も輝き続ける存在になりたい。
そして、あなたに感謝したい。
今の私があるのはあなたのおかげです。 ありがとうございました。
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