2年前の就活で使った自己PR文を添削してみた
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記事:かほり(ライティング・ゼミ日曜コース)
「あなたの強みは何ですか」
就職活動を経験したことのある人なら必ずと言っていいほど耳にする問いかけである。
就職活動において、就活生は企業に自分をアピールしなければならない。自分の強みが、企業にどのように貢献できるかを説明する必要がある。学生たちは自己分析を通して、自分の強みを見つけ出し、自己PRを作り上げる。今までの経験から、自分の行動パターンを分析し、共通する長所を見出すのである。
私も2年前、就活生として自分の強みについて考えていた。
試行錯誤の末、作り上げた自己PR文がこれである。
「私は人を思いやる気持ちを持って、行動することができます。
大学2年の時、サークルで地域の子供たちと遊ぶ機会があり、私の班に周囲の輪から孤立している男の子がいました。私も子供の頃、人見知りをしてうまく集団になじめないことがあったので、その子の気持ちを想像できる自分だからこそ、楽しませてあげなければならないと思いました。そこで、安心感を与える様になるべく同じ目線で話しかけました。
すると、徐々に表情がほぐれて、はじめ乗り気ではなかったフォークダンスも周りと楽しそうに踊り始めました。
このように、私は人に対する思いやりを持つことによって、自分の責任を果たすことができます」
たいていの就活生がやるように、自己分析というマニュアルに沿って作り上げたものだったが、私はこの自己PRにどうにも自信が持てなかった。
「私はいかなるときも人を思いやって行動できます」と言わんばかりの書きぶりだが、実際常に人の気持ちを考えられているか? と言われると、そういうわけではない。
ぼーっとしていて他人の気持ちなんて考えず、鈍感だと言われるときもあれば、自分に余裕がなくて他人に気をかけられないときもある。
電車に乗り遅れそうなときなんかは、自分のかばんをボカボカ他人に当てまくって、一心不乱に駆け込んでしまう。
自己PR文に書いたエピソードはいちおう実話だが、いつもこんな上手くいくとは限らない。自分が男の子にしてあげたいと思ったことと、男の子が求めていたものが偶然ぴったり合っただけだ。
なのに、あたかも「常日頃から人の気持ちを考えて行動できる人間です」「これが私に備わった性格です」と主張するかのようで、かなり息苦しかった。いつも人を思いやることのできるようなこんな超人間、本来の自分ではないのだ。
こうして、自己PRに自信が持てないまま、就活を進めていた。なんとか内定は出たものの、この強みには疑問を持ったままであった。
今となっては2年前のこと。就活時代を振り返ってみて、最近ふと気付くことがあった。
そもそも、自分の強みに自信を持っている就活生なんていないのではないか?
たとえば、「私は何事にも粘り強く取り組むことができます」とアピールする就活生でも、今まで本当にどんなことにも粘り強く取り組んできたのか、と言われると、「はい」とは言えないんじゃないか? たとえ小さなことでも、諦めてきたことはあるはずである。
もしくは、「私はリーダーシップをとることができます」と言う就活生は、いつどんな場合でもリーダーシップをとってきたのか? やむをえず他の誰かににリーダーシップを譲ったことはないのか?
みんな「私は〇〇することができます」と言うけれど、いつどんな時も〇〇できるわけではないのだ。つまり、「○○できる自分」は等身大の自分の姿ではないのだ。
「自分は本来そんなに大した人間ではないのに……」そんな不安を心に秘めながら、初対面の面接官に必死でアピールをしている。
じゃあ、なぜ大人たちは揃いもそろって、学生に「強みは何ですか?」と聞くのだろうか。
私は、これは「社会に出て、どんな自分を演じることができますか?」と聞いているのと同じだと思う。
きっと、採用側の大人は、学生が主張する「強み」なんて、背伸びして書いているだけで、本来の学生の姿ではないことは百も承知だ。知りたいのは、「仕事という舞台において、どんな人物なら演じ切る自信がありますか?」ということである。
学生本来の性格どうこうよりも、「仕事で果たす覚悟のある役割は何か?」と聞きたいのだと思う。
どんな「強み」なら、持ったふりをして仕事ができるか?
どんな役割なら、引き受ける自信があるか?
誤解を恐れずに言う。
私はたがだか社会に出て1年、実際働いてみて、大人はみんな「大した人間」ではないと思ったのだ。大人だからって、みんながみんな誰にも負けない「強み」を持っているわけではなかった。どんな時でも「人の気持ちを考えられる人」もいなければ、どんな状況であれ「粘り強く取り組む人」も「リーダーシップをとれる人」もいなかった。
そんな超人間、どこにもいなくて、みんな弱いところもあるし、人間臭かった。
しかし、逃げてはいなかった。社会に出た大人はみんな、もがき苦しんでいた。
仕事という舞台で、自分の役を演じ切るために。本来の自分ではない自分を演じるために。演じやすい役柄を自ら見つけ出して、役作りに励んでいたのだ。
私は、心底安心した。大人たちも私と一緒で、「大した人間」ではなかったのだ。
そんなことなら、私も仕事という舞台で、自分の役を演じ切ってやろう。
「私は社会に出たら、人の気持ちを考えて行動する役柄を演じ切る自信があります。なぜなら……」
これなら、堂々と言えそうである。
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