読書は人生のGoogleマップ
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:山田拓也(ライティング・ゼミ日曜コース)
最近の自分にとってGoogleマップは欠かせない。具体的には手元のスマホに入っているGoogleマップのアプリであるが、画面の一番目立つ場所にいつでもスタンバイをさせている。
日常的にアプリを起動して自分の位置や方向をよく確認している。方向音痴というだけではなく、リアルタイムで表示される様々な情報と一緒に、今自分がどこにいるのかが見えて、単なる地図を眺めているよりも臨場感があって遥かに楽しい、よって、頻繁にスマホのアプリを立ち上げて、地図を眺めることになる。
そうは言っても、しばらくのあいだ全然使わない時もある。目の前の仕事がルーチンとなって、気がつけば「この1週間は家と職場の往復だけだった」という具合に、決まった所にしか行かないとき。もしくは「忙しい」という口実で、出歩かなくなって、自分のいる場所を確認しない時にも。
それでも今時のとても頭の良いアプリなので、スマホで起動していなくても日々の移動の記録を取ってくれており、タイムラインという機能を使うと、毎日どこに行っていたか一目でわかるる。仕事では何の役にも立たないけれど、先月はマクドナルドに4回も行っていたのか、と食生活を反省するきっかけにしたりと使い道はいろいろある。そしてたまに数年前の記録を見ると、完全に忘れていた自分の行動を再発見し、その時の記憶や感情も一緒に甦ってくる。まるでちょっとしたタイムカプセルを、手元に携帯しているような気がしてくる。
その一方、読書は自分にとって、人生で一番歴史が長い趣味だと思う。桃太郎やはらぺこ青虫といった絵本の類も物心ついた時には家にあったし、自分で本を選べるようになった小学生中学年くらいからは、振り仮名が多いけれど、ずっこけ三人組やシャーロックホームズといった、物語も読むようになった。自分の家にある本だけではなく、学級文庫として教室の後ろに並んでいた本、図書室にずらりと並んでいた本、友達から借りた本など、子供のころから色々な形で本に触れる機会があったのは、幸運だったと今にして思う。
そんな読書の内容は、時に強く意識することもあるし、逆に読んだ内容が意識せずして、自分の行動に影響することも多々あるみたいだ。お約束で子供の頃は物語の主人公をすぐ真似てみたり、将来は探偵になりたい、と思ったりした。そういった子供時代にフィクションの登場人物の行動に影響されただけではなく、ノンフィクションを読んで吸収した雑学や知識が大人になってから大いに役に立つこともあったし、それは意識して、もしくは無意識のうちに、さまざまな場面で思い当たる。
そして何度も読み返すことになる愛読書達には、人間関係の立ち位置で迷ったとき、仕事の判断で悩んだ時に読む、お決まりの一冊が、何冊もあったりする。若いころは司馬遼太郎の竜馬がゆくを何度も読み返し、自分が組織に組み込まれる世代になると、塩野七生のローマ人の物語を繰り返し読んだり、リーダーシップで壁にぶつかると岩波文庫のキャプテンクックの航海記をめくったり、フィクション、ノンフィクションを問わない、いわば座右の書が、自分だけではなく誰にでも存在すると思う。
普段意識しないけど、ある本を思い出すとその本の内容だけではなく、その時の様々な情景が、脳内に呼び起こされる。何年も行っていないあのカフェで読んだ。この時はひどい悪天候だった、受験前の時期だったなぁという、記憶そのもの。もしくは就職活動中の焦燥感といった、その時の感情までも鮮明に、普段なら思い出さない感覚も含めて、読書という行為をきっかけとして、呼び覚まされる。
スマホの中の一アプリに過ぎないGoogleマップも、過去の読書の記憶も、どちらも普段は意識していないものだ。しかし、ふとした時に、自分が立っている位置と向いている方向を、今までの記録とともに教えてくれる。そして記録だけではなく、その時の記憶までも呼び起こしてくれる。自分にとってはいわば道しるべ、羅針盤のような存在となっている。
これからどちらの方向を向けば良いのだろう?
そして、どこを目指していけば良いだろうか?
それは今の自分が決めることだ。しかし今までの足跡を示してくれるツールを参考に、これからも進み続けていけば良い。物理的な移動も人生も。
それでも迷ってしまったら?
その時は今までの自分自身の歩みを、さらなる読書を通して見直していけば良いだけだ。
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