21歳・女子大生、就活をやってみようと思う。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:中原優香(ライティング・ゼミ 平日コース)
興味はあるけど、よくわからないから怖いっていうものは結構多い。
「知らないから怖い」というのはわりと当たり前のことで、身近なところでいうと初対面の人だったり恋愛だったり、はたまた自然現象だったりお腹が痛くなる原因だったりもする。
わたしの場合、たとえば宇宙。
小学校の理科の授業で習った程度の知識(そもそも習ったかどうかも自信がない)しかないため、「空気がない」という一点のみに興味と恐怖の対象は縛られる。息ができないなんて、宇宙船の外に出たらそれだけで死んじゃうなんて、こわすぎるじゃないか。
宇宙に広がる不思議や可能性もほんのり知ってはいるものの、「息ができない」という事実のインパクトが強すぎるせいでわくわくできないのだ。21歳にもなってそんなことを言っているのもどうかと思うけど。
そう、わたしは現在21歳。4年制大学の3回生である。
卒業生の就職率ほぼ100%である大学の3回生・秋が何を意味するかというと、他でもない就活の本格化。周りが一斉に動き始める時期なのだ。
しかし、わたしはどうしても自分事と思えなくて、「大変なんやなあ」とは感じながらも興味を持てず、なぁーんにもしないままでいた。それまで授業にもろくに出ず、遊んでばかりいた学生たちがいきなり「せーの!」の掛け声を聞いたかのようにそろって動き出すのは、どうも不自然に思えてならなかったのだ。
具体的な目標もないのに周りと同じことをするのは嫌だ、という意地も多分にあったのだと思う。とはいえ、まったくのんきな話である。
「書くことで食べていければな」なんて漠然と思っていたけれど、どうやらそんな甘い話ではないらしいということにも薄々気が付き始めていた。
何もかも捨て、死にもの狂いでやれるほどの熱意は自分にはない。かといって大学院に進学したいわけでもないし、とりあえずある程度の生活水準を保てるくらいは自力で稼げるようになりたい。あと、大学まで出してくれた親を安心させたい。
となると、おのずと見えてくるのがやはり「就活」の二文字である。
「書くことを仕事にできるなら、どんな苦労をも厭わない!」ってなる日がいつか来るかもしれないけれど、先のことはまだわからない。
当面の目標として掲げるべきは、やっぱり就職することなのだった。
じっさい大部分の人がそうであるように、わたしにはこれといった強みもなく、具体的にやりたいことも特に思い浮かばなかった。
就活することは決意したものの、何から手をつければいいのやらさっぱりわからない。とりあえず大学が主催している就職ガイダンスに参加してみると、「今から動き始めないとマジでやばいですよ」的なことを延々と説かれ、漠然とした不安と恐怖に襲われた。これまで、何一つとして調べてこなかったことのツケが回ってきたのである。
何かしなくちゃいけないのはわかる。でも何を、どうやって。ぼんやりとした焦りを抱えたまま、しかし何もしないままでどんどん日々は過ぎていく。
そんな時、わたしに契機が訪れたのだ。
わたしが所属しているゼミは、毎年10月に他大学と合同で広告コンペを行っている。
秋学期がスタートした9月末からはいよいよ準備も大詰めで、チームで集まっては会議をする日々が続いていた。
コンペの目的は、協賛企業に与えられた課題の解決。つまり、具体的なプロモーションを通じて、商品の販売促進を考えるのだ。
これが、本当に難しい。組み立てた論理と施策の結びつけや、説得力を持たせるための裏付けデータの収集など、やるべきことはいくらでもあった。
みんな睡眠不足の顔で迎えたコンペ当日。制限時間をオーバーするなどのアクシデントもあったものの、無事プレゼンを終えてほっと一息。
結果は、まさかの優勝。本当に心底うれしかった。全力で取り組んできたことが報われるというのはこんなにも嬉しいことなのかと、泣きたいくらいの強さでそう思った。
会議を重ねていく中で、気づいたことが一つある。
それは、頭を使って考えることや、意見を共有して議論し、何かをつくり上げていく過程がわたしは本当に好きなのだということだ。
これまでは、書くことだけに固執していたから気づかなかった。てっきりわたしは一人で黙々と作業するのが好きなのだとばかり思っていたけれど、自分の意見を反映してもらえること、チーム全体に貢献できたことで得るよろこびは、こんなにも計り知れないものだったのだ。
わたし、そんな仕事に就きたいかもしれない。
ふと、そんな思いが浮かんだ。
一生けんめい頭を使って考えて、意見を発信したり誰かの意見を吸収したり、時にぶつかったりしながらも、みんなで一緒に一つのものをつくり上げていく。
考える対象が、たとえ自分の興味とは程遠いものであったとしても(今回がそうだった)、そうしていく中で得られるものはきっと大きい。何よりも、わたしはその過程に魅力とやりがいを感じるのだと、はじめて自覚したのである。
すると、あんなにもネガティブな感情しか抱いてなかった就活が、ちょっと楽しみになったのだ。
我ながら単純だとは思う。でも、同じことをやるのならば、ポジティブな理由は多い方がきっといい。
手探りだらけで進む宇宙は、まだまだわたしの中に広がっている。
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