映画が始まって僅か5秒で気が付いたが既に遅かった
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記事:山田THX将治(ライティング・ゼミ書塾)
毎年の様にやらかしてしていても、一向に反省出来ない男だ。
今年も半ばまで行かない内に「この作品で、今年のベスト・ワンは決まり!」と、ある映画を観て宣言してしまっていた。
ところが、である。
先日『ドリーム』という映画を観て、上映開始わずか5秒で今年も同じ過ちを犯したことに気が付いた。
そもそも『ドリーム』の前評判をあまり聞かなかった。意識的かもしれないが、配給側が“口コミ”を期待して、あまり広告宣伝を積極的に行っていなかったようだ。何しろ、この『ドリーム』が今年のアカデミー作品賞候補だったことすら、映画館に行ってみて初めて気付いたほどだ。
仲間内のSNSでも、意見交換も無かった。何故だったのかも、今となっても不明なままだ。
元々、アメリカの‘ヒーロー物語’が好きだ。
思わず拳を引き着けてしまう‘ガッツ・ポーズ’が出る様な映画が好きだ。
『ドリーム』は、まさにその表現がぴったりの、好みド真ん中の映画だ。
映画が始まって5分程で、早くももう一つの間違いに気付いた。
感動的な‘ヒーロー物語’では、‘ガッツ・ポーズ’と共に、条件反射的に涙が出て来る事がある。当然の事ながら、その最上級クラスになると“号泣”しかねない。
『ドリーム』を観た日は、普通に用事を済ませた後だったので、タオルハンカチしか持参していなかった。そんな折、“号泣”に遭遇してしまったのだから、間に合う訳が無い。
気付いた間違いとは、タオル、それも出来ればスポーツタオル並みの物を用意していなかったことだ。
映画が始まってしまったので、時既に遅しだった。
仕方なく、周りに迷惑を掛けぬ様、そして、周りにみっともない姿を気付かれぬ様、タオルハンカチのみで号泣の嗚咽に対応せねばならなかった。
不覚以外の何物でもなかった。
映画『ドリーム』は、1960年代のNASAでの物語だ。アメリカ合衆国大統領は、若きジョン・F・ケネディ。アメリカが、世界に光り輝いていた時代だ。
その一方で、当時のアメリカ国内ではまだ、人種偏見とジェンダー差別が色濃く残っていた。そんな時代に、懸命に生き抜く3人の女性の物語を描いたのが映画『ドリーム』だ。
その時代は、東西冷戦の真っ只中であり、米ソの宇宙競争も盛んな時代だった。NASAはその最前線ともいうべき、花形の職場だ。そのNASAで職を得るということは、当時では例え男性であっても相当優秀でないと務まらなかったと思われる。しかも、黒人の男性職員も居ない所に、かなり優秀であったとしても、黒人女性職員は、‘稀’というより‘奇跡’に近かった筈だ。
‘ジェンダー’と‘人種’の“二重の壁”が、認めたくは無くとも現実に内在していたからだ。
その‘奇跡’を起こした女性達のそこまでの人生は、映画の前半でコンパクトに描かれている。これなら、観客は退屈しないし理解し易い。
そして、彼女達を取り巻く上司(ケビン・コスナーの好演)が、実に‘粋’で‘格好良く’思わず「そう来なくっちゃ!」と膝を叩いてしまう程だ。
また、映画の冒頭で、小生が出してしまったガッツ・ポーズも、通り掛りの警察官の一言からだった。この警察官の登場ですら、自然で納得し易く‘予定調和’が微塵も感じられなくて心地良い。
『ドリーム』の主人公達は、1960年代NASAの“マーキュリー計画”の裏方として、その偉業に貢献した。“マーキュリー計画”を描いた名作といえば、小生達世代にとって永遠の‘ボーイズ・ムーヴィー’と言っても過言ではない『ライト・スタッフ』が有名だ。『ドリーム』にも、同じ登場人物がいた。
あの感動的な話の裏に、こんな素晴らしいドラマが有ったなんて、小生は二倍以上楽しめたと、余計に笑顔になり、余分にガッツ・ポーズし、余程の号泣をしてしまった訳だ。
やはり、アメリカのヒーロー物語は面白い。『ドリーム』の場合、主人公が女性なので‘ヒロイン物語’に変わっているが、それでも面白い。これが本場の、‘お家芸’とでも胸を張っているかの様だった。
小生が観賞後に感じた爽快感が、その証明と言っておこう。
しかも、ドラマを盛り上げるだけの‘ハッピーエンド’に留まらず、マーキュリー計画後の彼女達の業績を、テロップで手際よく紹介するという‘ハッピーエンドの上乗せ’で余韻を残すところ等、既に名作の予感さえさせている。
是非是非、この素敵な‘ヒロイン物語’『ドリーム』を映画館で見ることをお勧めします。
何故なら、号泣必至だからです。周りを気にせず、感動の涙に溺れるなら、映画館の暗闇が最適だからです。
小生、既に2度観ましたが、もう一度、いや、もう2回観ます!
どなたか一緒に、今年一番の感動を共有しませんか?
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