タイムマシンに乗る。「今」が変わる
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:アルパカ(ライティング・ゼミ日曜コース)
最近、下のおチビちゃんが、母親と同じくらいの背丈になった。
小さい小さいと思っていたら、いつの間にかこんなに育っていた。
それはそうだ。彼女も、もう13歳、中学1年生になったんだから。
そして、上のお姉ちゃんは、中学3年生。
2人とも、可愛くて仕方がない。おそらく、彼女たちが成人しても、
彼女たちそれぞれに家族ができても、ずっと可愛いのだと思う。
長女は、比較的体が大きく、活動的だ。性格も外交的で誰とでも
うまく付き合える。友人達の中では、みんなのまとめ役となっている。
勉強も自主的に赤ペン先生を、せっせとやっている。
ちなみに我が家は、子供達の意思を最大限に尊重しているので、
勉強や宿題をやりなさいとは、一切言わないことにしている。
一方、次女はクラスの中でも、一番か二番目くらいに背が小さく、
性格は大人しい。友人達と遊ぶよりは、家で静かに過ごしている方が
好きなようだ。今のところ勉強には、あまり興味がないらしい。
実は、私が彼女達と始めて出会ったのは、今からたったの5年ほど前。
つまり、妻と出会ったのがその頃なのだ。彼女達にとって、
1年程は母親の友人として、その後3年程は母親のパートナーとして、
そして、最近は父親として、彼女達と過ごしてきた。
つくづく思うことは、子供の成長は早いということ。
私は小学生からの彼女達しか知らない。
だから、普通母親のお腹の中にいる頃から、
自らの子と出会う生みの親達は、もっとそのことを
顕著に感じるにちがいない。
最近思うことは、彼女達ももうすぐしたら、我が家から
巣立っていくのだということ。まだまだ、と思っているうちに
時は過ぎていくのだ。残された時間は、私が思っているほど
多くはない。
だから、日々の何気ないこと。食事をしたり、TVを見たり、
出かけたりを、大切にしていきたい。過ぎてしまってから
「ああ、もっとやっておけばよかった」では遅いのだ。
例えば最近私は、中学校の数学を、しっかりやっておけばよかったと
後悔している。仕事で、数学的な頭の使い方を要求されることが
多くなってきたからだ。まあ、今からやり直して出来ないことはないが、
中学生の頃と比べたら、脳の記憶力も回転も、それに遠く及ばない。
今年度、長女は高校の受験を控えているので、
週末家族と出かけることが、ほぼなくなった。
映画に誘っても、キャンプへ誘っても参加しない。
寂しいけど仕方がない。今は彼女にとってそれが最優先事項だ。
幸い次女はまだ、「プラネタリウムへ行きたい」とか、
一緒に遊びに出かけてくれる。おそらくそれも、
あと1年も経たないうちに「勉強があるから」となっていくのであろう。
でも、せっかく縁があって一つ屋の下に暮らすことになり、
一応家族というかたちになったのだから、
妻との時間もそうだけど、子供達との時間も大切にしたい。
なぜなら、中学生の彼女達は今しかいないのだから。
もし今から、タイムマシンに乗って、彼女達の将来へ行けたとしたら、
「いやー、今考えるとあの時毎日よくやってたよね」
という会話をしているのを見たい。
そんな、会話ができるような日々を過ごせたら面白いのではないか。
そこで、私は考えた。毎日何をやったら面白いかなぁと。
こういうことは、できるだけバカバカしくて、くだらない方が
後から考えたらおもしろいものだ。
そして思いついた。玄関で彼女達が学校へ行くのを見送る時に、
声援を送りながら、1人ウェーブをやろうと。
「○○ちゃん! ○○ちゃん! ○○ちゃん!」と
声援を送りながら、二本の手だけでウェーブをつくる。
もはや、ウェーブになっていないが……。
でも、その1人でやってる感じが、意外とシュールらしい。
初日は結構ウケた。「よし!」と図に乗り、
それから声援で送り出す日が始まった。
やってみてわかったことは、やってる方は意外と楽しい。
毎日アイドルを送り出すような気がしてきて、
結構盛り上がるのだ。ただ、人間慣れというものがある。
3日目、4日目になると娘達の反応が少なくなった。
1週間を過ぎると、何事も起こっていないかのように
普通の反応で「いってきます」と、登校するようになった。
はたから見たら、変な親父が騒いでる光景でしかない。
でも、もう一度言おう。やっている方は、結構楽しい。
さらに、このくだらなさを気に入っている。
どういうわけか、自分だけ日々盛り上がっていくるのを感じる。
幸い「やめて」とは言われていないので、もう数ヶ月も続いている。
そんなおり、意外なことが起こった。
ある日の朝、仕事の準備があり自分の部屋でPCと睨めっこをしていた。
すると「コン コン」と部屋のドアがノックされる音がした。
何かと思い、少し開いたドアの方へ視線を向けると、
長女が「いってきます」と。そう私は仕事の準備のせいで、
毎朝の楽しみである一大行事を忘れていたのだ。
そんな私を可哀想に思ったのか、声援がないと物足りないと思ったのか
わからないが、長女が声をかけてれたのだ。
おそらく彼女の優しさなのだろう。
もう少し時が経てば、彼女達は巣立って行く。
そんな彼女達の記憶に、
「うちのお父さん、毎日変だったなぁ」という
かたちで残っていたら、とても嬉しく思おう。
だから、まだ毎日これを続けて行こう。
これが、私流の今を大切にするコミュニケーションなのだ。
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