『小さな一杯が魅せる長い散歩』
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:中川公太(ライティング・ゼミ平日コース)
「なんだろう、これは?」
コーヒーを飲んだとき、いつも、ふいにそう思ってしまう。僕はコーヒーが大好きだから、どんな味なのか気になってしょうがないけれど、大多数の人にとっては、何気なく飲むうちのひとつくらいなものだ。
でも、よくよく考えると、いつでもどこでも誰とでも、好きなように飲めるものなんて中々ない。そんなコーヒーを飲むことは、「道を歩く」ことに似ているのかもしれない。
コーヒーは道に似ている。
道を歩いていると、気になってしまうものに出会うことがあるからだ。
目に飛び込むのは木かもしれないし、建物かもしれない、向こうから歩いてくる人の場合だってある。歩きながら、変わる風景に身を委ねていると、つい、遠くまで、なんてこともあったのではないだろうか?
あなたが飲んだ一杯に、なにかピンとくるものがあったなら、その瞬間、見慣れたいつもの一杯が、違う景色に誘ってくれる。細かい味に気づくのに、知識という「荷物」は一切いらない。飲むだけでもう、歩き出しているようなものだからだ。
最初に飲んだ一口が「歩き始め」だとすると、「通り過ぎる街並み」のように味が変化するのは、コーヒーの魅力のひとつだ。微妙な変化だからこそ、最後まで楽しめて飲んでしまう。なぜなら、コーヒーは温度によっても味が変わるからだ。温度によって変わるのは、そもそも僕らの舌が、温度が高ければ酸味を、低ければ苦みを感じやすいようにできているためだ。
高い・低いといえば、道は真っ直ぐなものばかりではない。ちょうど「平坦な道」を中炒りとすると、「上り坂」が浅炒り、「下り坂」が深炒りということになる。浅炒りは酸味、深炒りは苦みが味の特徴とされているからだ。ずーっとまっ平らな道ばかりじゃ、物足りなくなることだってあるだろう。
もし、あなたがいつもの道に飽きてしまったら、たまにはすすんで「脇道」に逸れてみることをおススメする。コーヒーだって、同じブラックだけじゃない。カフェオレやコーヒー割のお酒だってある。いろんな道を歩くうちに、新しい発見がいくつもあるからだ。
また、新しい発見は辿った道の数だけある。来てみた道を「振り返って」みるように、過去に思いを馳せてみよう。懐かしい喫茶店が見えてくるはずだ。チェーン店で一杯頼んで、長居した記憶が蘇ってくるかもしれない。もちろん、個人店だってまだまだ健在だ。往年の高級品代表ブルーマウンテンは高いけれど。
道の横に目をやれば、いろんな木があることに気づくかもしれない。シアトル系ローストの店ではエスプレッソをベースにしたバラエティ豊かなコーヒーがあるが、さながら「街路樹」のようなものだ。「葉っぱ」を描いているラテ・アートや、素敵な「イルミネーション」のように、クリームとカラフルソースのトッピングでデコレーションすれば、カフェ・マキアートのできあがり、というわけだ。
来た道があれば行く道もある。「未知なる道」に続いているのはサードウェーブかもしれない。生産から一杯までこだわり抜いた豆は、「交差点の通行人」のようなもの。人はそれぞれ個性があるが、豆にも個性があるからだ。行き交う人のうち一人くらいは、なぜか目に留まったことがあるはずだ。そんなふうに、ちょっと気になる一杯が、そこにはある。
また、歩いた人の数だけ「ルート」があるように、コーヒー豆にあるのがルーツだ。生産者や、焙煎屋が中継地点になっている。その間で橋渡しをするポーターやコレクターの存在も忘れちゃいけない。彼らの存在を知れば、遠い異国の地まで歩いたように感じることだろう。
随分遠くまで来てしまったと感じたら、そろそろ終わりが見える頃だろうか?
いやいやまだまだ終わらない、道は続いているからそなえよう。「道に具える」と書いて道具と読めば、コーヒーの道具が見えてくるからだ。こだわり派なら、手挽きのミルを回して豆を挽き、ドリッパーに粉を入れ、ドリップポットでお湯を注げば、あなただけの一杯のできあがりだ。お手軽派なら、コーヒーマシンにお任せするのもアリだろう。
できたコーヒーを飲んでみて、思わず笑顔がこぼれたら、誰かに飲んでもらうも良しだ。思い切って、腕前を披露するのも一興だろう。その一興に興味が湧いて、飲んでくれれば幸いだ。そんな小粋な心意気なら、お代はいらない。笑顔を「種」に、話の「花」が咲くに決まっているからだ。
話し疲れたら、一息ついてゆっくり休もう、そろそろいつもの日々に「戻る」時だ。
戻った日常の景色は、忙しい社会人としての日々かもしれない。眠気を引きずりがちな朝の出勤前、ついつい食べ過ぎた昼食後、疲れが見え始める夕方、片手にはコーヒーがあるはずだ。仕事をしている人だけではない。レポートに向き合う平日、ゆっくりと読書をしたい休日、そんな学生さんにも、ホッと一息着きたい時に、傍らにはいつもコーヒーがあったはずだ。そんな時、見慣れた片手の小さな景色にも、ふと目をやってみてほしい。
コーヒーがまた、どこかの道へ、連れて行ってくれるに違いない。
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