恋愛で大事なことは作家が教えてくれた
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:蔵本貴文(ライティング・ゼミ日曜コース)
芸大生の恋愛は作品から始まるらしい。
ウソか本当かわからないが、芸大生の恋愛は一目ぼれとか、話してみて相性がいいとかではなく、まず作品を見てそれに惚れこむことから始まるということだ。
これだけ聞くと、少し頭の変な人の話だとか、都市伝説だとか思うかもしれない。でも、ある経験から、こんなこともあるのかもしれないな、と思う自分がいた。
天狼院のライティングゼミに参加して、とまどっていた。今まで、ライティングのトレーニングはしてきたつもりだが、それらと傾向が違うのだ。
今までは、実用文書やビジネス文書などを中心に書いてきたから、「私」は殺して読者のメリットを追い求めるような文章を書く、ということを心がけてきた。誰もお前なんか興味はないのだ、と。
しかし、ここではそうではなかった。「私」の感情をさらけ出したような文章が並んでいる。しかも、それらは面白いのだ。
特に、川代紗生さんの「川代ノート」はすごかった。これは、彼女が感じたことをそのまま書いている、プライベートの日記をのぞき見ているような感覚だった。
普通、僕はこの手の文章は最後まで読めない。「お前の感じたことなどに興味はない」と、途中で関心を失ってしまう。
しかし、この文章はひき込まれながら、最後まで読んでしまう。けっこう長文なのに。なぜなのだろうか?
それは感情を動かされているからだ。では、なぜ感情を動かされてしまうのか? この文章には何が隠されているのか?
実はこんな風に、文章に感情を動かされたのは初めてではなかった。昔、山崎ナオコーラさんやはあちゅうさんの本を読んだ時、同じように感情が動かされた。そして、それがみんな女性だということに結構深い意味があった。
自分が感じた感情をたどってみると、それは恋愛の初期に相手に対して感じる感情に似ていた。そして、その本質は「この人が考えていることを知りたい」という感情のようだった。つまり、読んでいるうちに作者に興味を持っていたのだ。作者に興味を持っているのだから、読むのをやめるわけがない。この人が何を感じたのか、知りたい。
事実、僕は彼女らの文章を読んだ後、インターネットで彼女らの情報を集めた。どういう生い立ちで、どんな経験を通してこんなことを感じるようになったのだろうか。もはや興味は文章だけではない。人そのものに向いていた。
そして、この感情が恋愛の感情と似ているということは、恋愛の本質というのは相手に対する興味ということになる。このことに気づいて、僕はある体験を思い出した。
高校生の時、僕は数学が得意だった。しかし、クラスでどうしても勝てない女の子がいた。そのせいで僕はいつも2位。その子が憎かった。いなくなってしまえばいいと思っていた。いつも目で追っていた。「くっそ~」と舌打ちしていた。
ある時、その子に親切にしてもらうことがあった。といっても、たいしたことではない。実はよく覚えていないのだが、落としたハンカチを拾ってもらったとか、体育のマラソンの時に「がんばれ~」と声をかけてもらったとか、その程度だと思う。
しかし、その瞬間、僕は恋に落ちてしまったのだ。少し前まで、消えてしまえ、と思っていたのにもかかわらず……。
つまり、恋愛に一番必要なのは「好き」とかではなく、「興味」なのである。僕はその女の子を憎んではいたが、興味を持っていた。それは恋愛感情ととても近いものだったのだ。だから、簡単にひっくり返ってしまった。
「好きの反対は無関心」とか「嫌い嫌いも好きのうち」とか、昔の人はよく言ったものだ。「好き」とか「嫌い」ではない。「興味」が恋愛の本質なのだ。
普通に始まる恋愛だって同じだ。容姿や話の内容にひかれ、その人のことをもっと知りたくなる。これが恋愛の原動力なのだ。性的な関心だってその一部と思う。その人のことを色々知りたいという欲求の一部だ。逆に「飽きて」しまって、相手に興味が無くなると、その恋愛は終わりをむかえる。
こう考えると、芸大生が作品から恋愛に落ちるという話はもっともだと感じる。
最初は作品を見て「すごいな」と感じるのであろう。そして、その関心は当然作者にも向く。同じ学校の学生なので距離も近い。こんな作品を作った人はどんな人なのだろうか? 何を考え感じているのだろうか? その人を目で追い始めるであろう。そして、それは少しの刺激で簡単に恋愛感情に変わってしまうのだ。
こんなことを、僕は文章を読むことで気づかされた。恋愛で大事なことを作家から教えてもらったのである。まあ、もう40にもなって、嫁や子どもがいる立場となっては、そんな知識は何も役には立たない。
でも、このことがわかったら、自分に興味をもってもらえるような文章を書けるようになりたい、と強く思った。これは浮気心なのであろうか……。
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