インスタとわたし、おいしい関係を目指します。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:中原優香(ライティングゼミ平日コース)
「はー、またや……」
目はちいさな画面にくぎ付けのまま、スクロールする指が不意に止まる。
わたしは、大きなため息をついた。
楽しそうな飲み会の写真。
恋人との幸せそうなツーショット。
正方形に切り取られた、かわいい雑貨やコーディネイト、きらきらしたスイーツたち。
インスタグラムは、劣等感を刺激する写真の宝庫だと思う。
「SNS疲れ」なんて言葉が飛び出して、その意味がすっかり定着した今日この頃。何を隠そう、わたし自身もどっぷりはまってしまっているのだった。
数あるSNSの中でも特に、インスタグラムは疲れる要素が強いように思う。
すでに周知の事実であることは承知だが、ツイッターは「何気ないつぶやき」、フェイスブックは「オフィシャルな投稿」色の強いSNSである。
対して、インスタグラムはどうなのか。
「いかに自分をよく見せるか」の勝負的な面が、やや強くなってきてはいないだろうか。
もちろん、そうではない人が多数いることは重々わかっている(わたしもそのうちの一人である)。しかしながら、もはやダサさすら感じてしまうほどの流行語「インスタ映え」からもわかるように、「投稿する」それだけのための写真を撮る人が最近とっても多いのだ。
あくまでわたしの定義でいうと、そもそもインスタグラムというのは、日々の中で「これいいな」「好きやな」などと思ったものを、ぽんと載せるためのものであった。
しかし、今や時代はそうじゃないのだ。「インスタに投稿するための」食事、「インスタに投稿するための」旅行。それだけにとどまらず、なんと最近では「インスタ映えペット」なるものも存在すると聞き、わたしは仰天した。
根本に自己顕示欲があるのは、きっとどちらも同じこと。それにしても「インスタ映えペット」て、ちょっと、いやだいぶ違くないか、と思う。
だったら、ぶれずに自分の定義を貫けばいいものの、そうもいかないのがわたしの情けないところ。
きらきらスイーツはおいしそうだし、おしゃれなコーディネイトは真似したい。かわいい女の子やかっこいい男の子は、目に入るとどうしたってじいっと見てしまう。
そしてどうなるかというと、ずーんと落ち込んでしまうのだ。
楽しそうで、いいな。こんなにかわいくって、いいな。そうやっていじいじと考えてしまう時にはたいてい、それが「作りこまれた写真かもしれない」などということはコロッと忘れてしまっている。都合がいいんだか悪いんだか。
そんなに嫌ならやめたらいいのに、と言いかけたそこのあなた。わかります、そう思う気持ちはすごくわかる、だってわたしもそう思うから。
でも、残念ながら、そう簡単にはやめられない。日常のちょっとした隙間を埋めるのにインスタグラムはぴったりだし、自分の好みに合わせた写真をどんどん紹介してくれるから、やっぱり見ていてすごく楽しいのだ。
羨望や嫉妬は決まって後からやってくるから、楽しいのは見ている時だけ。しかし、その一瞬の誘惑に負けて、つい何度もアイコンをタップしてしまう。
これって何かに似てないかと思ったら、それは深夜のポテトチップスなのだった。
いま食べたら絶対に太る。肌だって荒れるし、胸やけして眠れなくなるかもしれない。
そんな多大なリスクを冒してでも「食べたい!」という衝動にあらがうことは難しい、丑三つ時の、ポテト・チップス。
人工的な粉と油にまみれたジャンクなものを、なんだってあれほどおいしく感じてしまうのだろう。日中よりも、深夜に食べる方がおいしいみたいで摩訶不思議。甘い顔をした罠だとわかっていても、引っかからずにはいられない。
そして翌朝、ぽつんと赤い吹き出物を見つけ、がっくりと肩を落とすのだ。
それに懲りて深夜のポテチをやめられたかというと、もちろんそんなことはない。
友達と一緒ならまだしも、時には一人でやってしまうこともある。本や漫画を片手にし、夜更かししながらポテトチップス。
途中でやめられるわけもなく、気付けば一袋食べきってしまっていたことも一度や二度ではない。ぞっとする。
でもまあ、たまにはいいかな、とも思う。
少なくとも食べているとき、わたしは間違いなく幸せだ。そりゃあ、毎日食べてしまうと大変なことになりかねないけれど、たまの楽しみならばいい。そう割り切ってしまえば、食べている最中、罪悪感にかられることもなくなった。
過ぎたるは猶及ばざるが如し。
古人の言葉はすばらしい。何事も楽しく、ほどほどにしなくちゃいけないなあと思う。
インスタグラムだって、疲れるかやめるかの二択ではない。しんどくならないよう適度な距離を保ち、上手に楽しんでいければいい。
インスタにしたってポテチにしたって、中毒性のあるものと付き合うためには、実はちょっとした覚悟が必要なのだ。
それに気付くことができただけでも、疲れた意味があったのかもしれないなあ、なんて思ってみたりしている。
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