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「お若いですね」と言われるよりキリマンジャロに登りたい


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記事:かわはらちえこ(ライティングゼミ平日コース)

あなたは誰かに褒め言葉のつもりで「お若く見えますね~」なんて言うことがありませんか?
きっと1度くらいは、言ったことがありますよね?
そのとき、相手はどんな反応を示したか、覚えていますか?

あなたが所属するコミュニティ、たとえばフィットネスジムとか趣味のサークルに、年上の友人がいると仮定します。
年齢の話をしたことはないけれど、話題や言葉遣いから、なんとなく10歳くらい上かな~と想像していました。
ところが何気ない会話がきっかけで、その方が自分よりも20歳年上であることが明らかになりました。

驚いたあなたは思わず「お若く見えますね!!」と言ってしまうでしょう。
そして、相手の方はきっと礼儀正しく「ありがとう」とか、「いえいえ、そんなことないです」と答えるでしょう。
ちょっと嬉しそうにすら、見えるかもしれません。
でも、本当にそうでしょうか。

私、55歳になりました。ついにアラカンです。
で、自分で言うのもなんですが、年齢より若く見られます。
たまに40代にみられることもあります。正直嬉しいです。
しかしそれが最近ジレンマです。
若く見られたい。それは間違いありません。少なくとも女性ならきっと、誰でもそうだと思います(男性は貫禄などの問題で、例外もあるのかも)。
しかし!
なんなのでしょう。「お若いですね」とか「55歳? えっ、見えなーい」と言われた時の、このモヤモヤ感は。
たぶん、そこに前提があるから。
「本当は若くないのに!」という無言の前提です。
お若く見えますね=年の割にね。つまり、その言葉で自分が「お年」なのだと思い知らされるのです。
地味に傷ついたりするのは、きっと自分が自分の年齢を受け入れられていないからなのでしょう。
だけど年を取るということはそれだけ死に近づいていくということですから、生物として本能的に恐怖を感じるのは仕方ないかなとも思うし、小学生(のころの私の娘)が「中学生になんかなりたくない。おばさんだもん」と発言する、日本に蔓延する若さ至上主義の力は、そう簡単には覆せないという気もします。

そして、ボトックス注射やプチ整形、サプリの力を借りたり、ジムやエステに通って努力をして「若々しくある」ことに意識的な女性が増えたことも、もしかしたら「若く見える」ことと「実際に若い」ことの違いを、より残酷に際立たせることになっているのかもしれません。
いっとき「美魔女」などという言葉が流行したけれど、20代に見える50代なんて、やっぱり不自然。実年齢と見た目があまりにかけ離れていると、それはそれでギョっとするもんね。

お互いにモヤモヤしないで、見た目の若さをほめたりほめられたりすることって可能なんだろうか。
アンチエイジング化粧品の広告でよく使われる「美しく年を重ねる」とか、「年齢にふさわしい美しさ」というようなフレーズはどこか漠然としているし。
石田ゆり子さんにはあこがれるけど、女優さんはやはり遠い存在だし。

どこか身近なところで素敵な年上女性はいないかなと思い巡らしていたら、いました!
近所のスーパーのレジ係の女性。たぶん60代、メガネをかけて、ショートカットの、きびきびした女性です。彼女がレジにいたら、必ず彼女の列に並びます。早いからももちろんあるけれど、彼女の接客が好きだから。
彼女の笑顔を見るとほっとする。いつも元気で明るい声で、どんなお客さんにも気さくで親切、赤ちゃんやお年寄りにも気配りを忘れないけれど、それ以外の誰に対しても分け隔てなく接する。
そんな彼女を見るたびに、ああ、素敵だなあと思います。
まるで何かが内側から輝き出しているみたいだと。
それはたぶん、彼女がきちんと年齢を重ねたぶんだけ、人間的に深みを増していることからくる美しさなのでしょう。
あんなふうに魅力的な女性になら、なってみたい。
結局最後は、内面を磨くことですね……、ときれいにまとめようとして、気がつきました。自分が滅茶苦茶、ハードルを上げたことを。

エステに通って肌をお手入れしたり、食事や運動に気を付けて体型を維持するのは、ある程度は誰にでも可能なこと、たとえて言えば富士山に登るようなもの。
大変だけれど、決心さえすれば、不可能なことではない気がします。

でも内面を磨くということは、言葉でいうほど簡単なことではないぞ。
人としての経験値を上げるためには、楽しいことや心地よいことだけでなく、嫌なことや面倒なこと、自分の無力さとか苦しい人間関係からも逃げないで、全部自分の経験として引き受けていく必要があるのだもの。
たいていのことはネットで済ませられるこの時代に、自分や人と深くリアルに関わっていくことでしか得られない価値を追求するなんて、キリマンジャロ登頂を目指すようなもの。
かなりの物好きとしか言いようがありません。

ええ、私はもう半分諦めています。
だけど、そこそこ若いそこのあなたなら、まだ間に合います。もしやる気があるなら、できるだけ早く始めることを、お勧めしますよ~。
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2018-01-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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