メディアグランプリ

20年越しで出会えたわたしの一部と、ライティング・ゼミのちょっとだけキツい関係


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:木佐美乃里(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
「出会ってしまった……! 苦節20年、やっと出会えた……!」
喚起の雄叫びを、どうにかこうにか心の中まででとどめたのは、下着屋の試着室でのことだった。
 
昔から、締めつけられるのが嫌いだ。
そんなの当たり前だ、皆そうだ、と言われるかもしれない。
だけど、校則のない高校に行ったのも、必死で勉強して「自由の校風」で知られる大学に進学したのも、縛られるのが嫌だったからだ。
もちろん、束縛してこようとする人も苦手だ。誰かに誘われることも誘うこともなく、トイレには自分の行きたいタイミングで行ってきたし、「今何してる? どこにいるの?」なんて聞いてくる男性も、丁重にお断りしてきた。
それくらい、わたしは何にも誰にも縛られたくないと思って生きてきたのだ。
 
そんなわたしなのに、中学生くらいからだろうか、常に縛られ続けてきたものがある。
できれば、なしで生きていきたいと思ってきたけれど、なければないで不安になるし、イヤイヤながらも付き合ってきたのだ。
スポーツタイプのものもあるとか、キャミソールと一体化しているものもあるとか言う人もいるかもしれないけれど、あれだって全然締め付けがないわけじゃない。
 
そう、ブラジャーの話だ。
 
先日WEB天狼院書店に掲載されていた、中村雪絵さんの「巨乳で悪いか!」を読んで、非常に共感を覚えたが、それはわたしが巨乳だからではない。むしろ逆だ。縛られたくないとか言っているから、巨乳だと思われる向きもあるかもしれないが、それは誤解だ。自信をもって言えるが、わたしは貧乳だ。
それでもなぜ中村さんの記事に共感したかというと、自分の身体が気に入っているからだ。
わたしはささやかすぎる自分の胸が好きなのだ。
なのに、胸が小さい人向けのたいていのブラジャーは、どうにかして胸を大きく見せようと、必死な作りになっているのだ。どうして「寄せて上げ」たり、谷間を作ったりしないといけないのだ。わたしは、寄せたり上げたりしなくて、小さいままの、ありのままを受け入れて包んでくれるものがほしいだけなのに。
 
だからわたしは、ギリギリの抵抗を示すつもりで、ノンワイヤーブラを愛用していた。
良い響きだ。「ノン」ワイヤー。誰にも縛られないわたし。
 
そんなわたしに、ある日、運命の出会いが訪れた。
いつものように、寄せたり上げたりするブラに敵意をむき出しにしながら、ノンワイヤーブラを物色していた。そんなわたしの動きがあやしく見えたのだろうか、店員さんがにこやかに近づいてきて、
「ノンワイヤーのものがお好みですか? よかったら、これ試してみませんか?」
と言ってきた。だって、これ、ワイヤー入りじゃない? わたしは締めつけられるのは嫌いなんだってば、そう思ったが、せっかくすすめてくれているのだし、と、とりあえず試着してみることにした。
 
そして、冒頭に戻る。
 
なんだ、この付け心地は! そっと全体を支えられているのに、まったくきつくない。なんだ、この心地よさは! しっかり支えられているのに、つけていないみたいに軽い!
「これ、ワイヤー入っているんですけど、ノンワイヤーのものより、軽いつけ心地じゃないですか? ずれやすい胸の下中心をポイントで支えているから、締めつけないのに、
きれいに包んでくれるんです」
わたしは感動していた。これまでにない運命の出会いだ。
これがワイヤー入りだなんて。わたしが憎んできた、締めつけるはずの、あのワイヤー入りだなんて。
 
試着室で感動に震えながら、同時に思い出したのは、ライティング・ゼミのことだ。
ライティング・ゼミでは、文章を書くための、あるコツというか枠組みを教えてくれる。
それに則って文章を書こうとするのだが、これがつらい。
その枠組みにピタリと当てはまるものを思いつくことができたときには、興奮して文章もスルスルと書けるのだが、それを思いつくまでがいつも大変だ。
その枠組みにがんじがらめになっているような気がして、枠組みなんかないほうが、文章がかけるのではないかと思い始めるくらいだ。
だけど、試しにやってみても、とっかかりがなくて文章は進まないし、何より面白いと思う文章は、必ずその枠組みに沿って書かれているのが分かる。
だから、この数か月間、毎週毎週、締め切り前になると悶絶しながらも、その枠組みで考えていることを続けていると、ポーンと思ってもみない方向に話が転がって、自分でもおもしろいと思えるものを書けることが多くなった。
 
お気に入りになって、色違いで4枚も買ってしまったブラジャーをつけた今、これを書きながら改めて思う。
何にも縛られないからって、自由なわけじゃないのだ。苦しみがなくなるわけじゃないのだ。
たまに窮屈に思うことがあっても、そのなかで工夫すること、飛びあがろうとすることで、自分でも思ってもいなかった自由を手に入れることができるかもしれない。もっと遠くにいけるかもしれない。
 
ライティング・ゼミのメソッドは、もう外せないわたしのブラジャーと同じくらい、身に染みついてしまった。
寄せたり上げたり、大きく見せたり、形よく見せようとしなくても、ありのままのわたしで、きっとこれからも、書き続けていく。

 
 
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2018-02-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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