40歳、初心に帰るな。鎧を脱ぎ捨てよ
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【2月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:廣升敦子(ライティング・ゼミ日曜コース)
誰だって、自分がかわいいのだ。
だから、冷たい風にさらされないよう、大事に大事にその身を守ってきた。
そして、一丁前の言い訳を盾に、サッとその場を逃げる。
「やっぱりサァ、忙しくって……」
「ちょっとさ、頼まれごとがあって……」
簿記2級の検定試験を目指していたが、途中でモチベーションが続かなくなった。簿記の専門学校からすると、いつの日からか受講生がひとり来なくなった。それだけのことだ。とがめられることも、引き止められることもない。誰にも迷惑はかけてない。だから、よしとしよう。
……その繰り返しで、いつの間にか時間ばかりが過ぎていった。
そんななか、さすがは夫である。
私の痛いところを見事に一撃した。
「忙しい、忙しいって、この前も聞いた……。確かに、これまで仕事を頑張ってきたし、スキルアップしようとしてきたことはわかる。でも、それを『見える化』してない。それが見えないのは、自己評価もできなくなる。どんどん、ドツボにハマるぜ」
言い返す言葉もない。
「もう、40歳だよ……」
ごくん……。
生唾を飲みながら、過ぎ去った時間をちらっと振り返る。
社会に出てから、もはや20年が経とうとしているのだ。
新卒で就いた仕事は、専門紙の編集だった。
名刺を見せれば、ほとんど誰でもが時間を割いて話を聞かせてくれた。
「話を聞いてくれてありがとう」とお礼を言ってくれる人さえいた。
そんな居心地の良さに、あの頃は有頂天だった。
自分が、ど真ん中だった。
「社会がこうなれば」という正義感を振りかざし、上司に楯突くこともあった。
そんな中、ビギナーズラックが訪れた。
今となっては、非情なタイミングだったかもしれない。
もうちょっと、修行をするべき20代。
提案した連載企画に、大きな広告主がついたのだ。
いよいよ、私は舞い上がった。
そして、連載を終えるや否や、「一人でもやっていける」と勇ましく辞表を提出した。
肩書きと所属はなくなったが、若気の至りで、何も怖いものはなかった。
「書ける」というプライドを肌身離さず身にまとい……。
その姿は、「裸の王様」だった。
幸いにも、当時は、「ものを書く」という仕事においては、ウェブ媒体がまだまだ試行錯誤の時代。紙媒体の編集経験が、多少なりとも活かせた。そんな時代背景もあって、生活するだけの糧は得ることができた。
が、まだまだ実力に乏しいフリーライターというのは、そうは言っても自由ではない。けっして、自分の書きたいように書けるわけではなく、制約も多い。加え、評価したり、教えてくれる人は誰もいない。
ところがある日、気づくのだ。
「あれ、最近、あの編集者から、連絡ないな」
縁が切れる時というのは、いたって静かだ。
誰も、教えてくれない。
自分の感度だけが頼りだ。
誌面を見ると、別のライターが連載を始めていた。
愕然とした気持ちになり、ようやく、我が身を知るのだ。
成長することに、おざなりだったと……。
とはいえ、情けないことに、貯金が減っていけばいくほど、自分も周りも見えなくなる。
「次の武器を探さなくては」
私は、他人の資格や経験を手に入れることに的を定め、何ら疑わずに邁進しつづけた。
「私も会計や税務の仕事ができるように」
「友人がコンサルの仕事をしているから、私も」
他人の資格やスキルというのは、とても強そうに見える。
「あの人のスキルを手にいれたい」
その憧れだけを目指して、やみくもに走った。
しかし、なかなか、光は見えてこない。
気づくと、あれこれ、迷い道に入ってしまったのだ。
一方、これまでやってきた「書く」という仕事は当然できると信じ込んできた。
しかしながら。
いったん、自分と世の中をみたときに、十数年前に培った経験は、必ずしも今の自分を助けてはくれない。もう一度、ちゃんと磨いて戦えるようにしなければならないのだ。
それなのに。
今の私は、迷いっぱなしだ。
そして、時間を消耗してきた。
これから戦わなきゃいけないというときに、みたこともない鉄砲やミサイルの使い方に疲れ果て、一方で、小さい頃から培った刀や槍のスキルはあると過信していたという具合に。
残された人生の時間は、有限だ。
そんな中、どんな戦術を身につけていけばよいのか。
「ねぇねぇ、その刀と槍、もいちど、ゼロから使い方を覚えようよ」
夫に釘を刺されたその夜、私は毛布にくるまりながら、心に決めた。
自分じゃない誰かを信じてみようと。
それが、40歳の私が新たに掲げた決意だ。
20年来、しがみついていた「初心」を捨てよう。
いまや、言い訳すら持っていない。
そして、「書くこと」を一から学ぼう。
天狼院書店のライティング・ゼミをきっかけに、再び、「書く」ことが日常に加わった。
なんでも学んでやろうという「学習者」であることが、「戦術」を身につける第一歩だ。そして、プライドという鎧を脱いで裸ん坊になった私は、大事なことをゆっくり思い出しはじめた。
「お前のおじいちゃんにもわかるように書け」
「肘から下だけで文章を書くな。頭で書け」
「人に喧嘩を売るな」
かつての上司に指摘されたことを
20年後の私に言い聞かせる。
すると、多くの人から、珠玉の言葉をもらっていることに、今さらながら気づくのだ。
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