ライティングは日曜大工に似ている
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:増田明(ライティング・ゼミ平日コース)
一年ほど前から趣味で日曜大工をやっている。最近の言葉で言うとDIYだ。
ホームセンターに行き木材やネジなどの材料を購入し、自分で加工し椅子や本棚など木工作品を作る。
たまにDIYサークルにも出かけて行き、古くなった家の壁や床をリノベーションすることもある。とても楽しい。
その楽しさの本質は何だろうか。考えてみた。
私の場合は、自分の中のイメージが形となって現実に出てくること、それが楽しい。たいていの場合、現実に出てきたものは自分のイメージとはいくぶん異なっていることが多い。
予想以上によいものが出てくるともちろんうれしい。予想とは違った変なものが出てきてしまったときも、その意外性が逆に楽しい。
作る過程で自分の中のイメージが徐々に形になっていくのを見て、それがまた自分のイメージに影響を与え、そのイメージからまた現実のものが作られていく、というスパイラルが起きる。
たいてい自分の中にあるイメージは最初はハッキリとしておらず、形になるまでよくわかっていない部分が多い。形になったものを見て、そのイメージがハッキリしていく。その繰り返し。
さらにその時の木材や道具の調子など、偶然が重なることで予想とは違ったものが出てくる。それが楽しい。
ライティングの楽しさも、日曜大工で感じるその楽しさと同じだと思う。
大学時代に友人何人かで、適当にテーマを決めて締め切りを設け、1000文字程度の短い文章を書き、皆で見せ合う、という遊びをやっていた。私は作家の星新一さんや阿刀田高さんが好きだったこともあり、ショートショート風な物語を好んで書いていた。
当時日曜大工はやっていなかったが、今思い出すと日曜大工の楽しさとよく似た楽しさを感じていた。
自分の中にある自分でもよくわからないイメージを、文章として外に出し形にしてみると、自分の予想とは違ったものが現れる、そんなことがよくあった。
頭の中にある時は、そのイメージはボンヤリとしているが、形にすることで初めて、自分で何をイメージしていたかに気付くのだ。それがとても楽しかった。
私が書く物語は友人たちにそこそこ好評だった。
気をよくした私はある日、今度はじっくりと取り組んで大作を書いてやろう、などと調子に乗った。
しかし大作は書けなかった。
短い文章しか書けなかったのだ。長くて1000文字程度の、本当に短い文章しか書けなかった。
私が物語を書くときは、頭の中にぼんやりと浮かんでいるイメージ、例えばなにかの風景や空気感、それを感じた時の感覚、などを何とかがんばって物語に変換し、文字として書き出していた。
大作を書こうと意気込んだ時、文字として書き出したものは、私が感じたイメージのほんの一部でしかなかった。もっと大きな「モノ」が頭の中にあるはずだった。もっと壮大な物語があるはずだった。しかしそれが文字として外に出てくることはなかった。
その理由はだいたいわかっていた。
私は架空の登場人物を書くことができなかった。物語の主人公はいつも自分自身だった。他の登場人物はほとんどいなかった。いたとしてもただの脇役で、大した個性も役割もなかった。自分以外の人間を主人公として登場させることもできなかった。
フィクションなのに、架空の人物を書くことができない。そのため物語がまったく広がらず、すぐに終わってしまう。ボンヤリとしたイメージが、ボンヤリとした短い物語になって、それで終わってしまう。
消化不良だった。
自分の頭の中にある「モノ」を、もっとハッキリと形にし、壮大な物語を書いてみたい。だが自分にはその才能がない。そんなことを思った。
頭の中の「モノ」は外に出ることができず、頭の中にとどまり続けるしかなかった。
あきっぽい大学生の気まぐれなその遊びは、十回ほどでなし崩し的に終わり、その後、物語を書くことはなくなった。
頭の中の「モノ」は外に出る機会を完全に失った。
それから十年以上たち、そんなことをやっていたという記憶もなくなっていた。
ある日、天狼院ライディング・ゼミの広告がFaceBookのタイムラインを流れてきた。私はよく内容や金額を確認もせず、衝動的に申し込みボタンを押していた。
第一回講義の中で、参加者の80パーセントは、なんとなくで申し込んでいます、と言う話があった。
私もはじめはとくに理由もなくなんとなく申し込んだと思っていた。
しかし、あらためて考えてみると、十数年前に外に出すことができなかった、私の中の「モノ」を出したくて、申し込みボタンを押したのかもしれなかった。
かつて私の中の「モノ」は、私に能力がなかったため、外に出てくることができなかった。
しかし、これからライディング・ゼミで練習を積むことによって、その「モノ」は外に出てくる機会を得るかもしれない。
いや、四ヶ月ではまだまだ足りないかもしれない。それは今はまだわからない。
これから四ヶ月、私の中からその「モノ」が出てくるのか、出てこないのか。
とても楽しみでもあり、少し怖くもある。
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