不器用な人が幸せになれる物語
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:増田圭織(ライティング・ゼミライトコース)
これは、ある不器用な少女が幸せをつかむまでの物語。
昔々ある所に、自分のことが大嫌いで、もし願いが一つかなうなら自分より優れた誰かに生まれ変わりたいと真っ先に願う少女がいました。少女は客観的に見てあまりぱっとする顔立ちではなく、性格も明るくて話好きというよりは、部屋の隅っこで本を読むことを好み、必要がなければ自分から人に話しかけるということをしない子でした。少女はそんな自分の微妙な顔と根暗な部分も嫌いでしたが、自分の中で一番嫌いな所はもっと他にありました。それは、不器用な所。少女は、ひたすらに不器用でした。例えば幼稚園の時、先生に言われたことがなかなか理解できなくて、周りの友達が先生の言われた通りに動き出している中、一人途方に暮れてその場に突っ立っていたり、小学校の時も理解度が遅くて何度も同じことを聞いて先生に怒られたり、友達が素直に笑ったり泣いたりしている中自分の感情を外に出すことがあまり得意ではありませんでした。
中学生になると、少女は自分の不器用さを自覚し、不器用な部分を努力によって補おうとがむしゃらに頑張りました。勉強ではわからない所をわかるまで突き詰め、先生にもたくさん質問し、自分でできなかった問題を何度も繰り返し解くことで、少女は学年トップ5に入る成績を収めることができました。また、少女は学校の部活動で料理部に所属していたのですが、文化祭などで臨機応変に対応することは苦手だったものの、その丁寧な接客は文化祭に来るお客を感動させ、後輩はいつも優しく丁寧に教えてくれる少女のことを頼もしい先輩として慕っていました。そして少女は、中学・高校と6年間通った学校で、卒業時に成績優秀で態度も優れた模範生として全校生徒の前で表彰されました。こうして、少女は不器用な自分を克服……できていればめでたしめでたしなのですが、残念ながら少女は周りからの評価が上がっても自分のことが嫌いなままでした。
どうして、周りからの評価が上がっても自分のことが嫌いなままなのだろう? 少女は自分にそう問いかけました。もちろん、友達や先生から褒められることは嬉しいし、表彰された時は両親も喜んでくれて、その一瞬自分を誇らしく思ったのは事実です。でも、それはあくまでも「他人から見た自分」の姿であって、少女から見た自分自身の姿ではないのです。むしろ自分は自分のことを不器用でぐずな人間だと思っているのに、周りからの評価とのギャップが大きすぎて、少女は逆にいたたまれなくなりました。
みんなが見ている私は、本当の私じゃない。私はそんな優等生でもないし、頭もよくないし、優れた人間なんかじゃない。ただ、自分が不器用なことを自覚して、努力で補ってるだけだ。誰も私の努力には気づかないで、それを才能だと言って褒めそやす。私は才能なんかない。才能がないから、努力してようやく人に認められるレベルなのだ。誰かが私の努力を認めてくれたら少しは変われるかもしれないのに……、いるわけないかそんな人。
少女はそう自分に言い聞かせ、いつまでたっても好きになれない自分自身に落胆しました。
そんな少女は大学に入学しました。6年間女子校に通っていた少女は、共学の大学に入学したため6年ぶりに男子と話すことになりました。最初は緊張していましたが、口下手な自分とも話してくれる男子が多いことに気づくと自然と男友達も増え、気の合った仲間と楽しい学生生活を送るようになりました。
そしてある時、少女は一人の男友達と電話をしていました。ちょうど試験前で気持ちも落ち着かず、お互いの愚痴を吐き合う会になっていました。そこで、少女は男友達から「君は頭が良いから成績も簡単に良いの取れるんだろ、高校時代のこと聞いたよ」と言われました。ああ、また誤解されている。少女はため息をついて、「違うよ、私はそんなに頭よくないよ。高校時代必死になって勉強してたけど、皆の話聴いてるともっと遊んでおけばよかったな、なんて思っちゃう」そこまで言って、自分がかなり人前でネガティブになっていることに気づいた少女は慌てて「ごめん試験前に。そんな私のネガティブ情報どうでもいいよね、ごめんね」と返しました。そこでしばらく黙っている男友達の様子に、嫌な気分にさせてしまったと少女は自分の発言を後悔しました。話を変えようと口を開いた矢先、彼が口を開きました。「んー今はテスト前だしネガティブになるのは仕方ないよ。でもその頃頑張ったから今が楽しいんじゃない? 高校で出来なかったことも中には今出来るものもあるかもだし。それに俺ちょっと勘違いしてた。今すごい君の原動力は中高時代に必死に努力して頑張った経験から来てたんだね」意外すぎる言葉を聞いて少女の顔は熱くなりました。単純に励ましてくれたのも嬉しかったけれど、何よりも自分が努力して頑張っていた、ということを認めてくれたことが心に響いて少女は電話口で泣きそうになりました。初めてだ、この気持ち。この人は何の気なしに言ってくれたのだろうけど、私はこの言葉に救われた。初めて、自分を肯定してくれた家族以外の第三者からの言葉に少女は心から「ありがとう」と言いました。本当に、本当に嬉しくて、少女は自分のことが少しだけ好きになれるような気がして嬉しくなりました。
それからほどなくして、少女は自分を好きになれるきっかけを作ってくれた男友達に告白しました。「いつも優しい言葉をくれて励ましてくれるあなたが好きです」言葉は月並みになってしまったけれど、その時好きな男の子に告白できる自分を心から好きだ、と少女は思いました。以前のネガティブな私からじゃ考えられない強い決断、今なら自分のことが心から誇らしく思える。もう何でも願いが叶うって言われても、今は誰かと交換してほしいなんて願わない、そう少女は思いました。だって、私のことを不器用でも頑張ってる、って認めてくれた人がいるから。この恋が実らなくても、そんな素敵な人に出会えただけで、私は十分幸せだ、少女はそう思って微笑みました。
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