子育てはタイムマシン
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:永輝(ライティング・ゼミ平日コース)
私たち夫婦には5歳の娘が一人いる。
娘が生まれたばかりの頃は、泣いていても何を表現しているのかがわからなかったり
体調が悪い時、どこが痛いのか読みとれなかったり、もどかしい思いをした。
私が何を訴えているかなかなか読みとれない為、
娘に「早く言葉を話してくれないかなぁ~」などと思っていた。
娘が大きくなるにつれ、徐々に言葉を覚え、コミュニケーションがとりやすくなった。
しかし、言葉によるコミュニケーションができるようになるにつれ、感情をぶつけてしまうことも増えた。
娘がグズグズしてなかなか行動してくれないときに、
「すぐにやれって言ったでしょ!」、「こうしてって何度言えばわかるの!」と感情を爆発させてしまう。
怒り狂っている私の表情を見て、さらにおどおどして返事もできなくなる娘。
何も反応を返さないことに、さらにヒートアップしてしまう。
5分くらいすると自分の気持ちが落ち着き、怒りの感情をぶちまけることなくなる。
落ち着いてみると目の前にいる娘は、親の負の感情を浴びせられ、ショックを受けている。
傷ついた様子をみて、「また、やってしまった……」と自己嫌悪になる。
分かっているのであれば、しなければ良いのだが、怒りスイッチが入るとどうにも止められない。
感情が暴走するのを止めたいと思っていても、どうしても止まらない。
冷静になると、「なぜ、冷静になれない」、「相手は5歳なのに……」と
自己批判の思いが湧き上がってくる。分かっているのに、くり返してしまう。
何とかしたいという気持ちを抱えながら過ごしていたある日、書店に立ち寄り、
売れ筋の本などを見ながら、散策していた。
いろんな本を物色しているうちに、「キレる私をやめたい」という本に目を奪われた。
今の自分の気持ちそのままのタイトルに思わず手に取り、中身を確認すると、
そこには自分のことかと思える内容が書かれていた。
というのは、突如湧き上がる怒りの気持ちを抑えきれず、
幼い子供にまでキレそうになってしまうという中身だったからである。
私の場合は幼い子供にキレているのでそこは少し違うが・・・・・・。
早速購入し、近くの喫茶店でむさぼるように読む。
読み終えてから、「克服できる…・・・」と思った私は、過去に娘にキレた時のことを
紙に書き出すことにした。
「どういう時に怒った」、「こういう反応があったときはさらに気持ちが昂ぶる」、
「こういう言葉を聞いたら、今でも腹が立つ」といったことを、自問自答しながらノートに向き合う。
ノートに書き出されたものは、自分が小さいころに自分の両親に怒られていたものばかりだった。
何かに夢中で親の言葉にすぐに反応しなかったとか、親の言われたとおりではなく自分のやり方を通そうとしたとかである。
今、自分がしていることは、子どもの頃に自分が嫌な思いをしていたこと。
それを自分が親になってから、娘に対して再現していたという事実に愕然とする。
その事実に気づいたとき、妻に一つのお願いをした。
「今度、娘にキレたとき、スマホで撮影してほしい」 と。
紙に書き出したくらいで、キレるのをやめられるほど、できた人間ではない私は、また、娘にキレてしまう。
妻がその場面を撮影してくれたので、冷静になってから一人で見てみる。
そこに映っていたのは自分というより、自分の両親の姿だった。
自分が両親に怒られた場面だけでなく、話し方、使う言葉も全く同じ。
おびえているのは娘ではなく、自分の子どものころのように見えた。
娘の行為に自分が両親に叱られ続けられたことを重ね合わせて再現していた。
タイムマシンで自分の子どものころに戻って、怒られている場面に遭遇しているような感覚だった。
両親に起こられていたときのことが未だに自分の中でくすぶっていたことが、キレる原因だったのかと
そのおかげで、「お父さん、お母さんはなんで怒っているの?」、「あのとき、こう言ってくれたらわかったのに」
といった自分が両親に訴えようとしていたことや思いが整理できた。
それだけでなく、自分がキレている動画を見ながら、自分の両親の気持ちも汲み取れることができた。
「自分の言葉が子どもに伝わらないもどかしさから苛立っていたんだろうな」と。
その時の両親は、孫への育児にも影響を与えているとは全く思っていないだろうけど。
キレた原因にたどり着くまでに娘には心の傷を負わせてしまったかもしれないという思いは今も残る。
それがどれくらいの影響だったかは、娘に子どもができたときに分かるのかもしれない。
娘が2、30年後に自分と同じような怒り方をしないような育児を今、模索している。
同じ道を歩んだ場合、どういう育児をするのかは容易に想像がつく。
エゴかもしれないけれど、自分がタイムマシンに乗って見たものとは違う世界を娘には見てもらいたい。
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