メディアグランプリ

「女子力が高いって言われましても」


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記事:はまかずと(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
女子力が高い。よく言われる言葉である。僕が、だ。
占いを始めて、サークルやら練習会やら飲み会に出るようになってもう5年以上経つが、どの集まりに行ってもあまり同性にはお目にかからない。そんな中、ハマさんは女子力が高い、と何度言われたことか。明らかに褒め口調で言っているのだが、特に喜べない。こんなおっさん捕まえて何が女子だ! などと言いたい訳ではなく、そこに含まれる意味について想いを馳せると、なんだかモヤモヤするから。
 
一般に「女子力」に対する確固たる意味というのは確立されていないようだ。第一義的に意味するところは、結婚による安定した生活や「幸せ」を志す女性たちが、異性の関心や評価を獲得するためのスキル、とでもいったところか。しかしそれはれっきとした男性であるところの私にかける言葉の意図としては不自然であろう。考えるうちに、そのほかにいくつかの意味合いがあることに気がついた。
 
まず、僕は酒を好まない代わりに甘いものが好物である。参加者が女性ばかりの占い関係の講座や勉強会に、よくお茶菓子などを買って行くが、そういう時の褒め言葉として使われる。スイーツ男子などというさらに意味不明な呼称もあるが(お菓子おじさんと呼ばれたときはさすがに傷ついた)、言いたいことは「おう、おっさん、気がきくじゃねえか」である。別に気を利かせたわけじゃない。自分だけ食べたいところだけど、あなた方が欲しがって面倒だからおすそ分けしているのだ。
 
また、軽い相談事に乗ってあげたときに女子力が高いと言われることもある。これについては、「○○のことで悩んでてさ」と来たら、そこにどんな感情が発生しているのかを聞き出して、そうなんだ。辛いよね。とか、分かる! と共感してあげれば満足するようだ。家内を観察していて分かってきたことだが、女性はこっちのアドバイスなど聞いちゃいない。解決策、そんなもんはとっくに決まっている。それよりも、そうか、そうかと聞いてくれる相手を探してるだけなのだ。だからこの場合は、まあ褒められたと受け取っていいだろう。
 
ほかのシチュエーションとしては、飲み会の場合だ。話を聞いていると、1.メインで話すリーダータイプの話を、2.サブリーダーが受けて盛り上げ、3.聞き役のそれぞれが共感を示す、というサイクルで話が進んで行く。ポイントは、他に4.聞いているのかいないのかわからないが、話のツマとしてたまに話題に挙げられる存在たち、に含まれる僕だ。ほぼ女子会と言ってもいい飲み会で座っていると、目の前では、男性の筋肉美の話をしており、私は高田延彦がいいとかGACKTくらいのほうがちょうどいいとか熱心に話している。それって、あのグラビアアイドルはオッパイが大きくていいとか、いやいやあの子くらいが丁度いいっていう話とまったく変わんないな、などと思いながら聞いている。そのうちに自分の夫の薄毛問題のシェアとか、夜ベッドでこんなふうに誘ってきてムカついたなんて話が始まって、ああ女は恐ろしい。こんな話を外でされてることも知らずに、と夫連中に同情を禁じ得ない。そんな感想を表立って漏らすこともなく無表情にスルーしていると、先ほどの4.聞いているのかいないのかわからないが、話のツマとしてたまに話題に挙げられる存在として認定されるわけだ。ハマさん、女子会にいても全然違和感ないよねー。女子力高―い! ここで彼女が言いたいことは、「おう、おめえ、男のくせに余計なこと言わないじゃねーか。よしよし、無害認定してやるよ」くらいのものだろう。この場合の女子力とはスルーする能力、スルー力(りょく)のことだと言ってもいい。
 
最後に思い当たるのは、健康に関することだ。周囲の同年代の(男の)友人を見渡すと、40を越えた頃から個人差が目立つようになってきた。肌の色つや、シミ、姿勢など、加齢に伴って生活態度が見た目に出てしまうのは残念なものだ。たまにダイエットしていることや凝り性が昂じて海外から抗酸化サプリメントなどを取り寄せて飲んでいる話をすると、やはり女子力高い、となる。
 
そもそも、中学から入った吹奏楽部も基本的に女子のものであった。それについては学校にもよるであろうから一概には言えないが、思春期の男女が緩やかな異性同士の友好関係を模索するにはふさわしい場所だったのかもしれない。そして、その環境は音楽を続けた10年間続くことになる。そんな中、内向的な自分の性格は、自然に振る舞っていても女性から違和感なく受け入れられているのかも知れない。あるいは、付き合いやすい異性として歓迎してくれているのだと思うことにした。
 
それにしても、女性の中に紛れ込んで観察していると、みなさん思いの外オッサン力が高い。
オッサン力高いね、なんて言ってもガハハと笑って済ませてくれるだろうか?
 
 
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2018-03-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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