【あこがれの別荘が、車に引かれてやってくる?】
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記事:釣部人裕 (ライティング・ゼミ平日コース)
「なんだ? あれは? ログハウス?」
3月2日、秩父線の波久礼駅(埼玉県寄居)に降り立った時である。
駅の正面から荒川に架る橋の上から、一台の白いランドクルーザーに引かれて、小さなログハウスがこちらに向かってきて、目の前の道路を過ぎて行ったのだ。
日本の自然を感じてもらう外国人向けの民泊『エルモット』を経営する友人の家を訪問した。その時の出来事である。
生まれて初めて見た光景だった。
キャンプ場や都内の駐車場で、キャンピングカーも見たことはある。
アメリカでは、トレーラーハウスは見たことはある。
箱根で、ログハウスに泊まったこともあった。
そのどれでもなかった。
直感的に思った。
これは、建築許可はいらないし、固定式として庭などに設置できる。さらに、自由に人力で移動できるので、季節によって、向きを変えることもできる。事務所として使える。許可さえもらえれば、どこかの庭などに置ける。トレーラーに載せれば移動式ログハウスとしてキャンプなどにも使える。
事務所に使いたい! 1年か2年分の家賃で購入できるんじゃないのか?!
「これに使いたい。究極、住みたい!」
そういう衝動に駆られた。
友人の家で、夜、食事をしながら、たわいもない会話をしていた。
「ログハウスが車に引かれて動いていた?」と、見たことを話した。
「タイニーハウスのことかなー?」
「知っているの?」
「それなら、友だちが作っている、動くログハウスだよ。橋の向こうに、工房があるから、工房からどこかに移動していたんじゃない?!」
私は、急にテンションが上がった。
「ねぇ。あれをこの家の庭に入れようよ。俺たち、月に1回は、泊まりにくるよ」
知人もその希望はあったようで、日程を調整して、一緒に会うことになった。
3月25日、約束の日が来た。タイニーログハウスを発案・製造している高橋昭夫さんに会うため、秩父に向かった。今は、秩父でログハスを建てていて、その現場にいると言うのだ。
雲一つない空、山を越え、3分咲きの桜の咲く道を通り、現場に着いた。
「ログハウスが車に引かれて動いている?」
私が1か月前に一瞬見た、建物が目の前に動かずに止まっていた。
近づくと、アメリカでの山火事のニュースで見るオレンジと黒を基調にした消防服のような服を着て、髭を生やした男性が立っていた。このログハウスを開発したヤングリーブス・ログ・ホームの代表の高橋昭夫氏だった。
いかにも、山男という風貌だった。
なんでも、この作業服は、作業時は全員に必須にしている。チェンソーを使うため、万一のことがあっても、体を切らないために、チェンソーでも切れない特殊な繊維の服をきるように徹底しているとのことだった。
彼は、埼玉県草加市で小学校の教員をした後、アメリカ、コロラド州デンバーの日本人学校で教員を務める。
その後、ログビルダーを志し片道切符を握りしめ、カナダへ。そこで、ログハウス設計の世界第一人者と言われるデル・ラダムスキー氏に学び、平成元年帰国。埼玉県寄居町の山林を自ら開拓しヤングリーブス・ログ・ホームを設立したそうだ。
以降、ログビルダーとして「1人で創れるログハウス」「軸組み工法のログハウス」「埼玉県産材を使ったログハウス」「合板を一切使わない健康ログハウス」などを提案しているそうだ。本場カナダで、丸太の流れ(ねじれの向き)をみっちり身につけた髙橋が創るログハウスは隙間ができないことで有名でメディアにも多数登場している。
「タイニーログハウス」は小さなログハウスという意味で、小さな家に沢山の贅沢をかけて木の良さを活かした非日常空間を楽しんでもらおうと思い、開発を始めたそうだ。
目の前にある、タイニーログハウスは小さかった。
しかし、中に入ると、その空間は、意外と大きく感じる。広さにして、2坪程度で、ロフトがあった。ロフトは、ダブルベットが入る程度の大きさだ。
木の板、木のかおり、窓から入る光、すべてが私の魂を喜ばせる。
電気もあり台所、トイレ、机と椅子、クーラーも設置できるという。
私の場合は、事務所として、最高の環境になる。
タイニーハウスに居住することは、モノを置くスペースも限られるため、モノを最低限まで少なくした、シンプルなライフスタイルになる。居住するなら、1棟では足りない。3棟作って、食事、仕事、生活用と分け、それぞれ玄関を内側に向ける。
私の妄想が勝手にどんどん拡がる。
あこがれの別荘が、車に引かれてやってくる?!
8年分の家賃で、購入できる金額だろう。そんな計算もしてしまった。
彼と私は、話が弾んだ。
タイニーログハウスは総重量750㎏未満なので、けん引免許なしで普通免許で引っぱることができ、間取りは自由設計でキッチン、トイレ、薪ストーブなどを置くこともできる。リビング専用タイニーログハウス、ジャグジー専用タイニーログハウス、非日常のタイニーログハウスは、いろいろ対応をできるように設計・施工できるという。
自分で設計して、自分で作って、そこで、生活や仕事をしたい!
頑張れば、手に届きそうな、最高の贅沢だ。
来月また、彼に会いに行こう。いや、まだ見ぬ、私のタイニーログハウスに会いに行こう!
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