人は、自信がある人間と、自信のない人間の2種類しかない。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:夏目則子(ライティング・ゼミ平日コース)
裸の王様と、臆病者はどっちが幸せなのか?
そんなことばかり考えていた。ずっと私の結論は、裸の王様の方が幸せというものだった。なぜなら、王様は自分が裸であることを知らず、自分は立派な服を身に着けて輝いていると信じている。幸福とは、事実ではなく、自分自身がどう感じているかがすべてなのだ。私は、裸の王様でいることができる自信を渇望していた。
ずっと、自分に自信がなかった。人の目ばかり気になっていた。
誰かの視線を感じると、悪口を言われているのではと思った。実際には人はそれほど私に関心など持っていなかったはずなのに。
自分の本音なんて、ほとんど口にしたことがなかった。周りの人が求めることを話すようにしていた。
瞑想、アファメーション、自己啓発本、パワーストーン……、
自信が持てるようになるかもしれないと思うものは、どんなことでもやってみた。
パワースポットにも行ったし、占いにも頼った。
今ならわかる。そんなことしたって、自信が持てるようになれるわけではないことを。でも、若い頃の私には、何かにすがらなければ、不安になる自分の気持ちを保つことができなかったのだ。
優雅な海外旅行をする友達への対抗意識からか、大学4年の春、私は1ヵ月かけてヨーロッパを1人で横断した。初めての海外旅行だった。アルバイトで貯めた最低限のお金を持ち、ロンドンまで3回乗り継ぎする飛行機で旅立った。旅先では気の向くままに行き当たりばったりで電車に乗り、着いた街で宿を探すような旅だった。インターネットも携帯電話もない時代、バックパッカーのバイブル『地球の歩き方』だけが頼りだった。安宿に泊まり、時には2等の深夜列車に揺られ、振り返ると危険なこともあったが、大きなトラブルもなく、熱い達成感を胸に帰国した。見知らぬ土地、異国の人の中では、普段の自信のない自分ではなかった。素の自分でいられることが心地よかった。
大学の卒業旅行は、インドへの一人旅だった。今ほど情報のない時代。私は遺書を書いてから旅立った。友人が行かないようなところに行きたい、ただそれだけでインドを旅先に選んだ。1泊500円程度の宿に泊まるから、水しか出ないシャワーで体を洗い、臭いの強い湿った布団で夜をしのいだ。仕方なくトイレに行くときは、いつも涙目になった。インドへの旅は、ただ辛かった。3週間の旅だったが、着いたその日から帰る日だけを待ちわびだ。それでもインドの人は優しく、たまにインド人とのハーフに間違われるルックスのせいか、インド男性にはとにかくモテたから、何とか3週間を耐え抜けた。帰国した私は、この旅をやり切った自分を誇らしく思った。
バンコク、ニューヨーク、ジャマイカ……、一人旅を重ねるごとに私は強くなっていった。
働きながら子育てをする人生の一人旅が、私をさらに強くしていった。
私はもう、周りの目を気にすることはやめた。自分の人生を自分らしく生きるだけのたくましさを身につけたのだ。
自分に対して自信が持てるようになったわけではない。相変わらず、自分の外見にも、能力にも、性格にも、自信がないままでいる。けれど生きていく上において、自信というものがそれほど必要ではなくなったのだ。
人は、自信がある人間と、自信がない人間の2種類しかない。
どんなに努力しても、自信がない人間が自信を持つようになることは難しい。いや不可能に近いかもしれない。
けれど、「自分はできる」と思うことはできる。
それを『自己効力感』と言うらしい。
『自己肯定感』と『自己効力感』は別のものであり、前者を後天的に身に着けるのは難しいが、後者は自分次第でいくらでも身に着けることができるのだ。
私は一人旅を通して、あるいは人生の一人旅を通して、『自己効力感』を手に入れていったのだ。
高校時代のイチロー少年は、素振りを、365日、どんなことがあろうと休むことなくやっていたらしい。
「誰もできないことをずっとやってきたから、打てるはずだ」
と彼は考えていたらしい。
一緒しては怒られそうだが、同じような感覚を感じたことがある。10年前、海外イベントでの英語でのセミナーのスピーカーをやるように打診されたときのことだ。勉強中であったとはいえまだあまり英語が話せなかった上に、一緒にスピーカーをやる2人は帰国子女とハーフだったにもかかわらず、やりたい気持ちだけで引き受けてしまった。実際には簡単に何とかなるものではなく、準備に費やした2ヵ月間、これ以上はできないというほど、スピーチの練習をした。最後まで英語は完璧にはならないまま当日を迎えたが、やれるだけやったから、悔いなかった。だから、怖くはなかった。これだけやったから、結果はどうなっても仕方ない。結果は、たくさんの喝采を浴び、英語が流暢な2人よりも心に響くスピーチだったと、たくさんの人から誉め言葉をもらった。
自信満々の人生だったら楽だろうな、今は思わなくはない。けれど、は自信がない自分で良かったとも思っている。臆病者だったからこそ、自分でつかみ取るための努力をし、自分を成長させることができる。裸の王様は、やはり恥ずかしいのだ。
***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
http://tenro-in.com/zemi/47691
天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら
天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
【天狼院書店へのお問い合わせ】
【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。