28歳にして“かわいい”に振り回されていることを知った日
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:たけしま まりは(ライティング・ゼミ平日コース)
ふええぇ!?!?
つい雄叫びをあげてしまった。
なぜなら、さっき届いた一通のメールを見てしまったからだ。
「◯◯カード ご請求金額のご案内」
おぉ、もうそんな時期か。
いくらぐらい使ったっけなぁ〜だいたいウン万円くらいかなぁ〜と思いつつ、軽い気持ちでメールを開く。
そこには、驚愕の金額が書いてあった。
〔ご請求金額〕
232,438円(確定)
ちなみにわたしは28歳独身、ごく普通の会社員である。
ふええぇ!?!?
えっ、わたし、そんなに使ってた!?
毎日お昼はお弁当を作って持って行ってるのに!?
高級ブランドのバッグとか、買ってないのに!?
まさか、スキミングされてるとか……?
メールに記載されたURLから「請求明細」をすぐさま確認する。
あぁ、こないだちょっと奮発して豪華なお店に行ったわ……。
そうそう、親に誕生日プレゼントもあげたんだった……。
あぁ、あれも、これも買ったんだった……。
全部心当たりのあるものだった。ひとつひとつの買い物は少額だが、「チリも積もれば山となる」を体現した請求額だった。
スキミング被害はなかったので良かったが、「確定」の文字が憎らしかった。
わたしはお買い物が好きだ。
洋服でも日用品でも、新しいものを手に入れると、気分が上がる。
「消費する」ということがもっとも手っ取り早いストレス発散法ということもあるが、わたしの場合はただ消費するのではなく、それが掘り出し物であればなお良い。
わたしにとってお買い物は、「いかに掘り出し物を見つけるかゲーム」なのだ。
ゲームのルールは簡単。
安くて質の良い(かわいい)ものを、なるべく時間をかけずに手に入れること。
「あ! 今日特売デーじゃん! もうひとつ買っとこ」
「インスタグラマーがおすすめしてるブランド、けっこう安いしデザインがかわいいなぁ〜誰ともかぶらなそうだし、買っちゃお」
掘り出し物を見つけることで、「賢くお金を使えたわたし」になれた! と思えて気分が上がる。
どんなゲームでもやり終わった時にスコアや経験値が加算されるが、「お買い物ゲーム」の場合は「情報通なわたし」「センスあるわたし」の経験値が加算される。
経験値のたまものがまわりから言われる「それどこで買ったの〜?」であり、そのときは「きたきた!」と思って鼻高々な気分になるのだ。
わたしは10代後半から「お買い物ゲーム」にハマり続けている。
なぜなら、おしゃれをすることが大好きだからだ。
自分が心から“かわいい”と思ったものを身につけると力が湧く。
自分に自信が持てて、自分を好きになれるからだ。
けれど、困ったことに世の中の“かわいい”は、結構いいかげんだ。
女性ファッション市場なら、小花柄のワンピースからスパンコールぎっしりのタイトスカートまで全部“かわいい”の範疇に入る。
わたしの琴線に触れる“かわいい”を探すために丸一日デパートをうろうろして収穫ゼロ、なんてことは日常茶飯事だ。
最近、30代を目前にしてなにかと忙しくなって、“かわいい”に振り回されるのに疲れてしまった。
そして収穫がないときの「時間を使ってしまった罪悪感」にも耐えられなくなって、最近はもっぱらネットショッピングを利用している。
その結果が冒頭の23万円だ。
朝目覚めたら、とりあえずスマホを手に取りSNSをチェックする。
ひととおりチェックを終えたら、とりあえずファッション通販サイトを開く。
いや、別に、あのスカートが欲しい! とか、あのバッグが欲しい! とかいう具体的な物欲はないのだけれど、なんか良いのないかな〜、って思って。
ふわ〜っと画面を眺めているうちに気がついたら30分は経っていて、時の流れにハッとする。
これが日課になっていた。
驚愕の金額を目にしてわたしはようやく「いまだに“かわいい”に振り回されている……!」と気付いたのだ。
早急に、なんとかしないと、破産する。
冗談じゃなくそう思った。
わたしはなぜこんなに使ってしまったのだろう……。
たしか、買ったもののほとんどは「自己投資だ!」と思っていたはずだ。
「この上質なニットは、30代を迎えるわたしが今持っておいて損はない!」
「少し背伸びしたお店に行って、美食は何かを知るのも大切だ!」
「孝行のしたい時分に親はなし、親が元気なうちに大切にしなきゃ!」
どれも、りっぱな理由だ。
でも、買ったものすべてが「りっぱな理由」ではない。
よく考えれば「これあったら便利かも~」みたいなふわふわした理由で買ったものがほとんどだった。
ああ、なんてわたしはバカなんだろう。
「お買い物ゲーム」の目的は、「賢く手に入れたもので、豊かな暮らしをする」ことなのに。いつのまにかゲーム自体にハマって、“かわいい”に振り回されている。
何のために“かわいい”が必要なのか。
初対面の人に、身だしなみがきちんとしていると思われたいから。
デートで異性に良く見られたいから。
仕事で、細かいところまで気をつけている人だと思われたいから。
このように明確に目的になっているものと、「ただ気分が上がるから」というあいまいなものがある。
このバランスを整えないと、わたしはいつまでも“かわいい”に振り回されるばかりだ。
わたしは28歳にして、ようやくこのことに気付いたのだ。
わたしより年上の先輩方は、どうか「あんたバカねぇ~!」と笑って欲しい。
そしてわたしより年下の後輩たちは、どうかわたしのおバカな話を教訓にして欲しい。
チリも積もれば山となる。
“かわいい”に振り回されては意味がない。
かわいくなってどうしたいのかが重要だ。
一通のメールは、わたしのこれからの生き方まで考えさせるものだった。
来たるべき30代に向けて、わたしは「豊かな暮らし」ができる女を目指すのだ。
23万円は、その勉強代だと思うことにする。ああ反省。
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