やはり、最近の若者は真面目だなぁと改めて感心した《プロフェッショナル・ゼミ》
*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:山田THX将治(プロフェショナル・ゼミ)
先々週の土曜日、私は早目に天狼院へ向かった。このところ、雑誌『READING LIFE』編集部会議出席の為、私は毎週土曜日に天狼院へ出向いている。同時に、毎週末が、忙殺されている。雑誌編集部の進捗具合が、甚だ進んでいないからだ。
しかも、土曜日は私にとって、23:59に記事締め切りが毎週あるのだ。その週の土曜日分記事は、未だ書き上がっておらず、私は天狼院で書き終え様と編集部の集合が、19:30にもかかわらず16:00過ぎには店内に入っていた。
ちゃんと自宅を出る前に
「今日は編集会議まで、何かイベント有るかな?」
電話で確かめることを忘れなかった。
「はい、何もイベントは開催されません」
対応してくれた、若いスタッフは明るい声で明瞭に返答してくれた。これで安心して、天狼院へ行くことが出来る。閉店まで心置きなく記事を書くことが出来るし、店内ならばWi-Fiのことを気にせず、記事が投稿出来る。
私は、完全に安心し切っていた。
私が天狼院に着くと、そこには既に、川代紗生さんが居た。彼女とは長い付き合いなので、表情が一瞬困惑したのを見て取れた。
「山田さん、どうしたの? 早いですね」
「編集部まで、記事を書いていようと思ってね。それまでイベント無いんでしょ?」
「これからゼミですよ。ライティング・ゼミのライトコース」
「じゃ、邪魔だね。出直すよ」
「いえいえ、第4講だからそれほど混まないと思うので、カウンターで良ければどうぞ」
イベントが無いとアルバイトスタッフから言われたことは、後にその子が何か負い目を持ってはマズイと思い、川代さんには告げずにおいた。そして、他所で記事を書くくらいなら、例え珈琲一杯とはいえ天狼院の売り上げに貢献しようとも考え、川代さんの御申し出に甘えることにした。
多分、電話で私に対応してくれたスタッフは、私の言葉を正直に聞いてくれたのであろう。私は電話で、
「イベントは有りますか?」
と聞いたのだ。実際に、ゼミは開催されるものの、‘ファナティック読書会’や‘フォト部’といった“イベント”は開催されないのだ。これは、私の聞き方が悪かったか、言葉足らずだったのだ。そう、自分に言い聞かせることにした。その方が、空気を悪くしないと思ったからだ。
元々、私の様な年長の者と現代の若者では使う言語も違うし、気を遣わなければ‘会話’だって成り立たないのが普通だろう。私の若い頃だって、年長者との会話は成り立ち辛かったし、その前に、年長者等と話しなんてしたくはなかった。
だから、年長となった今、若者には気を遣った方が無難だ。
これは、経験則だ。
これからゼミが始まるということは、生の受講生と同じ空間に居ることが出来るので、受講生の緊張感が、これから記事を書こうとする私には、良い集中力を与えてくれるのではとも考えた。実際、店内は普段のフリーな雑談状態とは違い、静寂の中に講師の川代さんとスタッフの木村保絵さん、そして通信で結ばれた福岡天狼院の山本海鈴さんの声が響くだけだった。
これは好都合意だと、私は思った。
徐々に集まったライティング・ゼミ ライトコースの受講生に、
「受講生の方ですか?」と聞かれた。
それはそうだろう、見慣れない図体がデカい初老のオジサンが、窓際でPCを開いていたのだから、そう見えても不思議が無い筈だ。
「いえ、別のコースを受講しています。今日はここで、記事を書きたいと思いまして。御邪魔して、申し訳無い」
質問して来た、近くの席に座った受講生に断りを入れ、私はキーボードを打ち始めた。ただ、気を付けなければならない事があった。私には癖があり、キーボードを打ちながらブツブツと‘独り言’を言ってしまわない様に機と引き締めた。それと、暫くすると‘ニコチン切れ’になるスモーカーの私は、集中力が切れると、しばしば徘徊してしまう。これも講義中なので、厳禁な行為だ。
記事は既に、クライマックスは書き終えていて、残すは着地部分だけだったので、時間的には十分な余裕が有った。いや、有る筈だった。
しかし人間は、余裕が有ると思うと必要以上に集中力が続かなくなるものだ。特に私の様な、性根が‘怠け者’の人間は特にそうなりやすい傾向にある。
ついつい、ライティング・ゼミの講義に耳を傾けてしまった。これには理由も有り、私が受けたライティング・ゼミの講義は、三浦店主から受けたものであり、その場での講義は、川代さん・木村さんというスタッフの講義だった。当然、私が初めて聞くので「同じ内容でも、女性が話すと柔らかくなるものだなぁ」等と妙な感心をしてしまった。
感心をすると、書いている記事に集中しなければならない筈が、ついつい、講義に聞き耳を立ててしまうのだった。何故なら、私も聞いたことが有る講義内容だが、川代さんと木村さんが、自分の受講時を思い出すかの様に、実に丁寧に受講生に気を遣い、言葉を選ぶ様に話していた。そんな二人を見ながら私は、
「やはり、最近の若者は私達世代と違って、実に真面目で他人(ひと)に気を遣うものだなぁ」
と、感心することしきりだった。
講義も中盤に入り、私の記事も何とか形になりそうな‘光’が見え始めた時、川代さんが興味深い発言をした。前後の話は聞き逃したが
「金曜日の池袋駅は本当にヤバいですね。そこらかしこで、カップルがケンカしているんですよ。昨日も夜10時過ぎに池袋駅の地下道を通ったら、5・6組のカップルが険悪そうでした。中には、女性が男性に掴み掛りながら号泣しているカップルもいましたし」
すると木村さんが
「カップルにとって、金曜日の池袋駅は鬼門ですね。私もよく見掛けます」
と重ねて発言した。
‘これは何の話なんだ?’と疑問に思ったが、二人の話を聞き進めていくと、記事に出来る‘ネタ’は、自分の廻りにいくらでも転がっているという例を示している様だった。これも以前、三浦店主から聞いた話と同じだ。二人とも、上手い例を引き合いに出すものだなぁと、私は感心した。
それにしても、最近の若者の気遣いは大したものだ。
川代さん・木村さんの言う通りだとしたら、恋人との別れ話をするのにわざわざ金曜日を選んでいるのだいところだ。金曜日に泣こうが喚こうが、週明けまで丸二日の‘立ち直り’の猶予が有るということだ。立ち直るまで行かないまでも、月曜日迄なら何とか会社や学校に行こうという気力が戻るかもしれない。
私達の世代なら、週末のデート時間を兎に角大切にし、例え最悪の結果になろうとも、週明けの会社や学校等‘知った事では無い’と、タカを括って生きていたものだ。
これは明らかに、‘公私’の‘私’を‘公’より優先していたことの証だ。
川代さん・木村さんの話からすると、金曜日に別れ話をする現代の若者は、週末の‘私’を犠牲にしても‘公’への悪影響を最小限にしていると思われてならないからだ。多分これは、意識しての結果ではなく、習慣として備わっているのだろう。
我々の様な、無責任な世代と違い現代の若者は総じて真面目な印象だ。むしろ‘生真面目’とういってもいいくらいに感じるところがる。
例えば、天狼院のスタッフ等を拝見すると、実によく大学の授業に出ているらしい。聞いた話だが最近の大学では、年に5回欠席すると単位が貰えないそうだ。我々の学生時代は、年に5回も授業に出ると十分以上に珍しがられた。誘いを断る口実に「授業有るから」なんて言おうものなら、
「お前!授業出るなんて暇な奴だなぁ」
等という不謹慎極まりない答えが返ってきたものだ。実際、授業をする側も教授・講師陣も、その辺りを十分承知していて、語学や体育を除いて出席にうるさい授業なんてなかった。
これは見方を変えると、教授・講師に‘暇人’が多く‘手を抜く授業’が多かった記憶が有る。暇人なので、余暇に時間を使いたかったのだろう。
それに、実社会に出たら、授業で学ぶことなんかほとんど役に立たないことを、お互いにコンセンサスを得ていたといっても過言ではないだろう。それ程までに、‘緩い時代’だったとも言い換えることが出来るだろう。
一方、現代の若者は、きちんと大学の授業に出ているらしい。しかも、天狼院の三浦店主が、大学の非常勤講師を務めている様に、教授・講師陣も多忙を極めている方が多いそうだ。そんな訳で、授業をする方も受ける側も無駄なことをしていないと考えられなくもない。双方共に、‘生真面目’で‘合理的’だ。今風に言うと、とても“コスパ”が良いということだろう。
第一、 我々の様な‘いい加減’な世代には、大学に対してコスト意識なんて感
じたことはなかった。当然の様に、授業の出席率が下がる一方だった訳だ。その結果として、我々世代は、実に‘無責任’な世代としてとらえられても仕方が無いだろう。
そしてこれは確実に言えることだが、我々世代は‘公’の見識が無いばかりか、‘公性’はもとより、根本の“公共性”が元々育たなかったということだ。
そして、我々世代を反面教師として育ったと思われる現代の若者は、‘私’を押し殺して‘公’を大切にしているのではなく、高い‘公共性’を持つことが最も重要だと感じたのかもしれない。
だから、実に‘真面目’で、気遣いの出来る‘好ましい人間’に育ったのかもしれない。
我々の‘無責任’も、まんざら無駄ではなかったということか。
そして、天狼院で若いスタッフと知り合い、若者独特の‘気遣い’に触れることが出来た私は、本当にラッキーだったと思わずにはいられない。
いつもありがとうございます。
そして、ゼミ中に書いていた記事は、無事に書き上がり、三浦店主の許可も頂き、Webに掲載されました。
改めて礼を述べたいと存じます。
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