おっさんが教えてくれたこと
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:廣渡一子(チーム天狼院)
「春田さんのことなんか、好きじゃない」
この一言を聞いた瞬間、全私の60兆個の細胞が泣いた。ああ、牧くんに幸せになってほしい。誰かの幸せを願うなんて、とても綺麗ごとに思える。元恋人と別れた日、改札前で最後に言った「今までありがとう。幸せになってね」なんて詭弁だし。でも、今の私は心からそう思っている。牧くんを幸せにしてあげたい。何があっても私の一生かけて彼の笑顔を守りたい、と。
私はテレビドラマとボーイズラブをこよなく愛する20歳女性である。
テレビドラマについてはもうとにかく大好きで、その愛は年々大きくなっていってるところだ。今季視聴しているドラマは10本で、1本のドラマを3回ずつ観ている。そのおかげで、私の曜日感覚は最強だ。それに、日常生活がどんなに平坦で無味無臭だったとしても、ドラマがあるだけで毎日スパイシーだし感情は激しくアップダウンする。こんなに恩恵があるっていうのに、ドラマは無料だ。すごい。本当にドラマはすごい。狂おしいほど大好きだ。
私はいわゆる腐女子である。腐ってるなんて失礼な、と思うけど骨の髄まで腐っていることは認める。
好きになったのは高校二年の時だから、腐女子歴はかれこれ五年目に突入している。大学に入ってから腐女子仲間ができて、私の活動はとっても豊かになった。ああ、やっぱり同じものを好きな人がいるって最高。共有できるって最高。先日も、その友達の家にて腐女子会が開催された。この会には私たちは本気で挑んでいる。1ヶ月前から論点や討論したいテーマを決定し、各自意見やパワポのスライドをまとめるし、それぞれが自作のボーイズラブ小説を書いてくるという課題もある。夜の22時ごろからスタートした会が終了したのは朝5時だった。その間、ずっとボーイズラブの話をしているのだ。20歳の女子が三人集まり、シラフで、真剣に語らった。こんなに密な時間の過ごし方をしている大学生って他にいるんだろうか? この会の終着点はいつも決まって同じで、「なぜ我々はボーイズラブが好きなのか」というところに行き着く。そしてこの問いに答えはない。それでも好きなものは好きだから好きでい続けるし、彼らの恋を全力で応援することを誓うのだ。
そんな私の大好物、テレビドラマとボーイズラブがついに一つになったのだ。それが、テレビ朝日で毎週土曜日放送のナイトドラマ、「おっさんずラブ」。主演・ヒロイン・ライバルが全て男、しかも不動産会社で働くサラリーマンたち。正真正銘のボーイズラブ、いやおっさんずラブだ。ドラマがボーイズラブに手を出すことはたまにある。でもそれはちょっとした脇役がオネエキャラであるとかいじりのようなことが多くて、彼らの恋を本気で応援している私からすると、ボーイズラブのそういった使われ方は悲しい。だから、『おっさんずラブ』の第一話を見たときは衝撃的だった。こんなに、ボーイズラブを真っ正面から描いているピュアな恋愛ドラマは初めてだった。公式さんありがとうございます、という感謝と尊敬の気持ちが止まらない。こんな素晴らしい物を世に送り出してくれるなんて、「ああ、生きててよかったな」と毎週思っているし、脚本家もプロデューサーも監督も全員腐女子なんじゃないかと思う。
ボーイズたちのピュアな恋心、ただ純粋に好きだという気持ちが大切に大切に表現されていて、きっと腐女子だけではなく日本中の視聴者の心を掴んでいる。
そろそろ物語も終盤で、男同士で付き合っていることをカミングアウトするのか・相手は自分と一緒にいても”普通”の幸せを手にいられないのではないか・相手を心から想っているからこそ一緒にいるのが辛いというテーマがやってくる。ボーイズラブ界隈ではあるあるのテーマ、永遠のテーマ。
それで私の涙腺をぶっ壊したのが、もともとゲイの牧くん(26)が恋人である春田(33)のことを想って、自分の気持ちに嘘をつくシーン。牧くんはぼろぼろと泣いていて、すごく苦しそうな表情プラス「春田さんのことなんか、好きじゃない」というセリフだ。
好きな気持ちに嘘をついて、好きな人のことを好きだと言えないなんて絶対に苦しい。普通とか常識とかそんなことにとらわれて、自分らしさを出せないのはなぜなんだろう。同性を好きになってもいいし、そのことに罪悪感を感じる必要はないのに。
そもそも普通なんてない。
普通の女の子だったらイケメン王子様が出てくる少女漫画が好きだろうとか、料理とかメイクが好きだとか。そんなだれかが決めた普通は絶対じゃない。
わたしだって好きなものを好きだって言いたい。本当に好きだから、言いたいのだ。わたしが発信することで、仲間に会えるかもしれない。そうしたらまた好きが増えるし広がっていく。
ボーイズラブが好きだということ、腐女子だということを文章にしたのは初めてだ。
自分の好きなものに素直になることをおっさんが教えてくれた。
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