その「かわいい」ちょっと待った
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:宮地愛(チーム天狼院)
「ちょーかわいい~」
本当に思っていますか?
昨今、かわいいものがあふれていますね。
テレビや雑誌で見かけるキラキラな芸能人たち。ペットショップにいる小さな動物。おしゃれなカフェのパフェやパンケーキ。最近増えてきているゆるキャラ。数えればきりがありません。
でもそれ、本当にかわいいと思っていますか?
私がまだ、高校生のときでした。
夏の暑さがまだ続く9月。文化祭に向けていろいろな準備をしている時期でした。
文化祭も目前に迫った日の部活で、こんなことが起こりました。
その日はそれぞれのクラスで、文化祭のクラスTシャツをもらってきた日でした。違うクラスの同期とTシャツを見合わせて、そっちのクラスもかわいいねー、などと言っていました。
その時、ある同期男子がこんな話をしていました。
「俺のクラスのTシャツ微妙だから着るの嫌だわ」
その男子のクラスのTシャツは、クラス担任の似顔絵がゆるく描かれており、丸みのあるフォントで出し物の名前が書いてあるというものでした。
同期女子の間では、そのクラスのTシャツはかわいい、センスあるなどと話していたため、同期男子の言葉を聞いて、なんで? かわいいのに、という声が上がりました。
思い返せば、そんな経験を多くしてきました。
小学校のときにお店にあった謎にアメリカンな文房具のイラスト入りのノートをかわいいと言ったこと。
えー、かわいいの? という友人に対して、最近はこういうのが流行ってるんだよ、と言ったこと。
ぶさかわいいが流行ったころに、ちょっとぶさいくな猫の雑貨にはまったこと。
それをかわいいという私に首をかしげる母親に対してお母さんにはわからないよ、と言ったこと。
もしかしなくても私、かわいいと思っているんじゃなくて、かわいいって言いたいだけじゃない?
そう気づいたのは、最近のことでした。
高校の友人と買い物に行ったときのことでした。
洋服を見ていて、これめっちゃフラミンゴみたいじゃん、なんでここだけファーがついてるの、などと大笑いしながら買い物をしていました。
その数日後のことです。
いやこれ、買う人いるの? と、高校の友人と大笑いしていた服を、大学の友人が着ていたのです。
よく見たら、似たような服を着ている人と、大学のキャンパスで何度もすれ違いました。
新しく買ったの! この服かわいくない? という友人に、苦笑いしか返せなかったことがありました。
この時でした。
自分の琴線に触れなくても、正直まったくかわいくないわと思ったものでも、みんながかわいいと言っているから言っておこう。
そうやって、無数のかわいいが「かわいい」と認められて、いつのまにか、かわいいがあふれてしまったのだろう、そう気づきました。
よく、女子の言う「かわいい」って別にかわいくないこと多くない? と、男子から言われることがありました。
その時は、こいつわかってねぇなと思っていました。
でも、そうじゃなくて。
本当にかわいいと思っているものは、もちろんたくさんあります。
だけど、みんながかわいいって言っているなら、なんとなくそうなのかな、とか。
正直かわいくないけど、かわいいって思えないってちょっと遅れてるよね、とか。
そんな気持ちを持ちながら、「かわいい」と口にすることも、実はあるんです。
女子は無意識にマウンティングをする生き物だと、私は思っています。
時には、みんながかわいいというものを肯定して、自分は流行りのわからないようなカーストの低い人間ではありません、とアピールしたり。
時には、本当にかわいいのか?と思うようなものをかわいいと言って、「わかってる自分」を演出したり。
時には、みんながかわいいと言っているもののかわいさがわからない人をみて、優越感に浸ったり。
でも、それって疲れません?
自分のなかの価値観のひとつである「かわいい」が、いつのまにか他人と差をつけたり、自分をよく見せるための武器になっていませんか?
「かわいい」って、自分にとって特別な、きゅんとしたりわくわくしたりするものだと思うんです。自分の心を豊かにするはずの「かわいい」で、自分を貧しくしていくなんて、もったいないです。
かわいいが飽和している今だからこその、「かわいい」でのマウンティング。だけどたまには、自分が本当にかわいいと思ったものを、素直にかわいいと言いませんか。
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