プロフェッショナル・ゼミ

世界を広げてくれたラフロイグ30年《プロフェッショナル・ゼミ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:島田 弘(プロフェッショナル・ゼミ)

「ラフロイグ30年ものがあったら、絶対に飲んでおいた方がいいよ」と尊敬するある人が教えてくれた。

「わかりました。ありがとうございます。飲んでみます」と答えたのを覚えている。

でも、本当はわかっていなかった。なぜなら、そもそもラフロイグというものが何なのかわかっていないのだ。「30年もの」、「飲む」というワードから、飲み物であること、それが年代ものであることは想像できた。

ワイン、ウイスキー、ブランデーあたりだろうか。ネットで調べてみると、ウイスキーだとわかった。すでに製造が中止となっており、市場に出回っているもので終わり。
近所の酒屋、インターネットでラフロイグ30年と検索して、ヒットした酒屋を一番上から順に見て行った。どこも「在庫切れ」の表示。やっぱり手に入らないみたいだ。

「そうだヤフオクがあるぞ」と思い、早速見て驚いた。

ヤフオクで取引されている金額。当時一番安い落札額が280,000円。
定価は確か4万円くらいだったと思う。しかもその金額で落札されていた。

それほどまでに好きな人がいるウイスキー。

ウイスキーなんてほとんど飲んだことがないし、
美味しいとも思ったことがない私であったが、
「飲みたい。飲めなくなる前に飲んでみたい」
という思いが強くなって行った。

私はほとんどお酒を飲まない。家で飲むことは年に2、3回だろうか。
セミナーを開催したり、参加したりすると少しは飲むことがある。
生グレープフルーツサワーとか、薄めの芋焼酎のお湯割りくらい。

そんな私が、このウイスキーの飲めるお店を探し始めた。ところが、ラフロイグ10年、15年ものが飲めるお店は比較的簡単に見つかったのだが、30年ものが飲めるお店を見つけることができなかった。

2010年の9月、大阪にある某ホテルに宿泊する機会があった。その時、理由はわからないが、ホテルのBARに行きたい気持ちになった。
これまでの人生でBARには2回しか訪れたことがなく、その2回ともこのホテルのBAR。
過去2回は、「弱いので、ノンアルなんだけどそれっぽいカクテルを作ってください」とお願いしていた。

3回目のこの日、これまでとは違って運ばれてきたメニューをパラパラとめくって見たいた。マティーニが200種類以上あったり、様々なカクテルが載っていた。

次のページをめくったとき、そこに見つけた文字が「ラフロイグ30年」。

ついに見つけたのだ。やっと出会えた!

BARの方に確認すると、そのウイスキーのボトルを目の前に持ってきてくれた。

価格は1ショット8,000円。もちろん注文をした。

注文する際に、このお酒を探していて、探した理由も伝え、ウヰスキーどころかお酒に詳しくないことも伝えた上で、オススメの飲み方を教えてもらった。

「ストレートで飲んでください」

私の目の前に、ラフロイグ30年が運ばれてきた。
小さいグラスに、2センチくらい注がれていた。
正直なところ、「これっぽっちで8,000円なのかよ」と思った。

ストレートで飲むのは人生初。一口舐めてみた。

「えっ、美味い。ウイスキーってこんなに美味いんですね」と運んできてくれた人に伝えた。

「お口に合いましたか。よかったです。シュガーも合いますよ」

「シュガー?砂糖ですか?」

私の聞き間違え。

「シガー」だった。

シガーって葉巻?タバコが大嫌いな私にシガーなんてあり得ない。
いつもの私なら120%そうしていただろう。
しかし、ラフロイグ30年と出会えたその日は違った。

「試してみたいです。ただ、1度も吸ったことがないので教えてください」
とお願いした。

目の前に、細くて長いもの、太くて短いもの、太くて長いもの、貼られているシールの色が青、黄色など20本くらいの葉巻が運ばれてきた。

何もわからない私。そして、金額もわからない。

私には選択基準がないので、オススメの1本を選んでもらった。

目の前で、専用のカッターを使い葉巻がカットされ、その後ガリガリ君の某を薄っぺらくしたような木に火をつけ、それで葉巻に火をつけた。

何をしているのかは何もわからないが、とても良い香りを感じた。

タバコと同じかと思っていたけれど、タバコとは違う。
タバコの煙は大嫌い。でも葉巻の煙はイイ、好きな香りだ。

「肺には入らないように気をつけてください。香りを楽しんでいただきたいです。そしてウイスキーとシガーの共演も」

葉巻を口にして、吸ってみた。

いけないものを知ってしまった感じがした。

イイ、すごくイイのだ。

さらに、気分も変わってきた。

「なんかゴッドファーザーみたいじゃん、俺」なんて思いながら、煙りをくゆらせてみたりして楽しんだ。気がつけば、ラフロイグ30年を1ショットと葉巻1本で2時間近く楽しんでいた。

その翌日から、私はラフロイグ30年を本気で探し始めた。しかし、全然見つからない。ヤフーで探していたのだが、100ページ目を越しても探した。

製造中止だし、ホテルの人も「私たちも手に入らないんですよ」と言っていたもんな。
探して見つからないなら、ヤフオクで30万円を出して落札しようかとも考えていた。

ある時、「ウイスキー 貴重」と検索してみた。

これまでに読んだページもたくさん出てきたが、いくつかは初めて訪れるページがあった。
その中の1つに、東京郊外の酒屋さんのホームページがあった。お店のおじさんが、ホームページビルダーか何かで作ったのであろう、素人感満載のページ。

何気なくみていると、ラフロイグ30年の画像があり、その画像と一緒になんと「在庫あり」と書かれているではないか!でも、更新も1年以上前という表示になっていたので、あまり期待はせずにその場で電話をかけた。

「ありますよ、2本」

「1本おいくらですか?」

「4万ちょっとだったかな」

「全部買います!」

私の家には2本のラフロイグ30年ものがある。
1本は半分ほど飲んだ。何か特別なときに、飲んでいる。

飲むときは必ずマイケル・ジャクソンと決めている。

マイケル・ジャクソン。

世界的に有名なあのマイケル・ジャクソンのことではない。

世界的に有名なのは同じだが、ウイスキーライターと言われるマイケル・ジャクソンがプロデュースしたウイスキー通のためのテイスティンググラスのことだ。

あのBARで使われていたのと同じグラス。他のグラスで飲むのと、味も香りも違うのだ。

ウイスキー、そしてシガーという世界は、私だけだったら絶対に経験していない。
たまたま勧められたウイスキーに挑戦して新しい世界を知り、そのウイスキーの世界を知ったことで勧められたシガーに挑戦して、もう1つ新しい世界を知った。

これまでの人生を振り返ってみると、自転車、旅、ラーメン、アウトドアにハマってきた。そして新しい世界を知った。これらは私の生き方を大きく変えたものたちばかり。

そのハマったきっかけは、すべてが「誰かの誘い」だ。

誰かの提案や誘い、あるいは流れに乗ってみるということをあまりしないタイプの私は、乗ってみたことで間違いなく世界が広がった。

「とりあえず誘いには乗ってみる」というスタンスは人生を楽しむ上で案外大事なのかもしれないなぁ。

現在の私は、宿泊先のホテルにシガーの置いてあるBARがあれば、ウイスキーとシガーを楽しんでいる。

来週宿泊するホテルの中にもあるらしい。

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