いい男に選ばれるには 《プロフェッショナル・ゼミ》
*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:大國義弘(プロフェッショナル・ゼミ)
知人にこんな女性がいる。
還暦になったとき、これは人生の区切りだ、この区切りに、日本の問題は何かと考えた。
少子化だ。
周りを見たら、30を過ぎてもなお独身女性の数々。
聞けば、出会いが無い。
無いなら私が作ってしんぜましょう。
以来、ボランティアで、婚活の場を提供されている。
筆者も自称少子化担当相。
次々と女性が男性を選び、選んだ男性をモノにし、子を産んでほしい。
元々、同性、異性を問わず、人を人に紹介する趣味があった。
付き合いが始まったら、いつかは結婚してほしい。
しかし男は中々、踏ん切りがつかない。
結婚は人生の墓場。
男の潜在意識には、この格言が深く刻まれているのかも知れない。
それを乗り越えて、男に求婚をさせるべく、努力を重ねる女性を応援したい。
そのためには、孫子の兵法、彼を知り己を知れば、百戦危うからずの格言に従い、
男はいかなる時に、この女を嫁にしようと思うのか、いい男だ、と思った男性に、聞いて回ることにした。
まずは40代の内科医。
自分が診てもらうなら、こんな医者にかかりたいと思うようなとても親切で感じのいい医者である。
彼が看護師の奥様を嫁にした理由はこうだった。
自分は友達とワイワイやるのが好きです。
けれども一人になれる時間も重要です。
女房は、一緒に居て、疲れませんでした。
一緒に居ても、空気を読んでくれて、
今は話しかけないで欲しい、
というこちらの気持ちを察してくれたのかも知れません。
とにかく一緒に居て楽でした。
もう一つは、付き合い始めの頃、時間が合えば、夕飯を一緒に摂っていました。今日も帰りは8時頃になりそうと連絡をもらい、私のアパートに来てくれることになり、自分もそれまでには帰っていられそうで、待っていました。
ところが10時に来たのです。
自分は別に文句があるわけではなく、ただ何で8時に帰れると言っていたのに、二時間も遅れたのかと不思議に思い、
『遅かったね』と言ったのです。
そうしたら、同僚の仕事が終わらず手伝っていた、というのです。
自分だったら、好きな人との約束が8時で、自分の仕事が終わって自分は帰れるという状況であったなら、果たして自主的に残って手伝えたかどうか。
これはすごいなあ、と感心したのもポイントでした。
この話には、筆者も泣きそうになった。
付き合い始めの頃と言えば、互いに一番大事な場面である。
いくら同僚の仕事が終わっていないからとはいえ、ほっといたら、患者さんが死んでしまう、という訳ではなかったであろうと想像する。
自分が手伝えば、残業時間も少なくて済むから、という善意以外の何モノでもなかろう。
この利他の精神が、素晴らしい内科医と一緒になるという幸福をもたらしたのではないかと思えた。
次は同じ内科医だが、ちょっと若い30代。
口数は少なそうな、しかしとても真面目な常に冷静で穏やかな感じの医者である。
何で奥様を、とお尋ねすると、彼はしばし絶句した。
……
そのあと、おもむろに答えてくれた。
いやあ、直感です。
直感? 意味不明である。
これでは参考にならない。
いやいや言語化できるものが何かあるでしょう、という顔をしたら、答えてくれた。
そうですね。自分のアパートに来たとき、料理を作ってくれました。
とても家庭的と思いました。
あとは、彼女と一緒に居るとき、楽でした。
リラックス出来ました。
楽とはどういう意味ですか?
いいかっこをしなくていい、そのままの自分で居られました。
自分をそのままさらけ出すことが出来ました。
男は、特に好きな女性の前では、かっこをつけたがるもんだと思うのですが、それをしなくて済むと感じました。
どうしてそのままで居られたのですか?
なぜ裸の自分をさらけ出せたのですか?
愛情を感じました。
何も言わないのに、洗濯をしてくれたりしたんです。
好きでも無いのに、黙ってそんなことをするはずがない、と思えました。
あとは私の行動に、いちいちコメントをしませんでした。
それも楽だった理由の一つですか。
そうです。
この内科医の話を聞いて、沈黙は金という格言を思い出した。
コメントは要らない、とは女性から聞いた言葉だ。
これは女性の話に対する男からのコメントは不要、という意味だ。
女性の話は、ひたすら聞く。
これが正解だ。
女性に問題を語られても、男は答を言ってはいけない。
女性は答がほしくて問題を語っているのではない。
答は要らないどころか、コメントすら求めていない。
逆に、女性が男の行動に、批評、論評をしないのも、いいことなのかも知れない。
次は40代の外科医だ。
家内を選んだ理由は主に二つあります。
一つ目は、感覚で決めたことを自分の考えとして受け容れているところです。
頭で考えて行動する、というのではなく、直感を大切にして生きているところがすごいなと思いました。
二番目は、おおらかなところです。
細かいことにとらわれない。
一つ一つの出来事に振り回されない。
別に特別に美人だとか、頭がいいとか、完璧な人間だ、というワケでありません。
でも、感覚で決められる、細かいことをくよくよ考えない。
この二つはすごいと思いました。
この外科医は独身の時から、女性の特質をわきまえていた恐るべき賢者だ。
理系の人間は、とかく理屈で考えがち。
理系人間の端くれの医者も、そんな人が多そうである。
だからこそ、直感で生きるという自分に無いものを持っている女性に対する憧れが強まるのかも知れない。
人間の頭で考えることは、大抵、間違っている、とかつて恩師が教えてくれた。
女性に理屈は通用しない、と男はバカにするが、理屈なんぞ、直感に比べれば、はるかにレベルが低い存在であるがゆえに、理屈などクソ食らえ、という女性の態度は、実は正しいということになる。
直感を素直に信じられる女性を、この医者が素晴らしいと思えたことは、筆者は年老いた今だから理解出来るが、若い時に、この判断を下せた彼は、大したものだと唸らざるを得ない。
次は70代の薬剤師Yさん。
職場の選り好みさえしなければ、医者も薬剤師も免許のお陰で、70才を過ぎても有り難いことに仕事を続けられる。
といって、資格さえあれば誰でもいい、とはならない。
好々爺を絵に描いたようなこの男性は人柄もよく、乞われてまだまだ現役である。
彼のお答は以下だった。
女房は、長く付き合っても、干渉してこないところがよかったです。
世の中には、そうではなくて、ねちっこくて、神経質で、ちょっとしたことでも気にしてどんどん質問してくる、という女性も沢山います。
そういうところが家内には一切ありませんでした。
この話を聞いて思い出した。
多くの人を魅了して早くに逝った小林正観は、質問は、文句であると教えてくれた。
母親が子供に、
あんたはどうしてそんなにグズなの!
とか、
なんで勉強しないの!
というとき、遅い理由、勉強しない理由を聞きたいわけではなく、愚図であること、勉強しないことに対して文句を言っているわけだ。
逆にこの話の裏返しで、人は、質問をされると、文句を言われた気分になる。
この薬剤師の奥様Y夫人が、彼に質問をしなかった、ということは、Yさんにしてみれば、文句を言われなかったと感じた、ということなのだ。
文句を言えば、男は逃げる。
奥様は、文句を言わなかった。
結果、Yさんに選ばれた、ということかも知れない。
逆に、男と別れたければ、ひたすら文句を言い続ければ、願いは叶いそうである。
文句を言い続けても平気な男がいたら、これはもう仙人だ。
聖人君子だ。
夫にしてもいいのではなかろうか。
ここで誤解しないで頂きたいのは、文句を言いたいのを我慢するなと言うのでは決してない。
むしろ逆だ。
言いたい文句は、全部言った方がいい。
我慢をすると病気になる。
それだけではない。
文句を言って逃げる男なら、逃がした方がマシだからだ。
言いたい文句は、我慢をしても、顔に出る。
非言語の方が、言語によるメッセージよりも強いそうだ。
メラビアンの法則によれば、人が得る情報の55%は視覚から。
声の大きさや話し方などの聴覚情報が38%、言葉の意味や内容は7%。
何を言うか、つまり話の内容なんて、関係無いよう、と言わんばかりの数字だ。
透明性の法則、というのもある。
人は人をお見通し。
実は皆、隠しているつもりで、人に全てを見破られている、という法則だ。
少なくとも人の潜在意識には、はいってしまう。
口では言わなくても、思っただけで、相手には伝わっている。
我慢をしても顔に出る。
目は心の窓、とも言う。
隠しても隠したことにならないのだ。
それに我慢は長続きしない。
仮面をかぶって結婚しても、続かないから、早晩別れることになる。
自分は桜なのに薔薇のフリをしていると薔薇好きな人が寄ってくる。
桜の自分を最初からさらけ出せば、思ったのと違うじゃないか、と失望されることはない。
率直さは、とても大事だ。
それが次の30代の内科医の話に端的に示されている。
私が女房に決めた理由は、一つは、根がしっかりしている。
もう一つは、本音をしゃべる、です。
まず根がしっかりしている、の意味ですが、家内は自説を曲げないのです。
私とケンカしたときも譲りません。
納得するまで譲らないです。
本音をしゃべる、は文字通りです。
相手にとっていい悪いも関係なく、思ったことを口にするタイプです。
だから私も裏を考える必要がありません。
考えていることが分からない、ということがありません。
なので、気を遣わなくて済むのが、家内を選んだ理由です。
この話を聞いて、単なるワガママじゃん、と思われるだろうか。
ある人は教えてくれた。
全ての長所、短所は、一つの性格の裏表である。
一つの性格のプラス面、明るいところを長所と呼び、マイナス面、暗いところを短所と呼ぶと。
愚図でのろまな人は、慎重。
無鉄砲な人は、勇敢。
臆病な人は、用心深い。
醒めた人は、冷静。
情熱的な人は、怒りっぽい。
ケチな人は倹約家。
気前のいい人は浪費家。
ありとあらゆる短所には、その裏に隠された長所がある。
逆もまたしかり。
月を知らない子供が、光っているところだけを月と思うのに似ている。
だから、ワガママな人とはつまり、率直な人、正直な人、素直な人なのだ。
次の男性は30代の理系のエリートサラリーマン。
話していて、超賢いとすぐに分かった。
その上で人柄もよく、親切だった。
彼の答も似ていた。
私の奥さんは、私の話を聞くときの表情が活き活きしていました。
どんな話も、本当に興味がありそうに聞いてくれるのです。
相づちが、うまかったです。
聞き上手でした。
自分に向かってだけかと思いきや、誰にでもそうしているようでした。
相手の話を聞きすぎて、たまにしんどいことがあるようです。
聞いてばかりで、たまに疲れることがあると結婚後は言っています。
話を切ることが出来なくて、その場を離れられなくて、困ることがあるようです。
話を無視して、ぶった切って、帰ればいいじゃん、
と言っても、生まれつきの性格らしく、中々出来なくて困ることがあるようです。
もう一つのポイントは、プライドが高いことです。
自分を卑下する、謙遜する人は、私はあまり好きではありません。
プライドがちゃんとあるところがよかったです。
最初の上司が、やな奴で、してやられた時に、社内のパワハラ委員会に訴えたようです。
話を持って行き、正式に訴えますか、と聞かれた時、大抵の社員は取り下げるそうですが、彼女は取り下げなくて、取締役会まで果敢に言って行きました。
自分のプライドを傷つけるやつは死んでも許さないと。
そんな我慢しないところが気に入りました。
自分に自信が無い男は、自分が優位に立てるから、自分を卑下する女を好きになるのです。
つまり自分を卑下する、ということは、そういう女を好むようなダメ男を引き寄せるのに役立つ、ダメ男勧誘のいい方法です。
自分に自信を持てば、自分に自信がある男が寄ってきます。
引き寄せの法則です。
自分を大事にしている人が、私には魅力的です。
自分がちゃんとある人、自分自身を好きな人が、人にも好かれると思います。
実に納得である。
この方の奥様も、単なるワガママ女に見えるだろうか。
もしそうなら、ワガママほど素晴らしい美徳は無い、と言える。
ワガママ、とは我がまま、自分のありのまま、ということだ。
飾らず、自分をさらけ出す。
これこそが、いい男に選ばれる究極の道かも知れない。
格言にある。
自分自身が好きになれないような自分を、他人に好きになってもらおうなんて図々しい。
自分を愛する程度だけ、人を愛することが出来、人にも愛される。
最後は20代の外科医。
何故、奥様を選んだのか。
長いこと付き合って、自分のことを一番よく分かってくれていると思ったから。
これでは参考にならないと思ったら、私よりも賢い長女が教えてくれた。
参考にならない、ということはない。
これは、奥さんが自分の一番の理解者であり、一番信頼出来る相手であるということだ。
ちゃんと話を聞いた。
嘘はつかない。
言ったことは守る。
密にコミュニケーションを取った。
誠意ある小さいコミュニケーションを積み重ねた。
こうして生まれた信頼関係は、長い時間をかけて、二人で築いたものだ。
その時間が全て彼にとって居心地がいいものだったということだ。
なるほど長女の解説で理解出来た。
ということは、逆に言えば、小手先のテクニックは要らないということだ。
そもそも、そんなものはすぐにバレるし、長続きしない。
奥様は、彼の全てを受け容れた。
だから自分が受け容れてもらえた、と言えるかも知れない。
さもなければ、自分のことを分かってくれている、とは思われなかったのではなかろうか。
ゲーテは言った。
相手の欠点も愛せるようでなければ、真に愛しているとは言えない。
欠点を愛するなんて、至難のワザか。
そうとも限らない。
欠点の裏の、長所を探せばよい。
全ての長所、短所は、一つの性格の裏表なのだから。
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