メディアグランプリ

質問が苦手だった私をちょっぴり変えた、3つの気づき


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記事:植松真理子 (ライティング・ゼミ 日曜コース)

 
 
 「何か質問はありませんか?」
 
 セミナーや講演会の最後にあるこの時間が、私はとても苦手だった。講演者が質問者を探して会場を見まわしたりしていると、つい下を向いてしまう。
 
質問したいことが思い浮かばないからだ。正確にいえば、質問したいことがないわけではないのだが、上手く言葉にできない。さらに言えば、皆の前で質問するのも、なんだか違うんじゃないかなぁという、上手く説明できない、じれったいような気持になるからだ。
一生懸命に話してくれた講演者さんにも申し訳ない。私のように目をそらす人をみたら、ガッカリさせてしまうと思う。だから誰かが手をあげて質問してくれるとホッとする。その人の質問が、切れ味鋭いものだったりすると、それだけでその質問者さんをカッコいいと思える。
どうしたら私もあんな風にカッコよく質問ができるんだろう? とずっと思っていた。
 
そんな私の転機になったのは、キレッキレの質問をする人が隣に座ったセミナーだった。その人の手元をこっそり除くと、質問がメモしてあった。
ただそれだけのことなのだが、私にとってはちょっとした発見だった。
「そうか! わかったことをメモするのではなく、疑問の方をメモするのか!」
 
 いろいろな感情が湧くのは、講演会の話を聞いている最中だ。その中には、「具体的にはどういうことだろう?」などと思うことだってあったはずだ。だが、続けて話を聞いているうちに忘れてしまうのだ。
「心に残ったことではなく、すぐ忘れてしまいそうなことをメモする方が合理的じゃないか」
これが最初だった。
 
 それから話を聞きながら疑問をメモするように心がけた。今までもそれなりに真面目に話を聞いていたつもりだったが、わからないことを探しながら話を聞くことになるので、真剣さがちょっぴり増したと思う。
 
しかしそれでも、思ったほど質問したいことが思い当たらない。鋭い質問をする人と私とでは頭の作りが違うのかな、などと思っていた。
 
ところが「これかもしれない!」と気づいたことが、またあった。
それは仕事で、社内のプレゼン大会の審査シートをコピーしていた時だった。その審査シートには、「なぜそれをやる必要があったのか(Why)」「どのようにやったのか(What)」「その結果はどう結果はどうだった(Result)」という3つの記入欄があった。記入欄にそって発表内容を要素メモすることで、内容のヌケや偏りをチェックしやすくなるというものだ。
 
「そもそも、無い情報に気づくのは難しいものなんだ! だったら情報のヌケに気づくための、枠組みのようなものを準備しておけばいいんじゃないか!?」
審査シートのような表でもいいが、自分がぜひ知りたい項目を事前に書き出し、それについての内容の有無をメモしていくということでもいいと思う。講演会の内容にあわせて考えておくことにした。
 
この方法はかなり使えた。質問したいことが自覚できるようになった。
今までより、ちょっぴりクリアに内容を理解できるような気がして、ひそかに快感を感じていた。
 
そんな自信を持ち始めた頃、面白い方法で質問を募る講演会に参加した。
講演会の参加者は皆、自分のスマホに主催者指定のアプリをダウンロードして、そのアプリを通じて質問をするのだ。
どんな質問が投稿されたのかは参加者全員が見ることができ、自分も知りたいと思う質問には「いいね」をすることができる。「いいね」が多い質問はリストの上位に表示されるので、講演者は上位の質問を見て回答する、という仕組みになっていた。
この時は「Sli.do」というアプリを使っていたが、同じようなアプリは他にもいろいろでているようだ。
 
これは、質問を募る方法としては、とても合理的だと思う。参加者は思いついた時にどんどん質問を投稿することができるし、大勢の中で手を挙げて発言をすることへの気後れもない。早いもの勝ちではなく、「いいね」が多い質問、つまり多くの参加者が聞きたい質問に回答してもらえることにもなる。
それに、他の人の質問を見ることができるのも面白い。いい質問をみて、参考にすることもできる。
 
「いいね」が多い質問は、とにかくシンプルで短い。逆に「いいね」がつかない質問は、「いいね」が多い質問と同じ主旨のことを質問していても文章が長い。長くなっている分は、個人的な事情や考え方の説明である場合が多かった。質問者にとっては自分の考えを整理するために必要なことだったのかもしれないが、そのほとんどは、私にとっては必要ない情報だなぁと思った。そう思ってから、気がついた。
「そうか! 質疑応答も含めて講演会のプログラムなんだ!」
 
質疑応答の場で質問するということは、講演会の一部に参加するようなものなのだ。自分の考えを説明するのは、相手に自分のことを認めてもらいたい場合が多い。1対1の人間関係でならそれでいいが、講演の一部でそれをやられると、他の参加者には不要のやり取りを聞かされる時間になってしまう。
 
私自身も質疑応答を、教えてくれる講師と教わる自分という、1対1の関係で考えてしまっていた。実は、この日私が投稿した質問に「いいね」がつかなかったことを残念に思っていたのだが、見直してみると当然だと思えた。「私はここまではわかっていますけど……」という、質問とは関係のない言い訳のようなものが書いてあった。
 
もともとのレベルが低かったのかもしれないが、こう考えられたことでちょっぴり自分の視点が高くなったような気がした。質疑応答の時間への、よくわからない苦手意識も減ったと思う。
本当に些細なことだし、人によっては全く興味がないことかもしれない。でも、その些細な気づきが、私をちょっぴり幸せさせてくれたことは間違いない。だから、これが誰かの気づきになればいいなとも思っている。

 
 

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2018-12-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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