わたしの地獄こと妹が同志になるまで
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:北村祥子(チーム天狼院)
わたしには、9学年下の妹がいる。間に兄弟はいない。二人姉妹だ。
彼女が生まれた時、わたしは小学3年生だった。ずっとずっと妹がほしかった。一緒に遊びたい、とか具体的な理由はなかったけれども、とにかく兄弟に憧れがあった。本当を言えば、お兄ちゃんお姉ちゃんがほしかった。けど、無理だと周りに言われていたので、しぶしぶ妹がほしいことにしていた。
「お腹に赤ちゃんがいるんだ」
ママにそう言われた時の嬉しさは今でも忘れられない。その話を聞いてからなんだか急にすごくドキドキして、興奮のあまり、小走りしたくなる感じ。実際、したかもしれない。
ついに妹が生まれた。
嬉しすぎて翌日学校の友達にも自慢した。直接抱っこしても、これが自分の妹だという実感は全く湧いてこなかった。とにかく軽くて、ものみたいに思えた。何が何だかよくわかっていなかったけれど、待望の妹誕生という大事件だった。しかし、一人っ子のわたしには、思ってもみないことがたくさん発生した。
妹は生まれた時からパッチリ二重で、目が大きく、ギョロっとさえしていた。髪がふさふさ生えていた。一方、わたしの生まれてすぐの写真を見ると、髪は生えていないし、目は開いていないも同然だった。しかも、新生児期のわたしにはあだ名がついていたようだった。「地蔵」と。母の友達が言ったらしい。その時、そんな風に呼ばれていた過去を知って悲しかった。
そして、周りの大人たちが誰も彼も言った。
「姉妹、似てないね~」
本当に似ていなかった。今でこそ、雰囲気や声が似ているが、当時は姉妹の面影がなかった。
その時、「妹は可愛い。わたしは可愛くない」の図式が出来上がった。この問題はわたしが大学2年生になったつい最近まで、深く心に刻まれ、ズルズルとわたしが苦しんできた問題の一つだ。
妹が生まれるまで、我が家の生活は明らかにわたし中心に回っていた。
それが突然、ママもパパも妹の都合に合わせはじめた。わたしが話していても、「妹が今泣いているからあとでね」とかそんなことばっかりになった。
ここでも更に、自分はないがしろにされていて、わたしは可愛くないんだな〜というコンプレックス感情が大きくなった。
そしてわたしは妹をいじめた。当時いじめていたというつもりはなかった。でも、今から考えるとかなり酷い。
妹がハイハイしてやってくる妹の前にわざとおもちゃを置いて通れないようにする。
妹のお気に入りのメロンパンナちゃんのぬいぐるみを隠す。妹は大泣きする。ママが探して見つける。
もう少し大きくなってからは「周りの人からは喧嘩することもないでしょう」とよく言われたけれど、頻繁に言い合いをしていた。恥ずかしながら。わたしが妹に向かって意地悪を言う。すると、負けず嫌いの妹が言い返してくる。
とはいえ、酷く当たりつつも、よく一緒に遊んであげることもあった。母もわたしの意地悪言動について強く責めた記憶はないので、そこはご安心いただきたい。程度は可愛いものだったと信じたい。
わたしが今までパッチリ二重にこだわり続けて、そうではない自分を認められなかったのは、妹の顔立ちが原因だと思う。人それぞれの美しさの方向があって、その人らしさを追求すればいいのに、わたしはどうやってもパッチリ二重を作りたかったこと。そのことを理解した今でも二重にこだわり続けていること。
何不自由なく育って、母は丁寧に世話してくれて、父は教育の機会を与えてくれた。これはまぎれもない事実だ。でも、わたしは愛されて育ったという満たされた気持ちがなかった。
妹はわたしの地獄だった。顔は可愛い。スターダストにスカウトされたこともある。ちやほやされる。親の注目はかっさらう。どうやら頭もいいらしい。可愛くなくて、成績も下の上くらいのわたしとは大違いだ。こんなに年が離れているのに。大学に入っても、この地獄が心に残した傷は消えなかった。
そして今、わたしは大学2年生で、妹は小学5年生だ。もう身体の大きさが変わらない。彼女は成長が早いので、もうわたしと身長が5cmしか変わらない。「お姉ちゃまを見下ろす日が近い」と毎日のように言われる。足のサイズはもう抜かされた! もう24cmを履いている。ついにおさがりのスニーカーをもらうようになってしまった……!
今はもう妹のことは憎くない。わたしは劣ってなんかいないし、愛されている。自分でそう思えるようになった。でもまだ言い合いはする。その言い合いの意味合いが変わってきた。わたしが妹に突っかかることはなくなった。逆に妹がわたしに文句を言ってくるのだ。現在、わたしたちは同じ部屋、繋がったベッドで寝ている。「部屋の床に荷物広げておかないで!歩けない!」「なんで引き出し開けっ放しなの!」と言ってくるから寝相が悪い妹に対して、「寝てる時いっつもこっちに進出してくるじゃん」と返す。毎日そんな感じだ。
妹は学校などでイライラしたことを溜め込みやすい体質で、よく我慢してストレスを溜めているらしい。よく家で愚痴を話している。小姑か、というくらい彼女の指摘は細かい。そして、わたしは言われっぱなしである。が、そんな妹が面と向かって文句を言える相手なら、それでいいかな、と思う。ストレス解消に使ってくれれば、それでいいやと思っている。わたしも多少は言い返すし。
あんなにほしかった兄弟ってなんだろうってずっと思ってきた。
わたしたちにとっては、お互いに「面と向かって不満をぶつけても、あいつは絶対に自分を嫌いにならない」という存在だと思う。しかも対等な関係で。
他人なら当然相手に自分の気持ちを理解してもらうために丁寧に説明する必要がある。が、今のところ特にそういうことは必要ない。夫婦ではなかなか難しいし、親子だと、親が上で子が下という構図ができやすい。唯一無二の関係だと思う。
今は、妹は小学生だから、サポートしてあげたいこともたくさんある。でも、彼女にもしっかり自分の意志と気持ちがある。だから、これからの人生、一緒に生きていく同志として仲良くしていきたい。
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