魔法にかけられて
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【6月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:綿貫晶子(ライティング・ゼミ平日コース)
5月12日、日曜日。東京は朝から晴れ渡っていた。日中は半袖のシャツで歩けるくらいに。その少し前に明けた10日もの休み中、ほとんどどこにも行かず、古い書類や本、着なくなった洋服の断捨離作業に明け暮れていた自分にとって、久しぶりのおでかけの日だった。その日が来るのを、本当に長いこと心待ちにしていた。
本当はその場所へは行けないはずだった。その場所に行くには「資格」がいるのだ。自分にはその資格はなかった。いや、資格を持っている人であっても、必ず行けるかどうかはわからない。その日、その場所に行くためには、魔法のチケットが必要だった。
その日、その場所で行われることについて知ったのは、2019年早々のことだった。
その前の年の大晦日、彼らは日本の多くの人が見るテレビで、少し暴れた。そして元日に、春から夏にかけて、全国で大暴れすることを発表したのだ。
そのことを「商売上手だなあ」とFacebookに書いた。「待っていた人たちを楽しませる術を知っているのは素晴らしい」という感嘆の気持ちを込めて。
1月の終わりに、「資格」を持っている人から連絡があった。その人にリアルで会ったのは、たった1度。そのときFacebookで繋がったけれど、それ以降はお互いの投稿に、たまに「いいね!」をつけたり、コメントを残したりする程度だった。それなのに、その人から来たメッセージには、こう書かれていた。
「サザンのチケット取れましたー! よかったら一緒にいきませんか?」
5 月 12 日、メットライフドームで行われるサザンオールスターズのライブ。その人は、私がサザンについての色々を書き連ねているSNSの投稿を見てくれていた。
にわかには信じられなかった。その人は長いことサザンのファンクラブに入っている。ファンクラブに入っていても、抽選になるので、このところ外してた、という。「今回は取れそうな気がしていたんです」その人は笑う。そんなプラチナチケットなのに、1度しか会ったことのない自分に声をかけてくれるのは何故だろう。共通の知り合いがいるから、まさか騙されるなんてことはないだろう。もちろん、「行きます!」とすぐ返事はしたけれど、あまり期待してはいけない。いつ「やっばり……」って言われるかわからないし……。いろんな思いが逡巡した。まだ魔法のチケットは手にしていない。
3月に入っても、その人から詳細の連絡はなかった。やっぱり他の人に渡ってしまったのか。そう感じ始めた矢先、メッセージが届いた。待ち合わせ時間は何時にしましょうか? と。魔法のチケットが手に入った瞬間だった。
長きにわたって、第一線に居続ける彼ら。
彼らがデビューした頃は12歳だった。デビューして40年。この40年、自分はサザンと一緒に育ってきたのだ、と思う。
ちょうど10年前、彼らの30周年の時のライブで、桑田佳祐は言っていた。
望まれていることは何なのか、ということを常に考えている、と。
ワンパターンと言われようと、王道を貫くことが大事なんだ、と。
だから、ライブ後半に「勝手にシンドバッド」を持ってきて、「誰もが知っているあの部分」のコールアンドレスポンスを行うスタイルは変わらない。
実際、この前のライブもそうだった。3時間に及ぶライブは、「最高」以外の言葉が見つからないほどだった。
王道を貫くことが、ファンにとっての魔法なのだ。
そして王道以外のプラスアルファもちゃんと考えてくれている。「えー? こんな曲もやってくれるの?」が用意されているのだ。それも含めて、サザンの魔法なのだ。
40周年のライブは、この後名古屋、札幌を経て、東京ドームで打ち上げる。
wowowで放送もあるだろう。30周年のときには、そのライブに向かうまでのドキュメンタリーも作られていた。恐らく今回もそうなるだろう。録画しなければなるまい。
40周年のライブは、彼らの伝説のライブ、と言えるものだ。なぜなら彼らの魔法は、2週間が過ぎた今でも続いているからだ。
50周年のときにも、きっとこの魔法は続く。サザンがサザンである限り。何世代にもわたる彼らのファンがいる限り。
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