シンクロニシティ
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記事:千葉貴大(ライティング・ゼミ夏休み集中コース)
2019年7月8日。
乃木坂46のキャプテンを勤めてきた桜井玲香が、ブログ上で卒業発表を行った。
これまでキャプテン交代を経験していなかった乃木坂46のファンには、驚きを持って受け止められた。
乃木坂46についてよく知らない方からしたら、バラエティでよく見る生駒里奈や、
モデル業で成功を収めている白石麻衣がキャプテンではなかったのか、と驚く方もいるかもしれない。
彼女は、創設時から約7年間、キャプテンを務めていた。
桜井玲香という人物について語るときに、AKB48の初代総監督、高橋みなみと比較して語られることが多い。
元AKB48の高橋みなみは、先頭に立って皆を鼓舞し、時にメンバーを叱ることも厭わず、メンバーを引っ張っていくようなキャプテンだった。
それに対し、桜井玲香は先頭に立って皆を引っ張るリーダーシップはなかった。
新曲初披露の際にタイトルを間違えたり、ラジオで番宣を忘れたり、言い間違いをする。
普段はポンコツと呼ばれ、年下のメンバーからも弄られる。
これまでだとキャプテンとしての威厳がないと捉えられてもおかしくないだろう。
それでも、歌とダンスに関しては一流で、演技においても秀でたものを見せていた。
泣いているメンバーがいたら励まし、横でそっと寄り添うタイプのキャプテンだった。
彼女は、メンバーだけでなく、ファン層からも尊敬を集めていた。
そんな姿勢が乃木坂46にも伝播したのだろう。
文化系でおしとやか。
清楚で品があって礼儀正しい。
様々な場所で様々なメンバーが活躍しつつ、それでも天狗にならず、どこか奥ゆかしさを感じさせる「乃木坂らしさ」といわれるブランドが形作られた背景には、彼女のキャラクターも大いに影響しているだろう。
彼女は今の時代の新しいリーダーシップ像を見せてくれたように思う。
そんな偉大なリーダーからキャプテンを引き継ぐのは、秋元真夏になると最近発表があった。
彼女も桜井玲香と同じ1期生で、ぶりっこキャラで有名となった。
桜井玲香と同様、年下からもいじられるところは変わらない。
それでもファンとの握手会における対応の良さや、人懐っこさが好評で、最近だとバラエティ番組のMCも務めるなど、メンバーやファンからの尊敬を集めている。
乃木坂46というアイドルについて語る時、「乃木坂らしさ」について語られることは多い。
もしかしたら、彼女にもそれを守るようにアドバイスする声もあるかもしれない。
ただ実は、「乃木坂らしさ」という言葉にメンバーやファンそれぞれがそれぞれのイメージを持っているが、明確な定義はない。
その「乃木坂らしさ」を守り続ける必要はあるのだろうか。
乃木坂46に限った話ではなく、例えば職場で次々にメンバーが入れ替わるような環境があったとして、そのチーム「らしさ」を維持し続ける必要はあるのだろうか。
私は、ないと思う。
維持し続けないといけないのなら、卒業や新加入という行為に意味がなくなってしまう。
サヨナラにだって意味はある。
出会いにだって意味はある。
そもそも「〜らしさ」とは、今いるメンバー達の間で醸成されていくものだろう。
メンバーの性格や得意分野、メンバー間の仲の良さやチームワーク。
それぞれが複雑に絡み合って、ブランドは作り上げられていく。
乃木坂46だって同じだ。
「卒業」というシステムで、メンバーが自らタイミングを決めてそのグループを巣立っていく。
あるものは昔から抱いていた夢の実現のため。
あるものは乃木坂の中で見つけた夢の実現のため。
そうして卒業していたメンバーの代わりに、オーディションが開催され、新メンバーが入ってくる。
メンバーが入れ替わる状況で一つの「乃木坂らしさ」を維持し続けることは難しいだろう。
今後は個人での活動が増えることも予想される。
それぞれのメンバーが学んできたことをグループに還元し、今いるメンバー同士でしか生み出すことのできない「シンクロニシティ(共時性)」を起こすことで、新しい「乃木坂らしさ」を築いて欲しいと思う。
新しいキャプテンの秋元真夏には、「乃木坂らしさ」を時には守り、時には壊し、秋元真夏という色を加え、これまで見たことのない「乃木坂らしさ」を見せて欲しいと思う。
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