世界が、日本がW杯に熱狂している裏で。《スタッフ石坂の視点》
四年に一度のW杯。日本では朝早くから試合があり、国民の多くが早起きしたことでしょう。一試合一試合が負けられない戦いだったはずです。
そんなW杯で盛り上がっている裏で、僕にとってはとても興奮するイベントが行われていました。
NBAのファイナルです。
残念ながら日本ではNBAはあまり人気ではありません。一部の人達だけです。おそらく、「NBAってなんだ?」という方もいらっしゃるでしょう。ご安心を。簡単にご説明しますね。
NBAとはNational Basketball Associationの略で、アメリカのプロバスケットボールリーグです。
そう、僕はNBAが死ぬほど大好きなのです。バスケ部ではありませんでしたが、バスケ経験者の友達よりもNBAには詳しいと自負しております。
さて、W杯の裏で行われていたNBAファイナル−優勝決定戦−は、昨年と同じ顔合わせとなりました。マイアミ・ヒートvsサンアントニオ・スパーズ。この2チームはNBA界に革命をもたらしているチームです。
マイアミ・ヒート。
このチームがもたらした革命は、「ポジション・レス」という概念です。文字通り、ポジションがないという意味です。
バスケットボールは1チーム5人で行われ、ポジションは以下のように分けられます。
ポイントガード・シューティングガード・スモールフォワード・パワーフォワード・センター
バスケットボールは全員で攻め、全員で守るという点でサッカーとは異なりますが、当然各ポジションにはおおまかな役割があります。
ポイントガードは自陣から敵陣にボールを運ぶ役割。つまり、ポイントガードからチームのオフェンスが始まるということ。そのため「コート上の監督」と言われることも。「ポイントガード」というからといって、敵が放ったシュートを阻止するキーパーのような役割を想像されたかもしれませんが、それは違います。
マイケル・ジョーダンという人を、おそらくバスケットボールを知らない人でも、この名前くらいは聞いたことがあるでしょう。バスケットボールの神様と言われる彼に代表されるポジションがシューティングガード。ボールを運ぶというポイントガードの役割もこなしながら、多くの場合攻撃の中心選手であることが多いのです。スター選手が多いということで、そんな彼らをディフェンスする、守りのスペシャリストがこのポジションにつくこともあります。
スモールフォワードは、シューティングガードと同じく攻撃の中心となる選手です。シューティングガードよりも身長が高く、体が強い傾向にあるため、より成績を残しやすいのも特徴でしょうか。
センターはチームでも背の高い人が務め、攻撃でも守備でもゴール付近に場所を取ります。シュートが外れたボールを取るリバウンドという仕事を期待されます。
パワーフォワードは、センターとスモールフォワードの間のようなポジション。リバウンドを期待されつつも、攻撃でも中心選手となることを求められます。
このようにそれぞれに大まかな役割があるのがバスケットボールですが、マイアミ・ヒートの「ポジション・レス」という概念はこれをぶっ壊します。
ヒートの絶対的エースであり、今世界で間違いなく一番のプレイヤー、レブロン・ジェームス(写真左)がこの「ポジション・レス」の体現者です。彼のポジションは−登録上は−スモールフォワード。つまり背も低くなく体も強い。そして俊敏さも兼ね備える。
そんな彼は驚くべきことに、全てのポジションの仕事ができます。ボールを運ぶことも、リバウンドを取ることも。ゴールの遠い位置からも近い場所からもシュートを狙え、確率も高い。そして素晴らしいディフェンダーでもあります。
それは彼の強靭な肉体が可能にしているのでしょう。203cm、113kgというバスケットボール選手としては理想的な体です。
そんなレブロンを中心としたマイアミ・ヒートは、プレイヤー全員がオールラウンダーと呼べるような人材が揃います。そしてヒートはこの「ポジション・レス」という概念が通用することを証明してみせました。過去2シーズンはマイアミ・ヒートが優勝しているのです。そう、2連覇。2000〜2002年のレイカーズ以来となる3連覇を目指します。
マイアミ・ヒートはバスケットボールの常識を疑いました。
「常識を疑う」
今ある定説にとらわれず、それらを否定する人たちがその世界のトップに上り詰めることができるのかもしれません。
今でこそ常勝チームであるマイアミ・ヒートも、数年前は弱小チームでした。勝率が20%だったシーズンもあるほどです。5試合して、1回しか勝てないということです。ほとんど負けていますね。
そんな弱小チームがトップに君臨するようになったのは、彼らが常識を疑い始めてからです。「ポジション別」という常識。
そんな常識を疑い、「ポジション・レス」という仮説を立ててみる。そしてその仮説は実証されて初めて真実となります。どこかで聞いたようなセリフですが。
実際にやってみせたのが、「ポジション・レス」の体現者、レブロン・ジェームスだったのです。彼によって仮説は実証されました。証明されました。
そしてバスケットボールには必ずしもポジションにとらわれる必要は無いということが真実になったのです。
「本屋さんは儲からない。」「出版不況。」
そんなことが言われます。
「まあ、出版不況だしね。こんなもんだよね。」
そんな声も聞こえなくはありません。
常識を疑うというのは、勇気のいること。
出版不況だからこんなもんだよね、と言って逃げることも出来ます。
やっぱり、逃げることはラクです。言い訳をすることはラクです。
ただ、トップに立つ者は常識を疑える人なのではないでしょうか。
疑って、仮説を立てる。そして実際にやってみる。それがいつしか真実となる。
いつまでも常識を疑える姿勢を持ち続けていたいですね。
そんな書店をめざして。トップを目指して。
今日も営業しています。
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