ひとり編集者からみんな編集者の時代へ —先読み好きなおじさま、おねえ様達は、見た— 《『READING LIFE ─PROTOTYPE─』予約受付開始》
記事: 筒井洋一(READING LIFE ─PROTOTYPE─)
「先生! 締切期限をかなり過ぎていますので、そろそろ原稿をいただけませんか?」
「何、ただいま思考中じゃ! じゃまするな?」
「申しわけございませんー。しかし、、、、」
「うるさい、じゃまするな!」
今は昔の話しだが、著者と編集者の立場は、以前は圧倒的に著者の方が強かった。戦後、学術書がバカ売れして、その出版社オーナーは資産家となった例もあるほどだ。そのため、編集者は著者の理不尽な私用を言いつけられても嫌な顔一つせずひたすら尽くしていた時代があった。
でも、時代は変わった。
(一部をのぞき)学者の書く本は売れず、その一方で起業家や学者以外の有力な著者の本がもてはやされる時代となった。
私が雑誌『PROTOTYPE』の記事を担当した著書『ティール組織』は昨年度のビジネス書No.1となったが、これも著者は学者ではない。
この本は、
「いわれた通りに働くよりも、自分を振り返りませんか?」
と問いかけてくれる。
働き過ぎの若者がこのままではいかん、と思った時にはぴったりの本だし、仕事に忙殺されている中年世代にも、答えは自分の中にあることを知らせる点で重要である。このように確かに学者以外の本は面白い。
しかし、最近の傾向として、著者の属性が変わって来たことよりも、編集者自身の変化の方が顕著だ。これまで黒子だった編集者が著者よりもクローズアップされてきている。ホリエモンとか、西野 亮廣(あきひろ)などの書籍を手がける出版社の編集者が、本を作るだけじゃなく、メディアにもどんどん出ている。若者にとっては、本や記事を書くことよりも、本や雑誌をプロデュースする編集者がまぶしく見える。
まさに編集者の時代だ!
こうした編集者が注目される時代に、天狼院書店は早くも手を打ってきた。
この本屋は、本を売るよりも、本を体験することに重きを置いている。なので、この本屋で本を買わない(私のこと!)客もここに集まって来る。集まって来て何をするかというと、この本屋が企画するイベントやセミナーに参加するのだ。
その中で、今秋、10月から12月までの三ヶ月間、「質を担保しない」雑誌を作りませんか?
という呼びかけがあった。
私はたまたま店主がそれを語っているライブ動画を見た。そこには、雑誌編集長を新入社員に任せるという荒技も入っていた。
私は、こういうやばい挑戦が好きだ。
しかも、雑誌参加者は「天狼院のゼミに参加したことがある方」限定である。質を担保しないといいながら、実は、これで十分担保されている。もちろん、この質とは雑誌の質保証ではなく、著者の質保証なのだが、何はともあれこれが大事だ。このように営業的にも、質保証の点でも盤石(ばんじゃく)だ。
もちろん、質保証しない雑誌を作る、という店主のそもそもの意図は、ゼミ参加者のアウトプットの場を増やすことだ。しかし、実は、この提案は店主の思惑とは別にさらに大きな可能性を秘めている、と私は読んだ!
どういうことかというと、編集者の時代であれば、編集者自体をアップデートすることなのだ。
編集者のアップデートとは何か?
一人の敏腕編集長がメンバーを集める雑誌の作り方がこれからも続いていくのだろうか。確かに雑誌の質が保証される点ではリスクがない。しかし、リスクのない雑誌づくりは、予測できない様々なリスクを抱えるこれからの時代を反映しているのだろうか。
むしろ、個々のメンバーには偏りがあっても、雑誌編集のプロセスで互いに連携しながら作り上げていく雑誌づくりは将来性があるのではないか。
その場合、編集長は経験ある人財ではなく、むしろ経験はなくても執筆メンバーの良さを引き出し、その一方でメンバーも編集長を支える雑誌づくりとなる。それが編集長の最大の仕事だ。
つまり、店主の問題提起は、その思惑を超えて、編集者の時代に一石を投じる衝撃を与える。編集者は「ひとり」ではなく、「みんな」なのだというメッセージだ。「ひとり編集者からみんな編集者への転換」である。
これまで一人の編集者が著者とやりとりしながら本や雑誌を作ってきたのだが、そこには明確に著者と編集者が別れている。すると、どうしても著者は読者を視野に入れるよりも、書くこと自体に集中してしまう。その結果、読者に「伝える」エネルギーが落ちてしまう。エネルギーのない雑誌は売れない。
対して、「みんな編集者」では、著者と編集者の区別はない。誰もが著者であり、編集者である。それによって何が違うかというと、みんなが読者を向いていることだ。
著者や編集者が読者を向くと、売上げよりも、読者の満足度にフォーカスする。満足度が高まれば、結果的に売上げも伸びる。そんな新しい編集者をこの雑誌『PROTOTYPE』の編集過程で生み出そうという企みがあるに違いない、と私は思う。
今回、編集長が新入社員であるかどうかはもはや問題ではない。むしろ、編集者の仕事を編集長一人に独占させるものか、という気概(きがい)に溢(あふ)れたメンバーが集まってきたことに意味がある。もちろん、編集長という役職は尊重するにしても、今回集まった11名の猛者(もさ)達は、おじさんであれ、お姉さんであれ、記事も書くし、編集もする。雑誌の編集経験には差があっても関係なく、編集したいという密かな楽しみをエネルギー込めて発信する。
毎週末、夜な夜な集まるメンバーは、オンラインを通じて全国各地から集まり、担当部分の記事を提案しながら、雑誌全体のことを考えている。そして、その先の読者を見ているのだ。
かれらは、今の雑誌ではなくこれからの雑誌を展望しながら関わっている。いわゆる、「先読み」が好きな方ばかりだ。「いま」を「みらい」に生かす「先読み」編集者であり、著者だ。
確かに、敏腕編集者一人の元に集まって作った雑誌と比べて、ここが足らない、これがだめというのは実に簡単だ。でも、「みんな」編集者は、(構成や校正については可能な限り努力しているにしても、むしろ)この雑誌がどこまで将来を見せてくれるのかを大切だと思っている。著者も編集長も「ワンチーム」になって未来を創る新しい雑誌である。
執筆者の一人である私もおじさん、お姉さんに混じって雑誌編集にのめり込んだ。その雑誌もまもなく発売だ。
われわれも雑誌を手にできるのは、読者と同じく、
2019年12月28日。
天狼院書店各店で発売開始!
予約した時点から、この雑誌はもうあなたのものですよ!
雑誌『READING LIFE ─PROTOTYPE─』目次
■働き方再定義
バブル期及びバブル崩壊を経て、昭和生まれのサラリーマンが語る。
何のために? どう働く!? 自分に合った働き方の見つけ方■大人の育て方 ─「ティール組織」から新しい働き方を考える─
ティール・エバンジェリスト 大森雄貴さんインタビュー■「夢を持っている君も、夢を持っていない君も」
セントオーディン 代表・デザイナー 永井純さんインタビュー【COLUMN 1】◯めフォト!
■「攻めスポ」VS「密スポ」
・婚活、マルシェ、肉フェス?! むすびの神「鳥飼八幡宮」さんの神主さんに突撃インタビュー!
・小さな命と人を繋ぐ、新しい支援のかたち ゲストハウス「ねこ蔵ホステル」
・池袋で攻めている急先鋒店舗と核弾頭店長「シアターカフェ天狼院」
・1週間で全てのメニューが入れ替わる?! 京都のアイスクリーム屋さん「PICARO EIS」【COLUMN 2】◯めフォト!
■休日の再定義
1週間休みならどう過ごす? 天狼院書店「STYLE for Biz 」山中菜摘店長にインタビュー!■日常Short Trip
・朝のひと時、帰りのひと時。街を歩いてみませんか?
・アフター5の過ごし方
・仕事帰りにホテル泊! ─街中ホテルステイ─
・そこまで行っちゃう?!編 ─1日で名古屋から北海道までの日帰り旅─【COLUMN 3】◯めフォト!
■大人の教養シリーズ
・「二十代の内に読んでおくことをお勧めする《書籍編》」
・「二十代の内に観ておくことをお勧めする《映画編》」(もっと、映画を観て欲しい)【COLUMN 4】いろいろある「紅白の由来」《レシピもご紹介!》
【COLUMN 5】◯めフォト!
【雑誌『READING LIFE ─PROTOTYPE─』予約する際の注意と通信販売について】
『READING LIFE ─PROTOTYPE─』は500部作成いたしますが、実際には390部販売いたします。限りがございます。確実に手に入れたい方はご予約をおすすめ致します。(予約順でのお渡しとなりますのでご了承くださいませ)
PayPalでの決済完了時間が予約受付時間となります。◆通信販売をご利用の方
今回は通信販売も同時に受付開始します。通販での受付も予約受付順の発送となります。PayPalでの決済完了時間が予約受付時間となります。
通信販売の場合、送料・手数料として500円別途頂きますが、その代わりに天狼院書店でご利用頂ける「コーヒーチケット(410円相当)」をおつけしますので、東京に来る際に、ぜひ、天狼院でご利用頂ければと思います。
通信販売分は、12月28日より、予約順に順次発送致します。先行販売について
【当日店頭受取】雑誌『READING LIFE ─PROTOTYPE─』1,000円+税/A5 全42P《東京・京都・福岡・土浦》
【後日店頭受取】雑誌『READING LIFE ─PROTOTYPE─』1,000円+税/A5 全42P《東京・京都・福岡・土浦》
【通信販売】雑誌『READING LIFE ─PROTOTYPE─』1,500円+税/A5 全42P
*送料・手数料 500円含む(*410円相当コーヒーチケット×3枚つき)
*12月28日(土)より順次発送いたします。
お問い合わせ
TEL:03-6914-3618
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