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「マウンティング女子ってウゼー」は禁句!《川代ノート》


戦う女

(c)2013 mjranum-stock

「そういえばね。この前なんかの記事でマウンティング女子のことが書いてあったの。あれ、ほんと、こわいね」

このあいだ、仲のいい女友達と、おしゃれなカフェで女子らしく楽しい時間を過ごしていたのだが、彼女はふと思い出したように言った。

「マウンティング女子ね、最近流行ってるよね。ファーストクラスみたいな――沢尻エリカのドラマ的なやつだよね?Facebookで結婚して幸せアピールしたり?」

「そうそう。どっちが上か下か、みたいなさ。表立ってはやらないけど、内心では格付けしちゃうってやつ」

「うん、わかるわかる。女の世界は競争社会だもの、なんだかんだ」

「でもね、本当に怖いのがさ。私その記事読んで、うわあ、こういう女のバトルって怖いなあ、って思ったんだけど、それ以上にね、これ、私、やってる!!って思ったのが、結構あって。私マウンティングしちゃってる! って気付いて、それが本当に怖かったの。そこに、身近のどんな女が嫌なマウンティング女だと思うかみたいなインタビューものってたんだけど、それに私、あてはまってたんだよね」

彼女はこっそりと告白するみたいに言った。今までだまってたんだけど、実はね。そう秘密をカミングアウトするかのように。

「でも、それにのってたのって、たとえば?」

「たとえば――学歴気にしちゃうとかさ。私たちの大学よりも低いレベルの女子大の子が自分よりかわいいと、『男に媚びてるだけじゃん』とか思っちゃうわけよ。ふん、たいして勉強してないくせに、みたいな」

どこか懺悔するかのように言う彼女を見て、思わず私はこう言ってしまった。

「え!それくらいで嫌な女って思われちゃうわけ!? 普通じゃん、そんなの! みんな思ってるに決まってるじゃん!!」

「いや、でもさ。その記事にはね、『自分を悪女だと思うか』って質問もあって。それに、はいって答えた人が二人しかいなかったの。ええっ、こんなに少ないの、って私びっくりしちゃったんだよね。私って本当に嫌な女なんだなあとか思っちゃってさ」

いやいや、絶対嘘でしょ? みんないい子ぶってるだけでしょ? 頼むからそうであってくれ、と私は思った。私なんてそんなこといっつも思ってるのに。気にしたくなくても、すごくかわいい子がいたら学歴とか人柄で張り合いたくなるし、女子力とかリア充度で張り合いたくなるし。女は張り合いの基準がいっぱいあって大変なのだ。
でも無意識の部分なんだよな、たぶん、そういうのって。野生の性質かはわからないが、男に選んでもらわなきゃという本能があるからどうしても仕方ないんだと思う。

「みんな自分がマウンティングしないって思いたいだけだって。私はその悪女だと思うって正直に言った人の方が絶対性格いいと思うけどな」というか、思いたい。

私がそう言うと、そうだよねー!? とほっとしたような彼女。当たり前じゃないか、そんなの。ぶっちゃけるがここだけの話、私は、こんなネタも話せる仲のいい彼女にすら、ときどき対抗心や劣等感を感じてしまうのだ。だって彼女、かわいいし、すごくスタイルいいんだもの。もともとかわいい彼女が、とってもおしゃれな服装をしてきたときに自分が手抜きだったらみじめになって落ち込むから、彼女と会う時は、デートするときとは違う意味で気合を入れることもある。彼女にたいしてだけじゃない。本人に面と向かっては言えないけれど、仲のいい友人にすら、というより親しい仲で、自分が好きだと思うからこそ、内心では勝ち負けを気にしてしまうこともあるのだ。そしてそのたびに、人間関係を縦でとらえてしまっている自分を嫌悪するのだが、まあやめられないから仕方ない、と諦めることにしている。でもお互いにそう思っていることによって、刺激し合えるならいいような気もするが。

「別に気にしちゃったっていいじゃん。そういう邪念を完全に捨てるなんて無理だよ。出家でもしないかぎり」

彼女を励ましているつもりが、なんだか自分を励ましているような気分になってきた。でもそうでも思ってないと時間がもったいない。早くマウンティングしないようになりたい、とは思うけれど、今すぐは絶対に無理だもの。すぐにそこから抜け出すことにこだわるよりも、まあいつか直ればいいや、くらいに気楽に構えていた方が結果的には早く抜け出せると思うのだ。急がば回れ、だ。

「そうかな?そうだよね?よかった、さきもそうなんだ、安心した。自覚してるだけましかな?」

「そうそう!そういう自分に気付いてるんだから大丈夫だよ。わかってるなら人を不快にさせないように気を付けられるしね。気付かないで、自分だけはいい子だって思い込んでるのが一番人を怒らせるんだよ」

それから私はかつて腹を立てたことを思い出し、彼女に、マウンティングと言えばさ、と質問をする。

「自虐風自慢って知ってる?マウンティングの一部らしいんだけど。自虐してると見せかけて自慢するやつ」

「あ、わかった!『もうやだあ、あたし胸大きいせいで肩こっちゃう。いいなあ、あなたみたいに小さい人が羨ましい』とか言ってくる人でしょ!いるよねー」

彼女の例が適切すぎて、私は思わず吹き出してしまった。そうそう、そういう人はたいてい、胸を小さいのを気にしていると分かっている人にわざと言うのである。胸が大きい子同士で苦しみを分かち合うことなんかほとんどない。そして胸を気にしているふりをしている人間に限って、胸元がグッと大きく開いた、かがむと谷間が見えるような服をきてきたりする。だって、本当に胸が大きいのがコンプレックスな人は、わざわざそんなことは言わないもの。むしろ一切話題に出さないくらいだ。本当に嫌だと思う見た目の欠点は、誰にも知られたくないものだ。

私も以前に何度かそんな自虐風自慢をされてものすごく腹を立てたことがある。

「いいなあ、さきは大人っぽい顔で。私童顔、嫌なの。さきみたいな女受けする顔がよかったなあ」
(訳:童顔の私の方が男受けする顔なのよ、あなたより私の方がモテるんですよ)

まあこんなのは一例である。でもほとんどの方は想像はつくだろう。

「あー、わかるわかる。結構いるよね、そういうさりげないアピールする人」

そう彼女は面白そうに言う。うん、それ言われた時は本当腹立つよ、と熱弁する私。

「わざわざ自慢っぽくなく言ってくるからあんなに人を苛立たせられるんだと思うの。だってそれだったら思いっきり自慢してくる方がずっと気分いいし面白いじゃん。『あたしはちっとも好きじゃないのにね、あの男ったらしつこくて。本当迷惑過ぎる~』とか言うのはいらっとくるけど、『きいて。私今すごいモテてるの! めっちゃ嬉しい!』ってあっけらかんと言う子には腹立たないじゃん。素直に、なにそれずるいよ! でも詳しく教えて! って言う気になるじゃん」

「そうだよね! 素直でストレートな自慢は案外腹立たないよ」

私の演説にうんうんと大きくうなずいてくれる彼女。調子に乗って私はさらに語る。

「たぶんね、私、自慢したいくせに、他の女を蹴落としたいと思ってるくせに、そういう嫌な女の感情を無視して、『性格いいって思わせよう』っていういやらしい計算が垣間見えるから腹が立つんだと思うんだよね」

こんなこと気にしちゃう自分もいやなんだけどねー。ま、仕方ないね、とりあえず、自分はマウンティングする可能性はいつでもある、って素直に自覚しとくくらいしか対策はないかな?ということで、彼女と意見が一致し、この議論は終了した。

ハッとした。学ぶことが本当に多かった。だから気の置けない女友達と話すのは本当に楽しいのである。

マウンティング女子ってやだよね!
女のバトルって怖いよね!
ああ、こういう人間には近づきたくないなー。

彼女と話すまでは自覚していなかったが、私はこれまで、そんな会話を幾度となくしてきたし、そんな女には近づきたくないとずっと思い続けてはきたが、それは結局、「自分は絶対にマウンティング女子なんかではない」と盲目的に信じ込んでいたからだ、と気が付いたのだ。

なんだかんだで、内心で上か下かを気にしちゃったり、女としての価値を意識してしまったりするのは日常茶飯事なのに、そういう部分には目をつぶっていて、「私は大丈夫!」と勝手に思い上がっていたのかもしれない。

そういう女の格付け競争に入るのはとても苦しいし、ウザいことには変わりないが、でもそれを気にしてしまっている時点で、私はマウンティング女子なのかもしれないと思ったのだ。
こんなに自虐風自慢に腹を立ててしまうのも、もしかしたらマウンティングじゃなく、本気で「童顔で子供っぽく見られてしまうのが嫌」と思っていたかもしれないことを、ひがみっぽくひねくれた解釈をしてしまうのも。結局は、私が思いっきり劣等感や嫉妬心を抱いていて、ギュッとはちまきをまいて格付け競争に参戦している証拠じゃなかろうか。
「マウンティング女子ってウゼー」と口に出して言うことによって、「私はマウンティング女子みたいな下劣な人間じゃありませんから。人柄のいい女ですから」というマウンティングをしていたにすぎないのかもしれない。

おお怖い、自分が怖い! 私こんなに性格悪かったっけ!? と彼女とわかれてひとりで歩いているときに思ったが、やっぱりこれが自分自身だから、気にしても仕方ない。出家できるタイミングを待ちつつ、よりよい人間になるべく修行を続けるしかないのだ。

でもとりあえず、むやみやたらに「マウンティング女子ってウザいよね」と言うのはやめておこう、とひそかに決めたのだった。
だって、私も同じだものね。ひとのことなんか言えないよ。

***
そんな女のマウンティングも垣間見えるオリジナルストーリー、かなりディープな女のつらさにもふみこんでいく、劇団天狼院旗揚げ公演「膝上29センチ以下の彼女」は本日20:00より、豊島公会堂で開催します。承認欲求に悩まされる人なら、共感できると思います。

詳細はこちら→ http://tenro-in.com/gekidanhataage

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2014-11-13 | Posted in イベント情報, チーム天狼院, 記事

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